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.国際  投稿日:2019/2/13

米中貿易協議、中国譲歩せず


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #07」

2019年2月11-17日

【まとめ】

・春節後にもかかわらず、進展を見せない米中貿易協議。

・トルコがウイグルをめぐり、中国当局を非難。

・一般教書演説後、米国の内政は新しいラウンドに突入か。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44103でお読み下さい。】

 

春節後の中国が再始動するはずなのだが、米中貿易協議で中国側が譲歩する姿勢は今のところ見せていない。11日からは次官級の協議が始まり、14日からは閣僚級の協議となるはずだが、果たしてうまくいくのだろうか。先週米国で関係者の話を聞いたが、まだ米中間には合意文書の案文すらないそうだ。本当に大丈夫か心配になる。

 

心配といえば、今週最も大きなニュースと筆者が考えたのはトルコのウイグルを巡る対中批判が厳しさを増していることだ。トルコ外務省報道官は9日、声明を発表し、ウイグル人に対する中国当局の組織的な同化政策は「人類にとって大きな恥だ」と強く非難したと報じられた。トルコがこれを言い出したら、結構ややこしくなるぞ!

▲写真 Uyghur elders 出典:Frickr; Todenhoff

 

これに対し、中国は「トルコ側の指摘は偏見か別の動機があるとしか言えず、完全に事実に反していて、到底、受け入れられない」と強く反論したという。おいおい、中国はイスラムを誤解していないかい?特にトルコの中央アジアに対する思い入れを過小評価してはいないか。ウイグルはトルコにとって「東トルキスタン」なのだから。

 

先週はコロラド州デンバーで講演を行ってきた。旧知の元国務省高官と二人での「漫才」講演だが、昨年のインディアナポリス、シアトルに続き今回が三回目となる。内容は東アジアの安全保障問題と日米同盟だったが、米国各地の「日米協会」は基本的に経済関係が中心らしく、日米安保に関する講演は少ないのだそうだ。

 

もう一つ気になるのは英国のEU離脱だが、何がどうなっているのか良く判らない。EU側はメイ首相とちゃんと話したのに、同首相が「deliver」しないと怒っているだろうし、英国内の諸勢力はそれぞれ言いたいことばかり言うだけで、大胆な妥協を行うだけの政治力に欠けている。このままでは、英国が本当におかしくなりそうだ。

▲写真 メイ首相 出典:Theresa May Official Facebook

 

今週イランは革命40周年を迎える。筆者が外務省に入ったのは1978年で中東関係ではキャンプデービッド合意ができた年だが、その翌年にイラン革命が始まったことを今でもよく覚えている。当時の関係者の多くはイランのイスラム革命が40年も続くなんて想像もしなかったのではなかろうか。イラン革命を救ったのはサダムフセインだ。

▲写真 サダムフセインの絵 出典:Frickr; pingnews.com

 

先週はトランプ氏の一般教書演説に注目したが、終わってみれば、大したことはなかった。要するに、あれ以上でも、以下でもないということか。より興味深いのは、同演説直後から米国の内政が新しいラウンドに入ったように思える。下院情報委員会委員長はトランプ氏の悪行を徹底的に調査すべく手薬煉引いて待っているようだ。

 

民主党内でも来年のアイオワやニューハンプシャーなどに向け、自薦他薦の大統領候補が10人以上も名乗りを上げ始めた。今名前が出ている人々の名はいつまで残るのだろうか。名乗りを上げるのは簡単だが、その後一年以上にわたって、全ての公私の活動が暴かれ、批判されることになる。どう考えてもペイしないと思うのだが。

 

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

トップ写真:トランプ大統領夫妻が中国を訪問(2017)  出典:Frickr; The White House


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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