「罰則と補償、バランスの取れた政策を」国民民主党 舟山やすえ参議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2021年2月6日放送
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
【まとめ】
・コロナ関連の改正法は、「審議」「内容」が足りていない。
・東京の飲食店に限らず全国民に対し、より手厚い給付金を出すべき。
・国会のオンライン化は慎重に進めながら、その理由説明もすべき。
2月3日、新型コロナウイルス対策の改正特別措置法と改正感染症法、改正検疫法が成立した。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」では、参議院議員で国民民主党の政務調査会長である舟山やすえ氏を招き、新型コロナウイルス対策を中心に、野党の立場からの話を政治ジャーナリストの細川珠生氏が聞いた。
国民民主党は、新型コロナウイルス対策の特別措置法などの改正案採決に反対をしたが、野党でも賛否が分かれている。まず、国民民主党が反対した理由について聞いた。
舟山氏は、その理由としては、大きく分けて「審議」と「内容」の2つがあるとした。
「審議」については、「これだけ大きな法律というのはじっくりと時間をかけて審議をするべきだったが、あまりにも早かった。年末に急に話が出てきて突然法案がまとめられ、最終的には各党の意見を反映されないまま一部で合意して決まってしまった」と述べた。
さらに、「国会審議の前にまとまってしまうのはおかしい。いざ国会が始まっても衆参で実質審議はほとんど一日ずつ。こんなに短い審議はない」とし、審議の仕方について批判した。
次に「内容」については、今回緊急事態宣言が延長になったことを受け、「1ヶ月だから我慢すると言っていた人達もこれからどうなるんだろうと思っている。今回の法案には十分な補償が盛り込まれなかった」と述べ、国民が不安に思うのは十分な補償がないからだとの考えを示した。
また、「昨年の12月に国民民主党は十分な補償と場合によっては罰則も、という法案を出したが、前提は補償だ。穴埋めをしてきちっとこれなら我慢できる、これなら短期間きちっと協力しようと、それがあって初めて実効性が保てると思う。言うことを聞け、我慢をしろ、聞かなきゃ罰則だというのはおかしい」と述べた。
罰則と補償のバランスが取れていないこと、それを修正する間もなく短期間で決まってしまったことが、反対した理由だという。
細川氏は、「緊急事態宣言の延長で皆、身動きが取れなくて非常に厳しい」としたうえで、「1ヶ月の延長で失業者が8万人くらい増えるという試算もある。飲食店の被害が注目されているが、(他の業種も)皆苦しい。必要な対策にはどのようなものがあるか」と舟山氏に聞いた。
舟山氏は「失業が増えているという話と、もう一つは失業とカウントされないが実質的に派遣で今仕事がないとか、休業手当がないとか、いわゆる潜在的な失業者が80万人以上とも言われている。明日の食料にも困ってるという方々をどう救うのかがまさに政治の責任だ」と述べた。
▲写真 ⓒJapan In-depth編集部
細川氏は、国民民主党が考えている、再度の国民に対する給付金について聞いた。それに対し舟山氏は、「皆が困ってる訳ではないのだから一律の給付はおかしい、という声があるが、誰が本当に必要としていて誰が要らないのか、線引きをしている余裕は今ない」とし、「一律の給付をして(後で)累進を強化するとか、税制で調整すればよい。まずは皆に届ければ、困っている人は一息つける」と述べた。
また舟山氏は「政府は『皆我慢してください』に加えて『その代わりしっかり支援します』と、この両面ではないのか。一律6万円では、規模の小さい飲食店は助かるが、従業員を何十人も抱えているようなところには焼け石に水だ」と述べた。
また、関連業者や地方の店、納入業者などへの手当てを更に訴えていく考えを示した。
細川氏は、「本当はそういうことを議論すべきだったのに、罰則を強化するという議論が先行してしまったのは非常に残念だ」と苦言を呈した。
次に細川氏は、「舟山氏は農水省の官僚の出身で選挙区は山形で、農林水産業が主たる産業である」ことに触れ、農林水産業に対する新型コロナウイルスの影響と、それに対する必要な対策について聞いた。
舟山氏は、「飲食店が動かなければ食材を供給している農林水産業も大きな打撃を受ける。さらに外国からの観光客が来ていないので、高級食材も動いていない。価格の低下が進んで今深刻だ」と、飲食業に関わる2つの問題点を提起した。
さらに、「食糧は外で食べなければ家庭で食べるという一定の需要はあるが、やはり花など、嗜好品が動かないのは非常に深刻だ」と述べた。「価格安定対策とか、需要の喚起対策などもやっているが、一方で食事もとれないような人もいるわけで、食糧援助などもやるべき時期に来てるのではないか。コロナ禍で貧富の差や困窮者が出てる中で供給できる仕組みを国が本腰を入れて取り組んでいくことも一つの方策だ」と述べ、生活困窮者対策が急務だとの考えを示した。
細川氏は、「国民民主党がいち早く国会の質問取りのオンライン化などを始めたことが、自民党の政調会長からも大絶賛されている」と述べた。そして「民間では当たり前のようにオンライン会議が進んでいるが、テレワークを7割と言われている中で、国会はオンライン審議が進んでいない」と指摘し、国会のリモートワークをどう進めていくのか、聞いた。
舟山氏は、「数日前にも、党内のエネルギー調査会はオンラインでやったが、全然不自由ない」と手ごたえを見せた。そのうえで、「国会審議はどうあるべきなのか、課題をきちっと洗いながら今後考えていく必要がある」とした。一方で、「ただ、参議院は基本的に全員出ているが、衆議院は半数ずつの出席になっており、これは検討が必要である」と述べた。
細川氏も、「半分しか出席しないで半分はそれぞれ皆中継を見ることになっている」ことに対して疑問を呈した。
舟山氏は、部屋で中継を見ているはずが、食堂で見かけたりすることがあったことを明かし、「参加は大前提だ」と強調した。
細川氏は、現在の「本会議場や委員会室にいないといけないという決まりを変えていかなくてはいけない」と述べ、「オンラインも参加と認める」ことを提案した。
舟山氏は、「(国会は)国権の最高機関、立法府、法律を作る場だ。場合によっては義務をかけて人を縛るという大事なことを決めていく場所なので、その中での審議がオンラインで大丈夫なのか、きちっと意思が通るのかという点はじっくりと議論する必要がある」と述べ、国会審議のオンライン化について慎重な意見を示した。
さらに、「こういった議論を参議院議員運営委員会が話を少しずつ進めている。ダメなのものはダメ、ではなくて、なぜダメなのか、こうすれば進められる、というところを前に進めていかないと」と述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2021年2月6日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。