.国際 投稿日:2014/3/5
[渋谷真紀子]<アメリカの演劇教育>歴史の勉強を「演劇」という手法で立体的に理解する
渋谷真紀子(ボストン大学院・演劇教育専攻)
ソチオリンピックで数々の歴史的瞬間が誕生していた頃、私が経験したボストンでの「歴史を活用したドラマクラス」についてご紹介したいと思います。
歴史と言えば「名前ぐらいは聞いたことあるけど…」と、理解が浅いことがままあります。このクラスでは、歴史の勉強(インプット)を演劇という手法でアウトプットすることで、歴史をより立体的に理解することを目指します。アウトプットするには、背景や事象の解釈をクラスメートとディスカッションする過程があり、歴史を自分事化する必要があるので、より深い理解が得られるというものです。
◆歴史を活用したドラマクラスの内容
今回は、アメリカの歴史教科で必ず取り上げられる南北戦争がテーマでした。この戦争が起きた背景や影響などを、色々な角度からアプローチしていきます。
- 【ウォームアップ】南北戦争に特定せず、現在に影響を与えた歴史的な場面をワンアクションで表現します。(他の生徒達はそれが何かを言い当てます。歴史と現代の繋がりを見ることで、歴史を学ぶ意義を再確認します。)
- 【戦争が起きた背景の把握】南北戦争に最も影響を与えた歴史的な事象を選び、自分が新聞記者になったつもりで、新聞の見出しを作ります。(先生が編集長になり、なぜそのイベントが重要かの論拠を生徒たちに答えさせます。)
- 【戦争当時の状況を再現】当時14歳の兵士が母親あてに書いた実在の手紙を読み、手紙から伝わる兵士・母の感情、そして彼が綴った当時の様子を表現・再現します。(このプロセスを通じて、辛い状況をリアルに感じ取り、参加者の目には涙が溢れていました。)
- 【資料を読み取る力を育成】当時の写真から読み取れる問題点をディスカッションし、それを指摘する寸劇を行う。トピックは、人種による生活の違い/メディアの役割/戦争の引き金など。
この授業の更に良い点は、こうした歴史の事象を題材にして、更に議論が深まるところです。例えば、私が日本人であったこともあり、話は南北戦争に留まらず、太平洋戦争やイラク戦争など「なぜ戦争は繰り返されるのか」についても議論が広がりました。
暗記科目になりがちな歴史ですが、演劇のクラスを活用して、視点を変えてアプローチすることで理解を深めるところが、グループワーク・ディスカッションを重視するアメリカらしいと思いました。大きなストーリーの中で歴史を捉えて考えながら修得できるところが、とても学習効果の高い方法ではないでしょうか。
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