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.国際  投稿日:2020/12/26

共産党政権に逆風【2021年を占う!】中国


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

「澁谷司の東アジアリサーチ」

【まとめ】

・中国の財政赤字はGDP300%超、既に破綻状態。

・中国経済低迷最大原因は、習近平政権の社会主義政策への逆戻り。

・中国共産党の延命には、平和的外交の展開が必要。

中国共産党にとって、2021年は結党100周年に当たる。だが、同党にとり、来年は今年(2020年)以上に厳しい年となるだろう。

実際、中国国内の経済状況を見れば、すでに経済は破綻していると言っても過言ではない。中央政府の財政赤字は、少なく見積もってもGDPの300%を超える。

周知の如く、習近平政権は「一帯一路」政策で、チャイナマネーをばら撒いた。だが、今年、武漢発症の「新型コロナ」の影響で、世界中、不況に陥った。そのため、貸し付けた国々から返済が滞っている。

他方、中国共産党は、(東シナ海を含め)南シナ海を自己の領海と位置付け、軍拡を続けている。だが、果たして、「大陸国家」中国が、同時に(米国に対抗できる)「海洋国家」を兼ねる事ができるのか、大きな疑問符が付く。

さて、2012年11月、習近平総書記が登場して以来、経済(投資・消費)は右肩下がりである。低迷最大の原因は、習近平政権が資本主義をやめ、社会主義へ逆戻りしたせいだろう。

1978年12月、鄧小平が「改革・開放」政策を打ち出し、中国は順調に経済発展を遂げた。ところが、習主席は、毛沢東主席を真似て、社会主義的政策を採るようになった。そのため、これまでの「民進国退」(民間企業が伸張し、国有企業が後退)がいつしか「国進民退」(国有企業が伸張し、民間企業が後退)という現象が起きている。

特に、2013年11月に導入された「混合所有制」は問題ではないか。活きの良い民間企業と潰れそうな国有企業、ないしはゾンビ化した国有企業を無理やり併合した。当然、活きの良い民間企業の活力は失われるだろう。

同時に、北京政府は、政治思想優先の「第2文革」を始めた。たとえ「習近平思想」を学んでも、ビジネスにはほとんど役に立たないのではないだろうか。

▲写真 北京市街地の風景(イメージ) 出典:Pixaday

一方では、中国共産党は、庶民を搾取している。北京政府は、2010年代前半、株価はこれから上昇すると庶民を煽った。しかし、実体経済が伴わず、株バブルが起きた。そして、2015年6月、バブルが弾け、株が大暴落した。その時、約9000万人が損失を蒙ったという。

その後、中国共産党は「P2P」というインターネットを通じた小口金融会社立ち上げを許可した。多くの社長は、党に近い人物である。庶民から出資を募ったが、大半の会社は倒産している。

また、2018年には、北京は、有名女優、范冰冰を見せしめにし、芸能人からも(裏契約の違法な)カネを徴収した。

それでも、中央政府は財政的に苦しいので、今年、アリババのような優良民間企業からもカネを上納させている。これでは、他の民間企業もやる気を失うだろう。

北京が、以上のような施策を採っていては、中国の成長は望めない。

▲写真 上海 出典:King of Hearts

ところで、近い将来、中国共産党政権が(経済的行き詰まり以外で)崩壊するとしたら、どのような形で瓦解するのだろうか。考えられるシナリオは以下の通りである。

第1には、湖北省の三峡ダム決壊によって、共産党政権は崩壊するかもしれない。同ダムは1、2年前から湾曲、及び防護石の陥没が確認されている。ダムが決壊すれば、貯水池の水が巨大な津波となり、上海まで達するだろう。

その津波で、武漢より下流の都市とその周辺部は水没し、その損害は計り知れない。数千万人から億の単位で人命が失われるだろう。長江流域は中国のGDPの40%を占めるが、それが、突如、消失するのである。これでは、中国共産党政権はもたない。

▲写真 三峡ダム 出典:Rehman

第2に、目下、中国では「新型コロナ」、水害(三峡ダム死守するため、その上下流のダムを決壊)、蝗害等で食糧不足が生じている(今年、インドから10万トンのコメを輸入)。そのため、各地で暴動が起きる公算が大きい。

現在、多くの中国人は「民主化」を求めて、立ち上がる事はない。だが、食べられなくなれば、民衆は蜂起するだろう。中国共産党がデジタル専制体制を敷いても、腹を空かした大衆を抑えるのは難しい。

第3に、共産党内部で「習近平派」と「反習近平派」が熾烈な党内闘争を行っている。習主席へのクーデターが起こり、その後、5大戦区の人民解放軍同士が戦火を交える。これによって、北京政府は分裂・崩壊するかもしれない。

第4に、米大統領選挙結果次第では、米中間で熱戦が起こる可能性も排除できない。仮に、トランプ大統領が再選された場合、選挙に中国共産党が介入したとして、大統領はNATO軍を動かし、対中軍事制裁を行わないとも限らないだろう。

その際、米国はNATO軍に日本・インド・オーストリアを加えて、対中包囲網を敷く(ロシアの立ち位置は微妙だが、ひょっとすると、NATO側につき、対中軍事行動に加わるかもしれない)。

米国を中心とした連合軍の対中攻撃で、北京政権は滅亡するというシナリオも考えられよう。

なお、中国共産党が延命するには、「戦狼外交」をやめ、王毅外相が始めた「衰狼外交」(平和的外交、あるいは「死んだふり外交」)を展開する必要があるのではないか

トップ写真:安倍前首相と習近平中国総書記 平成29年11月11日(現地時間)、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議出席等のためベトナム社会主義共和国のダナンにて 出典:首相官邸




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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