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.国際  投稿日:2018/11/12

仏、ハロウィンで破壊行為勃発


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・日本だけでなく仏でもハロウィンでの破壊行為が年々過激化。

・犯罪容認がテーマの米映画に触発された若者が破壊・放火呼びかけ。

・「カッスール(壊し屋)」による破壊行為常習化の仏。旅行者注意。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42782でお読みください。】

 

ここ数年、フランスでは、人が集まる大きなイベントがある度に、若者による破壊行為が行われることが増えています。先日のハロウィンでは、日本でも渋谷で一部の若者がトラックを横転させたりするなどの行為が問題になりましたが、フランスではその比ではない破壊行為がハロウィンの夜に毎年発生し、今年も例外なく各地で行われました。

 

■ SNSを媒体に若者を助長

ハロウィン自体がフランスに入ってきたのもそれほど昔のことではありませんし、フランスでは子供達がお菓子をもらいに家を渡り歩く習慣もまだあまり定着はしていません。しかし、ハロウィンの夜になると各地でゴミや車両の放火、バス停の破壊などの行為は着々と常習化しつつあるようです。その様子は、あたかもアメリカのホラー映画『パージ』(原題:The Purge)を連想させるもの。

映画『パージ』は、「1年に一晩だけ殺人を含む全ての犯罪が合法になる」という法律をもとに、国民がこの夜、1年の間に心に溜まった「怒り、憎しみ、暴力」すべてを解き放ち、無法地帯と化す世界を描いたものですが、こういった映画に影響を受け悪ふざけしたフランス人の若者により、今年のハロウィンでは、「パージ」を呼びかけるメッセージがSNS上で拡散され問題になりました。

「1.黒い服を着ろ 2.全ての犯罪が許される。3.目についたものを燃やせ、例えば車、ゴミ、etc」

といったような、パージ法に似せたリストが、若者がよく使うSNS、スナップチャット上で拡散されたのです。しかも呼びかけを行った若者は一人だけというわけではありません。アヴィニョン近くのセナスと言う町では17歳が、リヨン近郊では20歳が、グルノーブル19歳が、複数の町で複数の若者がメッセージを送ったという状況です。

しかしながら、このメッセージは事前に警察にも伝わりました。拡散されていることを重く見た警察は、ハロウィン当日に1万5000人の警察官を動員し、厳重態勢で警備にあたりました。そうしたこともあって、フランス内務相は、逆に昨年より犯罪件数は少なくなったと報告しました。それでも毎年起こる破壊行為は完全には止めることはできませんでした。最終的に128件で逮捕者が出て、116人が拘留されました。日本でよく知られている町だけでも下記のような被害が発生しています。

 

<セーヌ=サン=ドニ県>

ゴミへの放火12件、約50台の車両放火。約50人が逮捕され、中には3人の未成年者も含まれている。

 

<リヨン>

フランスの3番目の都市リヨンでも市内中心部で約200人が騒動を起こした。11人の未成年者を含む12人が警察に逮捕された。

-Julien Damboise (@JDANDOU) 2018年10月31日

▲リヨンの市内中心部のハロウィンの夜の様子

 

<ナント>

8件のゴミ放火、31台の車両放火。3人の未成年者が暴力行為で逮捕。

 

<トゥールーズ>

17件のゴミ放火、10台の車両放火。警官2人が負傷。2017年のハロウィンより件数がわずかだが増加

(参照パリジャン http://www.leparisien.fr/faits-divers/halloween-une-nuit-de-violences-dans-toute-la-france-01-11-2018-7932816.php

 

逮捕者の中には未成年者もいて、SNSで送られた「パージ」を受けて行動していたと証言する者もいたとのことです。冗談で流されたはずのメッセージに影響力があったことがうかがえます。

なお、「パージ」を呼びかけた20歳の若者は警察に逮捕されました。また、19歳は自身のSNSに「悪い冗談だった」と謝罪し、そのツイッターの謝罪ビデオに警察がメッセージを送った後、警察に自ら出頭したとのことです。

 

■ 破壊行為をするカッサールの増加

一方、実はこういった破壊行動は、近年フランスではハロウィンの時だけに起こる出来事ではなくなってきたのも事実です。人の関心を呼ぶイベントがあると、どこともなく人々が集まり破壊行為が行われることが多くなりました。そういったメインの行事とは関係ないところで破壊行為をする人々をカッスール(壊し屋)と呼んでいますが、かつてはカッスールといえば、郊外のスラム化した団地の移民二世・三世の失業者や貧困者など、社会に不満を持った人々というのが通説でした。しかし、現在はそうとも言い切れないようです。スマホを持って十分に恵まれた環境で育った普通の若者たちが、この暴挙に加わることも多くなったとも言われています。

例えば、5月1日のパリのメーデーでは約1200人のマスクなどをした黒ずくめの集団が現れ、新聞などを売っているキオスクのガラスを粉々に割り、マクドナルドのガラスを破ったほか、火炎瓶を投げつけたり、車の放火などを行ったりしました。その日は300人近く逮捕され、次の日になっても102人が留置されていました。学生やサラリーマンも多く、3分の1は女性だったとのことです。

メーデーでカッスール達は、黒い服にマスクを着けた者が多く、アナキストや反資本主義運動家などの集団「ブラック・ブロック」であると自称している者もいました。しかし、大半はグループなどの組織もなく理念を持っているわけでもなく、若者たちがなんとなく集まって破壊行為を行ったと推測されています。

-Eric Ciotti (@ECiotti) 2018年5月1日

▲マクドナルドを破壊する様子

また、7月15日にはロシア・ワールドカップ決勝戦が行われ、フランス代表はクロアチア代表と対戦し、4-2の勝利をおさめました。この結果、フランスは5大会ぶりに2度目の優勝を果たし、フランス国内は祝福ムードに包まれました。しかし、優勝を祝うフランス代表のファンやサポーターが去った後の月曜日の深夜、マスクを被った過激派集団がパリの街を徘徊し、略奪行為や破壊行為を繰り返し、警官隊と衝突、大規模な暴動に発展しました。同様の暴動はマルセイユ、リヨン、ボルドーでも発生し、多数の負傷者が出ています。

-Pierre Sautarel (@FrDesouche) 2018年7月15日

▲商店のショーウィンドウを破壊する様子

人が集まると常習的に行われるようになったカッスールによる破壊。今年は昨年にも増してかなり多かったようにも感じますが、今年はまだまだ終わりではありません。実は例年12月31日の夜にもこういった破壊行為が見られ、今から警戒されています。大きな被害を出さないために、厳重な警備は行われていますが、催涙弾が使われるなど激しい乱闘になる場合もありますので、フランスを旅行する際には十分に注意をすることが大切でしょう。いつの日か、こういった破壊行為が見られなくなる日が訪れることを願いますが、今のところ、効果的な解決策もなくめどはたっていません。

トップ画像:イメージ 出典:Public Domein (GOODFREEPHOTOS)


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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