.国際  投稿日:2018/9/3

「一帯一路」は中国版植民地主義

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古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

【まとめ】

・米WP紙「中国版植民地主義」と題し「一帯一路」に反対鮮明に。

・政府、議会、政党、官民問わず米は国交後40年で最も厳しい対中姿勢。

・「中国の覇権拡大対象国は対抗措置を」の主張に日本も注視を。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41807でお読み下さい。】

 

 中国の「一帯一路」構想は現代の植民地主義だから、抑えねばならない――こんな強硬な主張がアメリカの大手紙ワシントン・ポストの社説 (※8月30日付WEB版)で打ち出された。この巨大なインフラ建設の構想は中国の覇権の拡大だから対象となる諸国は対抗措置をもとるべきだと、という主張だった。

 

 いまのアメリカでは中国に対する警戒や敵対がまた一段と高まってきた。米中国交樹立以来の40年ほどでも最も厳しい対中姿勢だといえる。しかも政府と議会を問わず、共和党と民主党を問わず、官民いずれも、という広範な対中態度の硬化なのだ。その理由は中国の国際規範無視の膨張ぶりだといえる。オバマ前政権の寛容な姿勢への反発がいまの超党派の強固さを招いたともいえる。

 

 そんな空気のなかで大手紙の反トランプ傾向のワシントン・ポスト紙が8月31日付の社説で「中国版の植民地主義」と題して、中国が進める「一帯一路」構想への反対と警戒を訴えた。副題は「北京政府の『一帯一路』構想を抑えるためにもっと多くの行動をとらねばならない」という明確な反対論だった。

 

 同社説は「多くの国家が習近平主席の巨大なインフラ建設と影響力拡大の企みを再考するようになったが、そうあるべきである」と、まず述べていた。そのうえで同社説はマレーシアのマハティール首相が最近、中国の「一帯一路」の二大プロジェクトをキャンセルし、前政権の不正資金の調達にもこの構想が利用されていたと指摘したことを強調していた。

写真)マレーシアのマハティール首相

出典)マハティール氏Facebook

 

 そのうえで同社説はマハティール首相が「一帯一路」を「中国版の植民地主義」とか「20世紀初頭に欧米列強が中国に押し付けた不平等条約の逆転」と特徴づけたことを述べて、その認識への同調を示していた。

写真)中国との共同開発の港がエリア内に建設されるマレーシアのクラン港(2018年3月29日)

出典)Flickr

 

 同社説のその他の骨子は以下のようだった。

・一帯一路構想は中国からの融資、中国の企業、労働者によるインフラ建設で、多くの国が資金の返済に苦しみ、中国への政治的、経済的な武器を与えることになる。

・スリランカは中国側への返済が不能となり、新設の港を中国企業に引き渡すことを余儀なくされた。

・マレーシアではなお中国が100億ドルの資金で戦略的なマラッカ海峡近くに港を建設しており、経済的よりも軍事的な効果が懸念されている。

・パキスタンでは中国・パキスタン経済回廊の終点となるグワダルに中国からの融資での港湾施設が建設される予定で、パキスタン側の 負債を巨額としている。

・トランプ政権も一帯一路の経済的危険や隠された地政的代償を指摘し、多くの国が同構想の結果、中国の無法や危険な行動への反対を表明できなくなる可能性を指摘している。

・だがトランプ政権は中国を抑止するTPP(環太平洋パートナーシップ)から離脱し、独自のインド太平洋開発計画を始めたが、まだ中国への対抗策としては十分ではない。

以上のようにワシントン・ポストの社説は中国の一帯一路構想に対してトランプ政権よりも強い反対を表明した点が日本側からみても注視に値するだろう。

TOP画像:中国・ガーナ首脳会談で二国間関係強化で合意(2018年9月1日 北京)

出典)中国政府ホームページ

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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