「既得権益をぶっ壊す!」NHKから国民を守る党党首立花孝志参議院議員
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)・Japan In-depth編集部(石田桃子)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・政策の柱は、①NHKのスクランブル化 ②消費税率下げ。
・「YouTubeを使った政治」がカギを握る。
・しがらみから自由で忖度しない新しい政治を「ゆっくり」浸透させる。
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立花氏が党首を務める「NHKから国民を守る党」は、7月の参院選で1議席と政党要件を獲得した。れいわ新撰組と共に、注目を集めている。またYouTubeを駆使した情報発信も他の政治家とは一線を画す。立花氏の本音に迫った。
安倍:「NHKのスクランブル化」という、個々人の家計に直接響く政策が国民の支持を集めたとの見方があるが。
立花氏:「(NHKの受信料という)目先のお金よりも、既得権益に挑んだことが評価されたと思う」。
安倍:NHKから国民を守る党はどのような政策を掲げているのか
立花氏:「NHKのスクランブル化。それから、税率を(5%に)下げて税収を上げる。増税すれば消費が冷え込み、税収は下がる。これは江戸時代からわかっていることだ」。
安倍:国民民主党代表の玉木雄一郎氏や、れいわ新選組代表の山本太郎氏も減税を訴えている。主張に違いはあるのか。
立花氏:「玉木さんは、いろいろな政策を言い過ぎて分かりにくい。」
安倍: 国民民主党玉木代表に対し自公連立与党入りを打診したというが、その意図は何か。
立花氏:「安倍首相の懐にあえて飛び込む方が良い。野党は弱い。本当に国民のことを考えているのか。政権がやろうとしていることと世論との乖離を追及することで、中道保守として何某かの貢献ができると考えている」。
「玉木さんは、NHKから国民を守る会の政策を受け入れようとしている。彼には先を読む力がある。YouTubeを使った情報発信もすでに行っていた」。
安倍:立花氏も最近YouTubeの配信を盛んに行っている。
立花氏:「NHKから国民を守る党は、投票に行かない人から票を取る。投票に行かない人は、テレビを見ずにYouTubeを見る人が圧倒的に多い。投票に行かない世代は、何を求めているか。消費税増税は嫌。そしてスマートフォンの負担。スマートフォンは国民の生命や財産を守るために必要だ。だから、スマートフォンの購入費や維持費を税金で保障する。これが響く。YouTubeで有名なタレントとタイアップするだけで、拡散力が相当違う。新聞やテレビより安価にCMが打てる」。
「玉木さんは、お金の使い方が下手。なぜなら、背後に既得権益の塊・連合があるから。『しがらみのない小池百合子』も、連合とくっついた後、失敗した。玉木さんは、これからの選挙でいかにしがらみが不利になるかを分かっている。連合と手を切ることのできる民主党系の人が10人ほど集まれば良いのではないか」。
安倍:野党勢力の大同団結についてはどのように考えているか。
立花氏:「大同団結は世界の潮流が許していない。左派ポピュリズムには限界がある。お金のない人たち向けの政策は伸びない」。
「山本太郎さんのれいわ新選組は、前回の参院選で、議席は1から2に増えたに過ぎない。立憲民主党の票を取っただけだ。今でこそ応援されているが、立憲民主党の枝野さんが2年前にもてはやされたのと同じ。山本太郎さんの情熱は素晴らしいが、政策は実現されていかない。支持者に実益が出ない。一過性だろう」。
「れいわ新選組は、次の衆議院選挙で、20億円を寄付で集めようとしている。自民党が経団連と竹中平蔵に忖度することと同じことをやろうとしている。NHKから国民を守る党は、政党助成金を10億円借りる。お金は必ず返す。返すあてがちゃんとあるから、忖度しない。人にお金はもらわない。借りて、利息をつけて返す。利息が忖度。それ以上のことはしない」。
安倍:与党に対しては、どのようにアプローチしているか。
立花氏:「まだおこがましい。自公と合流するには、参議院で少なくとも5議席くらい持っていないといけない。次の選挙、その次の選挙でどれくらい議席を伸ばすかを考えている。ゆっくりと国民に、政治、選挙、民主主義を発信することが自分の仕事だと思っている。今は、注目を浴びるような言動をしてヒール役になって、知ってもらう。民主主義は慌ててはいけない」。
「参議院で確実に票を伸ばしていくこと、新しい政治、選挙にお金をかけないという戦術を使うということ。国からもらう政党助成金や議員報酬の原資は、税金。税金を使って政治活動や選挙運動をする。そうすれば誰に忖度しなくてもいい。そういう新しい支持のやり方を、ゆっくり浸透させていくことが大事。直ちに何かをしようとは思っていない」。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
安倍:今後、どのような候補者を発掘するか。
立花氏:「政治家が一番嫌がるのは盆踊りに行くこと。忘年会や冠婚葬祭。一般大衆に頭を下げなくてはいけない。それを取り除けば、多くの人が政治をすると思う。熱いのに、寒いのに駅前に立ってビラを配るのは、はっきり言って頭が悪い。頭の悪い人がが政治家をやっているから、官僚の言いなりになる」。
