無料会員募集中
.政治  投稿日:2019/9/20

可能性に「気付き」、将来を「築く」 〜何度でもやり直せる社会を目指して〜 (後編)


「今、あなたの話を聞きたい」

Japan In-depth編集部(外園桃子・髙橋十詠)

 

【まとめ】

・安田氏はウェブマーケティングを徹底し、困っている人に情報を行き届くようにした。

・福祉にどれだけ法律を持ち込むべきかは、現実の支援において曖昧なところがある。

・人間それぞれ違うから好きに生きれば良い。自己肯定感をいかに持つことができるかが鍵。

 

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=47987 のサイトでお読みください。】

 

 

前編のつづき)

 

 

では実際に生きづらさを感じている人に対し、周りはどのような手の差し伸べ方をしたらいいのか。

 

安田氏は、「馬鹿にしなければいいのではないか。”どうしたら良いのだろう”と思われることが当事者はプレッシャーなので、腫れ物に触るような扱い方をする必要は全くない。むしろ ”なんで引きこもったの?” とか、聞くとみんな結構喋ってくれる。」と、好奇心を持つことが当事者にとっては楽なのではないかとの考えを示した。

 

さらに安田氏は、「キズキ」のような場所の存在を知らずに、自分で抱えている人へのアプローチするためにウェブ・マーケティングを徹底したという。

 

「支援したい側の人間がマーケティングを知らずして、どうやってその人たちに言葉を届けるのかというのは、僕の昔からの疑問だった。支援するにはまず、困っている人に情報が届かなければならない。例えば、不登校から大学に行きたい人は、”不登校 大学受験”ってネット検索する。そのときにキズキ共育塾の情報を見つけてもらう必要がある。」

 

まず、支援対象に関連するワードでネット検索したらキズキ共育塾のサイトが1番上に出るようにする。次に、クリックして読んだときに「ここだったら通ってみたい」と思わせるようなwebづくりをする。そして、ページを見た人が何人問い合わせに結びついたかなどをデータで見ながら、改善を重ねたという。

 

安田氏は、「支援したいと思ったら、たとえばビジネスをきちんと学ぶ、マーケティングやwebについて学ぶ。そういったことを、福祉業界は今まであまりやってこなかったのではないか。」と、解決にあたりより具体的な努力の必要性を述べた。

 

 

また、今後の福祉の体制について安田氏は、若者層には理解が深まりつつあり、そういう人たちがアプローチしていってることでより良くなってる部分は多いと考えている。一方で、国や地方自治体が福祉施策を行う場合、税金を使う以上は「何人支援した」というような指標が求められることも指摘した。

 

キズキグループは、障害者総合支援法に基づく就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ(KBC)」も運営している。KBCの特色の1つは、主にはうつ病や発達障害によって離職した方々を支援の対象としている点だ。就労移行支援事業所には、国から補助金(報酬単価)が支出される。報酬単価の基準は、「その事業所出身の何%の人が半年以上働いてるか」である。その数字により事業所が良いサービスを提供しているかどうかが判断され、国の支援がどれだけ得られるか決まる。

 

 

しかし、うつ病や発達障害による離職を経験した人にとって、再び半年以上働くというのはかなりハードルが高いのではないか。そう聞くと、安田氏は、「KBCが既存の事業所と大きく異なる点のもう1つが、利用者の自己理解に力を入れた上で、ファイナンス、マーケティング、ビジネス英語など、高度なビジネススキルを教えるということ。そうすると、様々な業界で本人に合った職種や職場環境を探すことができる。」と述べた。

 

KBCの支援が業界に及ぼす影響として、何が考えられるか。

 

KBCが”就職後半年以上働き続けた人”をたくさん輩出して評価されるようになると、他の事業所もKBCのような支援を行うようになるのだ。

 

従来の支援に加えて、新たな支援が広がっていく、ということである。

 

一方で、安田氏は「そのような支援で『長期的に働けるようになった人の数』が見えると『効果』が分かりやすいが、果たして福祉や教育の価値を数字に収斂させていいのかというのは今後の課題でもある。」と、福祉や教育業界の運営の難しさを説明した。

▲写真 キズキグループ代表(創業者)安田祐輔氏 ©Japan In-depth編集部

 

