.国際  投稿日:2018/9/5

民泊は地方創生のかぎとなるか

Pocket

Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・仏、民泊規制強化後もいまだ違法物件掲載止まらず。

・日本では6月に民泊新法施行後掲載件数約8割減。

日本の事情にあった民泊の発展の仕方で地方創生のきっかけに。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全部が掲載されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41836でお読みください。】

 

フランスのメディアRTIで、フランスでは民泊に対して規制を作ったのにもかかわらず、エアビーアンドビー(Airbnb)を含む複数の民泊サイトは掲載を取りやめることもなく、いまだに掲載されているうちの70%は市役所へ登録されていない違法な物件であると、パリの民泊の現状が解説されていました。

フランスでは人口20万人以下の街での民泊には大きく規制はしないとしたものの、パリやボルドーなどの大都市では、居住物件を貸し出す際の日数は年間120日までという上限を設けるとともに、市役所への登録および広告への登録番号掲載を義務化しました。パリでは2017年12月1日より実施したのの、今でも規定が守られていない物件が掲載続けられていると言うのです。

フランスは年間8000万人以上の旅行客を集める世界一の観光大国あり、日本よりも早い時期から民泊が利用されてきました。フランスでは個人が所有する「空いた場所」を提供する「シェアリング・エコノミー」は昔から日常的に行われており、旅行に行くにも、友達や親せきの家に泊まることはとても一般的です。しかも、フランス人は年間平均150日間の休暇(有給休暇、週末など)があり、バカンスに出かけ家を空ける場合も多いため、知り合いの間で家を交換して過ごすことはすでに行われてきました。そのためエアビーアンドビーをはじめとする民泊サイトが始まった時にはすんなりと受け入れられ急速に浸透したのです。

しかしながら、住宅問題を統括するパリ市役所のイアン・ブロサ氏はこう言います。

「ほとんどの方がそうしているように個人が空いた部屋を時々貸すのはまったく問題はありません。しかし、問題なのは、アマチュアを装ったプロだ。」 

▲写真 イアン・ブロサ氏 出典:イアン・ブロサ氏公式Facebook

例えば、民泊サイトには、個人の名前で150件もの物件を貸し出していたケースや、ヨーロッパ中に600件もの物件を貸し出していたアカウントも存在しており、問い合わせをしたところそのアカウントは削除されたものの、これらは企業が個人の名前を語って利益を得ていたことは間違いありません。実際、フランスの貸し主のうち、きちんと確定申告して納税しているのはわずか15%であり、民泊サイトでの物件の貸し出しは匿名であるため脱税の温床にもなってきたのです。

またパリの家賃相場や賃貸契約継続にも影響を与えています。民泊サイトで運用すれば、通常の賃貸なら月額10万円の家賃しか取れない部屋でも、1泊1万5千円くらいで貸せば、月額45万円の収入を得られることになります。空室の日数や運営経費を差し引いても、十分高いリターンが期待できると試算した所有者がこぞって民泊営業に乗り出したため、パリの家賃相場が急上昇したり、賃貸契約の25%が更新されないなど長期滞在者用の住宅不足が深刻化しました。とりわけ観光客の人気スポット周辺では住民が減ったため、学級閉鎖といった事態も起きているのです。

▲写真 パリでAirbnbを利用して借りた部屋 ©Japan In-depth編集部

こういった状態を野放しにした未来は、「長期滞在の住民が住めない町」であり、「都心部に物件を多く所有した人だけが勝ち組となる世界」。しかもその大多数が適切な税金を納めないとなれば町の存続すら危なくなり、規制を設けるのは当然の流れでもあります。

しかし、民泊サイト上ではいまだに登録番号を掲載していない物件が削除されてはいません。そこで違法運営者の摘発を強化することとし、今年から罰金の金額も増やした上、20人体制だった調査員を30人に増やし、ローリング方式で取り締まりを行いました。その結果、違法民泊に科された罰金総額は、2017年の1年間で130万ユーロ(約1億6700万円)だったのに対し、2018年は年始から8月15日までで既に138万ユーロ(約1億7700万円)になり、半年で去年一年分を上回る額を徴収するほどのインパクトで、違法利用者に対して大打撃を与えたのです。それでもすべてを摘発はできていません。フランス・パリでの違法な民泊経営に対する戦いは今も続いています。

一方、日本では、民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年6月15日に施行され、エアビーアンドビーが規制に適合しない施設の掲載を中止した結果、2月1日時点では約6万2000件あった掲載数が、なんと約8割減の1万3800件になり話題になっていたところです。違法の可能性がある掲載が削除された例はもちろん日本だけではなく、他の国でも行われており、サンフランシスコでは2017年9月に無許可の掲載が約50%削除された結果約5,500件にまで減少しています。

