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.社会  投稿日:2019/12/22

東京ユアコインって何? 東京都長期ビジョンを読み解く!その82


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・東京都が新たに発行するポイント「東京ユアコイン

・SDGs実現に貢献した人にポイントを付与する社会貢献型事業。

・実証実験の対象地域が一部に限定されている事などに疑問。

 

東京エアコイン、でもなく、東京ヨアコイン、でもない。「東京ユアコイン」初めて耳にした方も多いことだろう。地域通貨なのか、仮想通貨なのか、と疑問を持つところであろうが、実際は東京都が発行する新たなポイントである。

このポイントはなかなか良い点が多い。SDGsの実現に貢献した人にポイントを付与するという社会貢献型の事業であることだ。また、社会課題解決につながるだけではなく、キャッシュレス化を推進することで、Society5.0の実現を加速させるともいう。

しかも、モデル事業として実験的に行って成果を検証し、今後の展開を考えようという事業であり、とても素晴らしい事業である。東京都は年末に、凄いものを持ってきた。小池都政の成果であるともいえるだろう。SDGsの理念を体現する具体的な実践をするとは、東京都、特に戦略政策情報推進本部、さすがである!

 

■ 東京ユアコインとは何か

国連が掲げる「持続可能な開発目標」とキャッシュレス決済の推進を同時に行うこの挑戦的な取り組み、事業と言うより実証実験なのだが、具体的に見てみよう。

◇事業実施場所

 ①自由が丘をはじめ都内東急電鉄沿線地域等

 ②大丸有地域(大手町・丸の内・有楽町)

◇ポイント付与対象の活動

 ・オフピーク通勤

 ・プラスチックごみ削減

 ・マイバッグでの購買

◇期間

 令和2年1月~2月:モデル事業実施、令和2年3月:効果検証

◇ポイント発行規模

 ・各2,500万円相当

◇受託者

 ①東急エージェンシー

 ②三菱総研

【出典】東京都発表資料、HPより

 

生活エリア(①)とオフィスエリア(②)の2つのエリアでの実験だそうだ。①のほうは、マイバッグを持参したり、通勤時の混雑時間を避けて通勤したり、地域の商店街で購買したり、自然保護活動に寄付した人に、TOKYU POINT(編集部注:関東を拠点とする東急グループや全国の加盟店で貯めて使えるポイントサービス)を付与するそうだ。

②のほうは、通勤時の混雑時間を避けて通勤したり、マイバッグを持参しらし、リユース可能な容器を使ったお弁当を購入したりしてプラスティックのゴミ削減をした人に、ポイントを付与する。それを受けて、QRコード決済でポイントを消費したり、他のポイントとの交換もできるようになるようだ。

 

■ 東京ユアコイン、参加の条件が・・・

実際、詳細な実施概要はまだ決まっていないようだが、①はTOKYU POINTは、会員数251万人、ポイント付与数99億ポイントを発行する、東急グループ最大のポイントサービスだそうなので、それを最大限に活用して実施する。

▲図 【出典】三菱総研HPより

 

②の具体的なイメージは上記のとおりである。時差BIZ、ぷらゴミ削減、地区内消費などとっても地域課題解決の取組をすすめていくようだ。

①に参加するには、東急線を利用したPASMO定期利用者、TOKYU POINT登録者、東急ストアを利用する人、TOKYU CARDカード会員や決済で買い物をした人であることが条件である。なので、これ以外の人は参加できない。自由が丘や東京に関係ない人には関係ないということだ。社会実験的な要素もあるため、仕方ない部分もあるかもしれない。

 

■ それでいいの?問題は3つ

しかし、問題が3つある。

第一に、東京都でも特別なエリア、裕福な人であり、経済の中心地で、目立つところで実証実験をやることの意味である。はっきり言うと、成功確率が高いところで実証実験をなぜやるのかということだ。ここで成果が出たとしても、他の地域に広がるようには思えない。その後の広がりが想定できない。社会問題解決の「トリクルダウン」(上から下に流れる)を狙っているのだろうけど、それは現実的に難しいだろう。

第二に、一部の人、しかも相対的に恵まれた人たちにしかメリットがないものをなぜ行うのか。なぜお金持ちたちの人たちに5000万円もポイントを提供するのか。あまりに「上級国民」を優遇してはいないか。社会にとっていい行動をとった人に、ポイントと言う経済的利益を与える取り組みであるが、厳しい言い方をすれば、大企業や大企業に勤める人たち向けの利益誘導に見えてしまう。

第三に、公共政策の基本を押さえていないこと。本来ならSDGsの意識が都内で真ん中くらいのところにて行って、そこからの学びや知見を参考にするのが「公共政策」である。ポイント欲しさに参加するけど、その後、ポイントを取った人たちがどう意識変容するか、の言及があまりない。

最後に、厳しい言い方をすれば、理想は素晴らしいが、実態が追い付いていないようにも思える。とはいえ、こうした問題はあるが、是非頑張ってもらいたいものだ。実施にあたっては、成果が創出できるのか、目標値をどこに設定するのか、得た知見をどう進めるのかは厳しく問われなければいけないだろう。

トップ写真:イメージ 出典:Pixabay


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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