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.国際  投稿日:2014/4/21

[古森義久]<中国の6分の1を占めるウイグル>中国当局のウイグル民族弾圧はテロの危険を高める


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

執筆記事プロフィールBlog

中国の共産党政権にとってはウイグル民族の扱い方が危険な爆弾のような潜在的破壊力を高めるようになった

こんな指摘がアメリカのCIA(中央情報局)の元専門官集団の民間安全保障研究機関「リグネット」によってこのほど明らかにされた。

ウイグル民族の処遇というのは中国政府にとって一貫して深刻な課題となってきた。 中国領全体でも6分の1を占める新彊ウイグル自治区は165万平方キロ、日本の4.5倍の広大な領域を占める。同自治区の人口は合計2200万だが、そのうちの45%を構成するウイグル民族は東トルキスタンと呼ばれたこの地域をかつて占有し、独立国をも築いていた。

それが中国に占拠され、いまやウイグル伝統の言語、宗教、文化などを浄化する漢民族化が進められている。ウイグル人たちはこれに反対し、独立を求め、中国当局に対しては激しい武力攻撃をも含む抵抗を続けている。数百人の死者を出した2009年のウイグル騒乱はその一例だった。

中国当局はその後、ウイグル人への激しい弾圧を進めてきた。中国当局への抵抗はテロ活動や国家転覆の試みとみなし、苛酷な対応策をとった。中国政府は新彊ウイグル自治区の完全保持を中国の国家全体にとっての「核心的利益」のひとつだとも宣言している。だからその治安維持にも徹底した措置でのぞむわけだ。

今年2月末には中国当局はウイグル族の著名な経済学者イリハム・トフティ氏を国家分裂容疑で逮捕した。同氏の周辺のウイグル人数十人も検挙されたという。

「リグネット」は中国当局のこうした弾圧政策は逆にウイグル族を団結させ、テロに走る危険を高めることになるとの分析を発表した。この分析によると、ウイグルのテロ拡大の危険性は隣接のアフガニスタンからの米軍撤退により大幅に高くなった。

アフガニスタンはタリバン政権下、かつてアルカーイダなどイスラム系国際テロ組織の後方基地や訓練拠点となったが、いまや米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の全面撤退でまたイスラム系テロ組織の活動拡大を招く展望となってきた。

その結果、新彊ウイグル自治区全体でイスラム教のウイグル過激派が活動を煽られることになるというわけだ。その場合に中国当局のいまの強硬策がかえってウイグル住民をさらなる過激なテロ行動へと追いやる危険が指摘されるのである。

 

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