テレワークが見直される【2021年を占う!】働き方
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・2020年は新型コロナのせいでテレワークが普及。
・社内のコミュニケーションが減少、創造的な仕事には支障が。
・2021年は働き方と人との付き合い方が見直される。
2020年は新型コロナのせいでテレワークが普及した。最初は戸惑いもありつつも、意外とやってみたらいいじゃないか、という反応を去年は良く耳にした。2021年はどうだろうか?
■ 働き方
通勤時間が節約できるし、電話や無駄な会話が減り、仕事に集中できて効率が上がる。そう、思った人も多かったろう。なにより、嫌な上司の顔を見なくて済むのは大きい。(笑)
しかし、それも半年以上続くと、だんだんと不便な点も分かってきた。まず、色々なオンライン会議システムがあり、相手の会社のシステムの関係で自分が慣れていないものを使わざるを得なかったりすると、勝手が分からずやりにくいことがある、とか、回線の関係で声が割れたり、映像が落ちたりする、とか。まあ、そうした問題はテクニカルなものであり、ある程度慣れでなんとか解消するのでそう深刻ではない。
問題は、会社の中のコミュニケーションが滞ることだ。皆が職場にいるときは、ちょっと声をかければ確認できるようなことも、いちいちメールしたり、slackに書き込まなくてはならなくなった。これは結構なロスだ。それに、会話ならスムーズにいくものも、文字でのやりとりだとなんとなく気持ちが伝わらないことが往々にしてある。文面が妙にビジネスライクだと、相手が気分を害しているのではないか?などと邪推してしまう経験、誰しも1度ならずあろう。
かつて職場では、普段のなにげない会話で色々なアイデアが出たものだ。それがコロナでなくなった。ソフトバンク株式会社代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏が、創造的なアイデアはやはり職場で色々な部署の人間が交流して生まれるものだ、と言っていたが、まさにその通りだ。
隣に同僚がいれば、「こんなアイデアあるんだけどどう思う?」と気軽に聞けるのに、今はそれが出来ない。テレワークは実は企業の中長期的生産性向上には向かないのではないか?と思えてきた。
もちろん1人で集中した方が良い仕事はあるだろう。しかし、何か新しい物を生み出そうという時には、人と人とのインタラクションが不可欠だと実感しているのは筆者だけではあるまい。
2021年はテレワークオンリーの会社は減り、出社とのハイブリッドな働き方が見直されるだろう。
■ 社外のネットワーク
コロナ禍で、社外の人との人間関係は明らかに疎遠になった。ちょっとランチでもして意見交換、というのが気軽に出来なくなった。ディナーや飲み会は言うに及ばずだ。なんとなく家から出るのがおっくうになり、人と会わない日々が続いている・・・そんな人も多いのではないか?
社外の友人と会わなくなるということは、自分のネットワークが狭くなることに他ならない。それはビジネスの上で決して良いことではない。仕事は、結局は人と人のつながりで成り立っているのだ。
コロナ禍で仕事が減ったり、事業の継続性が脅かされたりしたとき、親身になって相談に乗ってくれる友人がいたら・・・。そう思ったことはないだろうか?結局、“A friend in need is a friend indeed.(まさかの友は真の友)”の言葉通り、困ったときに手を差し伸べてくれる人が周りにいるかどうかが、究極のリスクヘッジとなり得る。コロナで人付き合いが減るのをよし、としていて本当にいいのだろうか?
2021年は、この「社外の人とのつながり」が見直される年になるだろう。
2020年は目に見えぬ未知のウイルスとの戦いで明け暮れた。2021年は、仕事の仕方、そして人との付き合い方をどう元に戻していくか考えるべきだろう。
ニューノーマル、などという言葉が一人歩きしているが、仕事の本質はなんら変わらない。結局は、人間がやることなのだ。テクノロジーはそれをアシストするものに過ぎない。
ウイルスと共存しつつ、どう人間関係を保っていくか、もしくは開拓していくか。この根源的な問いが、改めて私たちに問われている。
トップ写真:イメージ 出典:ぱくたそ
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。