「企業は中長期の視点でみるべき」牛島信弁護士
「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月8日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(大川聖)
【まとめ】
・カルロス・ゴーン氏は日産自動車のオーナートップだった。
・日本企業は海外の会社を買収後どのように経営していくかを経験をもって学んでいく。
・個人は中長期的な視点で企業投資を考えるべき。
11月19日のカルロス・ゴーン前会長の逮捕を受け、揺れている日産自動車。政治ジャーナリストの細川珠生氏が弁護士の牛島信氏に話をきいた。
■カルロス・ゴーン氏逮捕
まず、逮捕の報道に接してどう思ったかという質問に対し牛島氏は「私も大変驚いた。カルロス・ゴーン氏の逮捕は、田中角栄逮捕に匹敵するような大事件。国際ビジネスの観点からみたらもっと大きいかもしれない。」と答えた。
細川氏は、「フランスでは2年間株を持っていると議決権が2倍になる(=フロランジュ法)とか、あるいは(株を)40%以上持っていると持たれた企業の方は持っている企業の方に議決権が行使できないといった法整備がある。外国にはある意味国益を重視する法律が当然のようにあるが、日産を含め日本側に不備は無かったのか。」と聞いた。
牛島氏は「日本側にも法律はある。日産自動車がフランスのルノー社の株を25%以上持っていれば、相互保有という会社法の規定によってルノーの議決権が行使できなくなる。それが恐らくこの件の一番の肝だ。日産自動車はルノーというオーナーのいる会社だった。ルノーのトップはゴーン氏。つまり、ゴーン氏は日産のただのトップではなくてオーナートップ、極めて強い特殊な地位にあった。このままそれが続いていいのかという問題意識が(日産に)あった。」と答えた。
■ 日本企業による海外の会社買収における課題
細川氏は「日産とルノーのような問題が起きるたびに、日本人はまだ『外国企業』や『外国人』にものすごく抵抗があると思う。ただ本当の意味でグローバル企業になっていかないと日本企業も生き残っていけない。」と述べ、日本企業のグローバル戦略で必要な準備や未整備の制度について聞いた。
牛島氏は「第一に決定的に重要なのは日本企業が外国の会社をどういう風に経営するか学ぶことだと思う。」と答えた。そして、不正会計で問題になった東芝について、「東芝の子会社になったウェスチングハウス(WH)のトップに対して東芝のトップはこれであなたは東芝のファミリーの一人になったね、というセンチメント(感情)を持ったと思う。しかし、WHの方から見れば(東芝)ファミリーのメンバーだと言われても口では嬉しいと言うかもしれないが、(彼らには)響かない。」と述べた。
牛島氏は「つまり、日本企業は外国の会社を買収した時にどういう契約条件でどういう風に統治していくのかという考えが足りないままにどんどん買っているのではないか。」と指摘し、「子会社を持った時、独立した取締役の役割はとても重要。海外の会社をどうやって経営していくのかというグループガバナンスが、日本の会社には決定的に足りない。」と改めて強調した。
また牛島氏は「外国企業の株を買って、私(日本の経営)をみてその通りにやってください、というのは通用しない。そのことをこれから日本の会社はお金を無駄にしながら学んでいくのかと心配だ。」と述べた。
■ 働く個人の企業の見方
細川氏は「日産、武田薬品の話(トップが外国人になったり、外国企業と連携などしてやっていくこと)は決して他人事ではない。今日本で働く一人一人が自分たちのこれからの戦略のために何が必要なのかを考えるきっかけにすべき」と述べた。
これに対し牛島氏も同意したうえで「会社というものは中長期の視点で経営されなければならない。株式市場はお金を集める場所として重要なだけでなく、今や年金の原資を運用する場として重要である。したがって20、30年後ちゃんと(会社が)残っているのか、(原資が)増えているのかということを考え、会社に投資しなければならない。」と述べた。
また、年金受給者の立場から見ても、「残って稼いでる会社の株に私が頼んでいるところは投資してくれているのか、中長期的な視点を持っているのかというのがとても大事だ。」と指摘した。
これを受け細川氏は「私たちの老後の生活に返ってくるという意味で、日産の問題を一人一人自分の生活に落とし込んで考えるべきだ。」と締めくくった。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月8 日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。