しなやかな政権運営目指す 安倍首相
Japan In-depth 編集部(佐藤瑞季)
【まとめ】
・経済三団体の新年祝賀パーティーが行われた。
・安倍首相は「前回の反省活かし消費増税乗り越えたい」と述べた。
・困難な国際情勢もあり、今後の政権運営が注目される。
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仕事始めの1月7日、経済三団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)共催の2019年新年祝賀パーティーが都内で開催され、企業経営者約2000人が一堂に会する中、安倍首相が挨拶を行った。
冒頭安倍首相は、デパートの初売りが好調だったとのニュースを引き合いに、5年連続高水準の賃上げが行われたことや、昨年の冬のボーナスが93万円と過去最高だったことなどを上げ、企業経営者の経営努力を評価した。その上で安倍首相は、「47都道府県全てで有効求人倍率が1倍を超えることになった。」と述べ、アベノミクスの成果を強調した。
消費税については、「前回3%引き上げて消費が落ち込んだ時の反省を生かしながら、今回は引き上げた分は全てお返しし、さらにお釣りがくるといった対策を打ちながら、消費税引き上げを乗り越えて、経済を確かなものにしていきたい。」と述べ、キャッシュレス決済時のポイント還元や住宅購入支援など、現在考えられている対策で増税ショックを緩和する考えを改めて強調した。
さらに、「12年前の猪年のときも安倍政権だった。あの時の年頭会見では、『美しい国に向かってたじろがずに、一直線に進んでまいる覚悟でございます。』と話した。猪には猪突猛進という言葉があり、そういうイメージもあるが、意外としなやかな動きをする。(会場笑)障害物をうまくかわしながら進んでいく。12年経って、政権運営で変わったのはこの点。今年はしなやかに、そして寛容で謙虚な姿勢で政権運営を行っていきたいと考えている。しっかり、この平成最後の年、そして新しい時代の幕開けに向かって、政権運営を確かなものとしながら経済を成長させ、困難な国際状況を乗り越えたいと思う」と話した。
▲写真 安倍首相 ©Japan In-depth編集部
まず、景気の“いざなみ超え”だが、2012年からの平均成長率は1.2%。景気回復を実感できている国民は少ない。安倍首相は2014年、2017年と選挙を目前に、2度も消費税率の引き上げを延期してきた。今年10月の消費税10%への引き上げは不可避である。そうした中での今日の発言と思われるが、年初から株価は軟調であり、2020年オリンピック・パラリンピックに向けての建設特需効果も今年後半は剥落すると予測するエコノミストも多い。そうした中で3度目の正直となるのかどうか、疑問視する声も出始めた。消費増税への道のりはそう平たんではなさそうだ。
また首相自身、「困難な国際状況」と述べているが、外交面でも問題は山積みだ。中国とは、昨年10月から日中新3原則で「競争から協調へ」を掲げるなど、互いに歩み寄っているようにも見えるが、連日のように尖閣諸島周辺の接続水域で中国海警の船が航行している。また韓国とは徴用工判決の問題、さらに年末からは海上自衛隊のレーダー照射の件も解決する兆しはなく、泥沼化している。米中の対立激化・朝鮮半島の非核化も膠着状態だ。出席している経済人からはこうした国際情勢を踏まえ、「(外交は)本当に大丈夫なのか?」と懸念の声も聞こえた。
今年は選挙イヤー。統一地方選、参院選が控える。安倍首相の思惑通り「障害物をうまくかわしながら進んでいく」ことが出来るかどうか、まだ予断を許さない状況だ。
トップ写真:挨拶に立つ安倍首相 ©Japan In-depth編集部