「今の日本の国会議員は、頂点の少し下の人がやっている。年収3000万くらいで喜んでいる。経営者って年収億超える。そういう人に降りてきてほしい。金銭不祥事の心配がない経営者や、法律に明るい弁護士が政治家になると良い」。
「行政は、国民の生命・財産を脅かすことができる。立法府はそれを縛る必要がある。国会議員は、法律を作らなくてはならない。ところが、立法府の人間は、行政府の人間の法律改正をほとんどそのまま受け入れている。法律知識があって、行動に移して、実現できるか。既得権益が潰しに来るのをはねのける力があるのか。ということ」。
「それがこれからYouTubeで発揮される。これまでの政治家はポスターのイメージ(で選ばれてきた)。これからは、YouTubeを使わないと、喋れないと思われて、有権者に選ばれなくなる。自分の言葉で抑揚をつけて説明できるかどうかが大事」。
「一部の賢い人たちが国を富ませて、一般大衆を養っていく。中国やアメリカはこれをよくわかっている。自分たちは一般の大衆であり、超一流の人を選ばないと国が滅びる、とわかっている。しかし、日本の場合は、有権者が自分を有権者様だと思っている。国を引っ張る人と自分たちは対等だと思っている。だから、共感を買う人に票が集まる。だから本当に頭のいい人たちは政治をしない。根底から変えなくてはいけない」。
「ドナルド・トランプさんも、『あなたたちのいうことをまともに聞いていたら国が衰退するから、俺に任せておけ。そのかわりあなたたちの生活はしっかり保障する』と説明すれば、『そうか、この人についていこう』となる。誰だって強いリーダーについていきたい。それをメディアが曲げてきたから伝わらなかった。だからTwitterやYouTubeを使って直接国民に訴えている」。
立花氏は、東京メトロポリタンテレビジョンとマツコ・デラックス氏に対して、集団訴訟を組織した。その目的は何か。
立花氏:「『戦うときはエネルギーを一点に集中させろ』と、NHK時代で学んだ。裏切り者が10人いた時、1人を攻撃すると残りの9人はビビる。マツコ・デラックスさんは、既得権益の表現者。テレビ局をたたくよりも分かりやすい。一番ぶち壊さなくてはならない敵はメディアだ。」
▲写真 立花氏の事務所の棚を埋め尽くす書類ケース。中身はすべて裁判の資料だという。 ©Japan In-depth編集部
立花氏:「裁判は約1000件行った。現在進行しているのは50件ほど。」
安倍:安全保障や憲法改正の問題については、どう考えているか。
立花氏:「そろそろ日本もある程度の武力を(持たねばならない)。自衛隊自体がすでに相当な武力であるとは思う。竹島で自衛権が行使できていないことを見ると、政治家が誘導するのを好ましいとは思わない。政治家は憲法に縛られているから。9条については、『日本国を守るのか、戦わず植民地になる可能性をはらんだ状態でいるのか』広く国民に議論してもらいたい。交戦権を認めないという条文は、自衛権を否定している。NHKから国民を守る党は、直接民主主義を謳っているので、国民投票を含む改憲の発議には同意する。ただし、NHKのスクランブル放送の実現が伴わなければ、反対する可能性もある。」
安倍:NHKの受信料の問題については、様々な提案がなされている。受信料を廃止し、その分を税金で賄う案。立憲民主党の中谷一馬衆議院議員は、受信料を半額にする代わりに全世帯から徴収する案を提示している。これらについて、どう考えるか。
立花氏:「経費や番組内容を考えない意見だ。庶民の味方として権力を監視するのがNHKの役割。受信料が収入に関係なく均一であることがミソ。所得の高い低いにかかわらず、同じ圧力をNHKに対して持つようにする、本来庶民側につくような受信料制度。NHKを国営放送にするなら、いらないのではないか。公共放送をもう一つ作って国民が選べるようにし、切磋琢磨させる方法もとりうる」。
「労働組合や連合、その他のいわゆる既得権益、何もしない人たちがたくさん給料をもらっていて、今の制度を守ろうとしている。改革しようとする人間を、それ自体既得権益であるメディアを使って攻撃する」。
安倍:NHKのスクランブル化は、どのように実現するか。
立花氏:「過半数を取るのが一番確実だが、時間がかかる。あとは自民党との交渉ごとになる。現在はどの党も、スクランブル化をするかどうか、明確な答えをマニフェスト上で出していない。どこかの党が出して、自民党が票を奪われると危機感を持った時に、実現するのではないかと思う」。
「NHKのスクランブル化が実現すれば、NHKはつぶれる。その時には、他の既得権益も必ずつぶれる。消費税を0にすることや、政権交代をすることよりも難しい。実現するには、相当の回り道、裾野をひろげることをしなければいけない」。
「キーワードは『ゆっくり』。焦ってはいけない。今、戦後に計画されたような道路がやっとできてきている。一般大衆は目の前のことしか考えない。政治家は50年後、100年後の未来を考えて先行投資をしていかなくてはいけない。反発を受けても、これが正しいんだ、黙ってついておいで、という信頼をどこまで勝ち取ることができるのか。一般大衆は結果でしか判断しないから、説明せずに結果を見せる。そういう形でやっていかないと、国の舵取りはできない」。
「だから私は、目先の票にこだわっていない。それでも、同じように日本全体、子々孫々のことを考える人たちが、ある程度の数はいる。それを信じて毒を吐き続けるしかない」。
トップ写真:©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。