国民投票は再来年 維新の会幹事長
「細川珠生のモーニングトーク」2017年5月6日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(大川聖)
【まとめ】
・日本維新の会憲法改正原案3本の柱は、教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置。
・無償化で教育の機会均等を、統治機構改革では行政コストの削減を目指す。安保は憲法裁判所が判断。
・来年の通常国会で憲法審査会に改憲案提出、半年議論。その後衆参両院で3分の2の賛成得て国民投票は再来年が理想。
5月3日の憲法記念日で日本国憲法施行70周年を迎えた。衆議院議員で日本維新の会幹事長の馬場伸幸氏に、政治ジャーナリストの細川珠生氏が憲法改正について話をきいた。
日本維新の会は憲法を改正すべきであると主張し、いわゆる改憲勢力として、教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置の3点を掲げ、憲法改正原案を取りまとめている。
■3点に絞った理由
細川氏が、議論すべき点が色々ある中でこの3点に絞った理由は何か、と質問した。馬場氏は、「去年の参院選前に、具体的な公約として憲法改正を掲げていたが、何を改正するか各党挙げてなかったので、国政選挙が行われるということでこの3項目に絞りこんだ。」と述べ、日本維新の会として参院選を契機に具体的な憲法改正案を提示したことを明らかにした。
そのうえで、「判断基準は『憲法事実』。憲法は国民の生活に密着したもの。国民が今の日本のこの社会の中で憲法を変えて何が必要とされているか、何のために変えるのか、という『憲法事実』があるかないかという視点で絞り込んだ。」と述べた。
3点のうち、教育の無償化を取り上げた理由について馬場氏は、「幼稚園・保育園も含めた無償化だが、国民の中に給与の格差が出てきて、年収200万円台もたくさんいる。収入の低い家庭で育てばいい学校に行くことができない。学力がつかず社会に出ても良い職に就けない、結果給料は上がらない、という「貧困の連鎖」がある。やる気はあるが経済的理由で高校・大学に進学できない子どもを救済するために、機会の均等化を目指す。」ことを挙げた。
またもう1つの理由として、「一生のうち一番お金がかかるのは子育ての時期。教育費を無償化することで、家庭の可処分所得が増えるのではないか」と述べ、第一線で働いている子育て世代が教育以外の消費にお金を回すことで経済に与える影響が大きいのではないか、との考えを示した。そしてこれら2つの理由が教育無償化の憲法事実となり得る、と述べた。
■統治機構改革
次に「統治機構改革、地域主権、首相公選制、憲法裁判所の設置、これらを合わせて描いている日本維新の会の国家像とはどのようなものか」と細川氏が質問した。馬場氏は、「戦後70年経ち、一つの時代は終わった。トランプ大統領が誕生し、エスタブリッシュメントの敗北だといわれている。ヨーロッパでもEU離脱をかけた選挙が行われており、日本だけでなく世界全体が新しい時代の第2ステージに移るところだ。」と答え、世界が新しい価値観が構築される時代に入ったとの見方を示した。
そして、「日本では少子高齢化が一番問題だ。」と述べ、「人口が減れば経済成長もなく、社会保障を充実させることもできない。」と超高齢化社会の現状に警鐘を鳴らした。
2つ目の統治機構改革について、「一言でいえば行政にかかるお金を1円でも少なくしようということ。行政コストが下がった分、納税者に還元していく考え方だ。」と説明した。
そして3つ目の憲法裁判所の設置に関して、一昨年、平和安全法制で国会議員は違憲ではないと主張したのに対し、多くの学者が違憲だと表明したことにより、世論は平和安全法制反対の機運が高まったことを例に挙げた。「安全保障の問題も司法の然るべき場できちっと判断していれば国会での議論もスムーズだっただろう。」と述べ、憲法裁判所設置の必要性を強調した。
また馬場氏は、「憲法改正条文を具体的に挙げているのは日本維新の会だけ。他の党は何を国民投票にかけるのか曖昧だ」と指摘し、最終的に判断を下す国民の理解を得るためにも、衆参両院の憲法審査会で各党が改正項目を明らかにし、選んだ理由を示す必要があると述べた。
■改憲の見通し
改憲の見通しについて、「今年中に各党が党内の議論を終えて改正項目を絞り込み、来年の1月の通常国会で憲法審査会にそれぞれが提出し半年かけて議論する。その後衆参両院で3分の2の賛成を得られる努力をする。国民投票は再来年。」という流れが理想的であると述べた。
また、「憲法審査会自体が憲法の改正項目を審査するという目的で設置されている審査会で、本来の目的に戻ってきちっと職務を果たしていくことが大事だ。」との考えを示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年5月6日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。