「参院選で社会のあり方問え」結城康博 淑徳大学教授
「細川珠生のモーニングトーク」2019年7月6放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・高齢社会の介護・医療問題。「人間の尊厳」の視点取り入れた議論必要。
・政府は、中高年の引きこもり対策、介護職員・保育士の人材確保に取り組むべき。
・我々は、労働減少社会においては不便さを甘受せねばならない。
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7月4日、参議院選挙が公示され、いよいよ選挙戦が幕を開けた。今回のゲストは、社会保障・社会福祉の専門家である、淑徳大学教授結城康博氏。選挙戦の争点の一つとなる社会保障政策について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
まず細川氏は、消費増税には反対するが社会保障の充実を望むという「国民のわがままな思い」について、結城氏の考えを聞いた。
結城氏は、「消費税を上げるのであれば、(消費増税分の増収を)全て(社会保障を)充実させるのに使うのが基本だと思うが、国の借金もあるので難しい」と指摘した。その上で、社会保障の充実を公約に掲げる政党や候補者に投票する際は、その細目を確認すべきと述べた。具体的には、充実させる社会保障の項目、充実の度合い、財源、を挙げた。
細川氏は、日本社会が高齢化、長寿化を続けている状況に言及。「社会保障のコストはいくらあっても足りない」と指摘した。さらに、「政府が声高らかに言うようになった『人生100年時代』は、本当に幸せなのか、考えてみる必要があるのではないか」と述べた。
結城氏はこれに同意した上で、「人生100年といっても、85歳以上の要介護認定率が平均約50%」と述べて、「ピンピンコロリ」の難しさを指摘した。やみくもに医療と介護を適用することは、本人の意思に反する場合もあるという。看取りや終末期医療について、国民的議論が必要だと主張した。
また、結城氏は、政府が健康寿命と平均寿命の差を縮めることを目指して、介護予防や高齢者雇用に取り組んでいると説明した。その上で、「人間の尊厳」といった観点を政策に取り入れるべきだと主張した。
細川氏は、高齢者の健康について、「若い頃の過ごし方が非常に大きく影響すると思う」と指摘した。これに対し結城氏は、「30~40代の生活習慣がそのまま70~80代に引き継がれる」と述べ、中高年の引きこもりの問題に言及した。
内閣府は今年3月に、自宅に半年以上閉じこもっている40~64歳が、全国で推計61万3千人いるとの調査結果を発表した。 中高年の引きこもりは、将来、生活保護受給者になり、社会保障の膨大な負担になる可能性があるとして、問題視されている。
中高年の引きこもりが引き起こす問題はそれだけではない。結城氏は、8050問題を挙げた。8050問題とは、80歳前後の親が、50歳前後の無職の子どもを養う状態。将来、要介護者の家族が引きこもりであるという、支援困難ケースに発展する可能性があるという。
結城氏は、中高年の引きこもり対策を進めるべきだと主張した。障害や精神疾患がなく、現在は支援の対象でない人を含め、中高年の引きこもりを公共サービスの対象者と位置づけることが必要だという。「就労に結びつけば、生活保護の利用者が減り、社会保障額にとって間接的にプラスになる」と述べた。
細川氏は、8050問題に関連して、介護についての問題を挙げた。少子化に伴う在宅介護が難しくなっていること、介護職員の確保が難しいこと。これらの問題の解決策を、結城氏に聞いた。
結城氏は、まず、各党が介護職員・保育士のマンパワーについて問題意識を持っており、参院選の公約に掲げていることを説明した。その上で、「このままの民間頼みでは、いくら税金を投入しても人材確保は難しい」と述べた。さらに、介護職員ないし保育士を公務員として雇用を安定させるようなシステムを提案した。
細川氏は、かつてない規模の長寿化や人口減少に対して、従来の方策では太刀打ちできない、と述べた。
結城氏は、「便利な世の中をある程度諦める」ことが必要ではないかと述べた。「便利ということは、誰かが働いているということ。便利はもう社会には合わないと認識して、我々が不便さを甘受しなければならない」と主張した。例として、24時間営業を挙げ、「労働人口の働く場を少なくしていかないと、労働減少時代には難しい」とした。
結城氏は最後に、「今回の選挙を通して、日本の社会のあり方を問うていただきたい」と述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年7月6日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。