このように一気に削除されたことで、今後の民泊の未来を不安に思う声もきかれましたが、フランスのようにエアビーアンドビーなど民泊サイトに削除要請をしているのにもかかわらず、削除がされず悪戦苦闘しているのを見ると、日本やサンフランシスコは一度リセットがかけられたおかげで問題がある民泊ホストが削除され、今後は正式に登録した民泊ホストのみが掲載されると言う正常な状況に迅速に移行できたと言えるのではないでしょうか。

しかも、日本の民泊サイトへの登録件数は、住宅宿泊事業者の届出が義務付けられたため一時的には急激に掲載件数が減ったものの、観光庁の集計によると、3月15日から新法施行日の2018年6月15日時点では、住宅宿泊事業者の届出提出件数が3728件、このうち受理済みが2210件だったものが、7月27日までに届出受付件数は6603件、受理済みは5235件となり、新法施行後一カ月ちょっとで約3000件増加と順調な伸びを見せています。

そのうえ、日本の民泊に対する規制自体はそこまで厳しくもありません。例えばフランス・パリは、民泊を行うには日数に制限を設けた文化交流と空き物件の活用による個人による貸し出しのみを認めているのに対し、日本は日数に制限を受けない個人での事業目的としての形態も認められているのです。

▲写真 新宿のコンビニ(ファミマ)に設置されている民泊の鍵貸出機 出典:Indiana jo

これは、「シェアリング・エコノミー」を目的とし支出を抑えてちょっとした快適さを求めようと言うことが前提になっている欧米の考え方とは違い、日本で民泊が発展した理由自体が、突然観光大国へ移行したことで外国人が急増し、ホテル・旅館不足が発生し、急いで宿泊先を増やすことが必要だったからとも言えます。

6月に日本で施行された民泊新法は、文化交流と空き物件の活用を目的とした物件について規制をまとめたものですが、営業日数は海外と同様に制限されています。しかし年間180日という上限日数も、パリの年間120日、ロンドンの90日、アムステルダムの60日よりも長く、より活用しやすい日数となっています。

そしてさらに日本ではこの日数の上限がある「民泊新法」に基づく民泊以外に、「民泊条例の特区」による民泊、「旅館業法」に基づく「簡易宿所(かんいしゅくしょ)」による民泊と言う形態があり、営業日数の制限は受けずに年間を通して営業形態も許可されているのです。

「民泊条例の特区」による民泊は、2013年12月に成立した国家戦略特別区域法(以下、特区法)は、その13条で特区内での一定要件を満たした民泊に対しては旅館業法の適用除外を規定していますが、特区法という法律のみでは旅館業法の適用除外を実際に受けることはできず、その実現の為には各自治体レベルでの条例・規則の制定が必要であまり使用されていませんでした。

しかし2016年に大田区、大阪府で条約が作られたことが皮切りに、各地で適用する地域も増え近年になり認定数も増加しています。住宅宿泊事業者の届け出のうち、特別区の届出提出件数は2450件、受理済みが1873件であり、3割以上が「民泊条例の特区」からの申請でした。

▲写真 東京都大田区が認可した民泊第一号となるSJヴィラ蒲田A。築60年の古民家をリノベーションして一軒貸しする。背後の二階家屋は無関係。出典:Mr.Asylum

「旅館業法」に基づく「簡易宿所」は、消防設備整備や帳場の開設といった設備投資及び許可取得のための手間はかかるものの、2016年4月の旅館業法の改正により規制緩和も進み、大きく利益も望まれるため増加傾向にあると言います。厚生労働省の2017年10月26日の発表によると、2016年に比べ2390件増加し29559件が申請されています。

特に、継続的に観光客がくることが多い都市では積極的に「簡易宿所」の申請が行われています。例えば京都市では、観光庁によると7月13日時点での市内での民泊新法に基づく申請件数は47件にとどまっており低調にもかかわらず、京都市が公表した許可施設の施設数推移によると、ここ数年で簡易宿所の営業許可を取得した宿泊施設が急増。2014年に460施設だった簡易宿所は2017年に2291施設まで増加。2018年度に入っても簡易宿所の新規許可件数は伸び続けており、民泊新法施行の6月も傾向は変わっておらず毎月約70軒のペースで増え続けており、今後も伸び続けるであろうと予測されています。

他の国の状況と比べながら日本の民泊を調べていくと、一言民泊と言っても、各国によってとらえ方はさまざまで内容も違っており、日本は日本の事情にあった民泊の発展の仕方をしていることが見えてきます。フランスなどの海外では民泊の利用者は国内の旅行者が多いですが、日本では、民泊が始まった当初は外国人の利用者の方が多かったものの、最近になって日本国内からの利用者も増えてきていると言う、逆な流れで日本に民泊が浸透している様子がうかがえます。

個人のビジネスチャンスにも空き部屋・空き家のを活用し地方創生のきっかけづくりなどにも可能性も持っている日本の民泊。2020年の東京オリンピックを控えますます数が増え、盛り上がっていくと予想されますが、今後どのように発展していくのかとても楽しみです。

トップ画像:民泊イメージ図 出典 the liverpool school

Pocket

この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、ライターとして活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."