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.社会  投稿日:2020/4/11

新型コロナで独居高齢者孤立


嶌信彦(ジャーナリスト)

「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」

【まとめ】

・一人暮らしの65歳以上高齢者は2040年に896万3千人に。

・高齢者を社会的に孤立させぬ支援策が重要になっている。

・新型コロナでネットに無縁の高齢者の孤立が加速する。

 

「お年寄りが一番危険。特に持病を持っている方は無理をせずゆったり生活した方が安全です」

新型コロナウイルス感染症が発生し始めた当初は、世代的に60代後半以降のお年寄りがウイルスに侵されやすいといわれた。ただ最近は、若者や幼年者にもコロナウイルスに感染する人が出始め「世代はあまり関係がないのでは・・・」と言われだした。

このため、4月に入ってから若者たちもコロナウイルスに注意するようになってきた。3月末の連休あたりから渋谷や新宿に出る若者の数が減ってきたようにみえるし、街頭録音で「私たちは若いから大丈夫よ」と言っていた若者たちも「原因がわからないからコロナウイルスは恐ろしいみたい」と口調が変わってきた。緊急事態宣言が出てからは、かなり人出が減ってきている。

それでもやはり医療関係者によると、高齢者は抵抗力が弱いので無理をするとあっという間に亡くなるケースがあるという。実際、70歳代の私の親しい人がこの一ヵ月余りで3人も亡くなりショックだった。一人は喘息の持病を持つ医者で普段から健康に注意している方だった。ほかの二人は肺病と血流の悪い持病を持っている人だった。そのうちの専門家の一人は、コロナウイルスが発生した時から

「日本はWHOの情報に従って動いていますが、小生はアメリカのCDCの情報の方がベターだと思います。アメリカはウイルスなどの伝染は国家安全保障の一環と考え予算60億ドル、職員も2万人弱で世界のあらゆるウイルスその他の疾病に対し国家の安全保障を考え動いています。日本の予算の100倍です。検査キットをアメリカから譲ってもらったそうですが新しいウイルスですから専門家がやらないと間違いを起こすかもしれません。最初、陰性と出た人が3回目の検査で陽性と出た人もいます。隔離し陰性なら解放されるということでOKというわけではないと思います。肺炎、肺炎と騒いでいますが、熱は正常でも肺炎の人は多々います。全てダイヤモンドプリンセス号から上陸させ全ての方の検査をやった方がいいと思います。そして5日、1週間毎に検査すべきでしょう。船に収容されている糖尿病、高血圧、喘息、肺気腫等々の持病のある人は船から降ろし自宅で経過をみたほうがベターだと思います。致死率が低いですから当初は船内に強制収容するより埠頭に自衛隊のテントを張って収容した方が船内感染みたいにならなかったと思います(以下略)」

この方は2、3日毎に考え方や対処法を送って下さいましたが、その後の経過をみると言われていた通りの経過を辿っていました。PCR検査は1回に時間がかかるし、慣れた医者でないと間違いを起こしやすいので2-3回やった方がいいとも言っていました。

昨年4月、国立社会保障・人口問題研究所が日本の世帯数に関する推計を公表していた。それによると、一人暮らしをする65歳以上の高齢者が2040年に896万3千人となり、2015年より43.4%増え全世帯に対する割合は17.7%で、全国最多の東京では116万7千人と65歳以上の人口の約3割に上ると出ていた。背景は未婚や離婚の増加があり、高齢者の世帯主は2242万3千世帯で全世帯に占める割合は何と44.2%にも上る。特に東京都愛知を除く45都道府県では4割を超え、秋田では57.1%、青森では53.6%など10県で5割超になるという。

高齢者世帯のうち一人暮らしは7.4ポイント増の40.0%で、全都道府県では3割を超え、東京、大阪など15都府県では4割を上回ると推測されている。少子高齢化は日本の最大の社会問題になりつつあり、介護や地域の見守りがますます重要となって、高齢者を社会的に孤立させない支援策の具体化が各地域で重要になっている。

今回のコロナウイルス感染を契機に感染病対策と同時に高齢者の一人暮らしに国や地域、親族などがどう対応してゆくか、真剣に考えるきっかけにすべきと考える。

高齢者はネットができない人も多い。ネットができれば友人や世界ともつながることができるがネットに無縁の人はますます置いてけぼりになる可能性が強いのだ。

トップ写真:イメージ 出典:Pixabay


この記事を書いた人
嶌信彦ジャーナリスト

嶌信彦ジャーナリスト

慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、通産省、外務省、日銀、財界、経団連倶楽部、ワシントン特派員などを経て、1987年からフリーとなり、TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務める。

現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」にレギュラー出演。

2015年9月30日に新著ノンフィクション「日本兵捕虜はウズベキスタンにオペラハウスを建てた」(角川書店)を発売。本書は3刷後、改訂版として2019年9月に伝説となった日本兵捕虜ーソ連四大劇場を建てた男たち」(角川新書)として発売。日本人捕虜たちが中央アジア・ウズベキスタンに旧ソ連の4大オペラハウスの一つとなる「ナボイ劇場」を完成させ、よく知られている悲惨なシベリア抑留とは異なる波乱万丈の建設秘話を描いている。その他著書に「日本人の覚悟~成熟経済を超える」(実業之日本社)、「ニュースキャスターたちの24時間」(講談社α文庫)等多数。

嶌信彦

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