また、キズキグループは、東京都足立区からの委託を受けたひとり親家庭の子どもへ教育支援も行っている。

 

足立区は、ひとり親家庭の子どもへの教育を支援するために公共施設で勉強会を開いたことがあった。

 

しかし、対象となる子どもはあまり出席しなかった。

 

そこで足立区は家庭教師形式(アウトリーチ形式)の支援を開始し、キズキグループが受託したのだ。

 

安田氏はこれについて、「効果的な支援ができていると思う。ただし、家庭教師形式だと支援できる人数が現実的に限られてしまう一面もある。納税者の立場からすると、同じ予算でもっと多くの人を支援できる方法・施策があるのではないかと考える人も多いと思う。」と現状を伝えた。

 

また、予算については、行政の人たちも、法律や条例などに基づきつつどう配分するのか気にかけているという。

 

安田氏は、「もちろん法律は尊重しなくてはならない。ただ、予算に限らず、福祉の世界に法律を持ち込み『すぎる』のがいいかというとと、現実の支援においては曖昧なところもある。福祉業界には、法律と現実の間を求められている現状があるのではないか。」と述べた。

 

 

キズキグループの今後の展望について、安田氏は以下3点を挙げた。

 

・現在全国に7校舎あるキズキ共育塾と、新設したキズキビジネスカレッジスクールをどんどん増やす。

・現在全国で7つの自治体から受注している仕事を増やしていく。

社員をより多く雇い、支援の量を増やしていく。

 

不登校で学校にいけない人も、鬱や発達障害で働けない人も、結局何が問題かというと、『不登校になったり鬱病で会社に行けなかったりすると将来が終わる』という価値観があることだその価値観を変えるには、同じ状況から抜け出した人が社会に溢れ出すこと。自分と同じような人やロールモデルがたくさんいれば、不登校もうつ病経験もたいした問題はないと思えるようになる。」と、安田氏は人々の価値観を変化させ、支援する方針を示した。

 

また、安田氏は鬱や発達障害の人の為の結婚相談所もやりたいと語った。

 

「今までの福祉は、働く為の支援はやってきたが、家族をつくるなどのプライベートな支援をほぼしていない。あとは、移民や難民を含めた支援など、いろんな展望があるが、まずは今あるものをどんどん大きくすることに力を使っていく。」と、海外へも視野を広げていることを話した。

 

 

鬱や不登校の人にとって必要なものは何か聞くと、安田氏は「自己肯定感」と答えた。

 

「自己肯定感を他人が担保するか自分で担保するかは人によって違って、どっちでもいい。自分一人では自信が持てないけど、色々な人に優しくしてもらうことで『自分が生きている意味がある』と思える人もいる。」安田氏は自己肯定感、自分の生きている価値を感じることが重要だと話した。

 

実際安田氏も、自身が辛かった時期は「自分はきっと何かを成し得る。もっとできるはずだ。」という自己肯定感が自分の支えになったという。

 

ただ、「どのような居場所にいると自己肯定感が育まれる」というような、万人に当てはまる「自己肯定感の獲得法」はないという。

 

職業の一例を言えば、単純作業を着実に実行することに充実感を覚える人もいれば、クリエイティブな仕事で実績を出したい人もいる。その人の性格や歩んできた道のり、人生の中でどこでどのような人に囲まれるなど、自己肯定感を持つ方法は、ひとりひとり違う。

 

 

最後に、若者へのメッセージを聞いた。

 

安田氏は、「人間、好きに生きればいい。性格も全員違うわけで、ある物事をみて感じることも全然違うはずで、他人がその価値観を100%理解することはできない。なので、具体的に、”こういうふうに生きたら良いよ”とは言えない。だから何も伝えられないけど、ただ、好きに生きて満足できればいいと思う。」と語った。

 

 

(了。前編の続き。全2回。)

 

 

トップ画像:(C) Japan-Indepth編集部

 

 

キズキグループカンパニーサイト:https://kizuki-corp.com/

 

キズキグループ採用情報サイト:https://kizuki.or.jp/company/

 

キズキ共育塾: https://kizuki.or.jp/

 

キズキビジネスカレッジ:https://kizuki.or.jp/kbc/

 

 


copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."