「妊婦さん丸ごと安心セット作った」 前厚労大臣政務官自見はなこ参議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2020年10月10日放送
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
【まとめ】
・前厚生労働大臣政務官としてダイヤモンドプリンセス号に3週間従事した。
・2波目は初動が上手にできるようになり、情報連携も進んだ。
・女性のメンタルケア対策や妊婦さんが安心できるような対策を取った。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」は、自民党参議院議員であり、前厚生労働大臣政務官の自見はなこ氏をゲストに招き、新型コロナウイルス感染症対策に関し、今後必要なことと、コロナ禍での女性の心身両面からの健康などについて、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
自見氏は小児科医でもあり、国会でも医療関係を中心に制度作りに取り組んでいる。自見氏が厚生労働大臣政務官を務めていた時に新型コロナウイルス感染症の拡大が始まった。細川氏は当時一番大変だったことは何か聞いた。
自見氏は、「正直毎日大変だったが、中でも一番大変だったのは、ダイヤモンドプリンセス号で現場監督として3週間乗船した時のことだ」と述べた。その上で、当時の自らの役割を「パンデミックが起こっている地域の保健所長」のようだった、と表現した。
自見氏は、船には、クルー1000人、乗客2700人、計3700人いたが、そのうち2000人に基礎疾患があった事を明かした。
毎日積み重なる感染者をDMAT(災害派遣医療チーム)に搬送してもらい、700人が入院した。それ以外は安全だった。日本の水際対策や自粛期間等、その後日本で打ち出される大きな政策のひな型が全部パッキングされていた。
さらに自見氏は、3700人の内700人が感染したにもかかわらず、国内でダイヤモンドプリンセス号由来の感染者は一人も出なかったことを紹介し、「水際(対策)という大きな目的と、国民を守るという役目を果たした」と述べた。
また、その裏に自衛隊、医療関係者、自治体職員含め、壮絶な苦労があったとし、「どうにか新型コロナ、心筋梗塞含め関連死がなかったことはよかった」と述べ、過酷な状況の中でベストを尽くせたことを強調した。
細川氏は、「夏に感染の第2波が来て、今は少し落ち着いているが、(人々の)活動量が多くなっている。今の陽性者数は恐れるべき数字なのか」と聞いた。
自見氏は、「1波目では緊急事態宣言でとにかく(人々は)家から出なかった。2波目は、新しい生活様式(の定着)で何とか感染を防いでいる。1波目の時の感染者は高齢者が多かったが、2波目は少ない。また、1波目の時は介護施設、障がい者施設、様々な施設でクラスターが発生したが、2波目は、DMATや看護師が入って、予後教育含め、初動が上手にできるようになってきている」と述べた。
もう一つは情報連携だ。自見氏は、初期は、マスク不足について病院からの情報に混乱があったが、今は、G-MIS(新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム)を用いて対処している事を紹介した。
G-MISとは、8000の病院でIDのログを繋いでおり、国で一元的にクラウドで病院の人工呼吸器の状態や物資の状況を瞬時に把握する仕組みである。これを春に立ち上げ、既に起動している。
「こういった仕組みにICTを活用することで、複合的に医療現場での負担が減り、(新型コロナの)波の乗り方も上手になってきた」と述べ、厚労省の取り組みを評価した。
また、「ヨーロッパはじめ諸外国がもう一度緊急事態宣言を出そうとしている状況と比べると、日本人は1人1人が大変よく気をつけている。そこにこそ鍵がある」と述べ、日本の新型コロナウイルス感染症拡大阻止の為の、官や民の取り組みを評価した。
▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
次に自見氏は、今後の課題として、大きな集会や、オリンピックパラリンピックをどう行うかを挙げた。
「今は水際対策が万全で、鎖国状態だ。これを解除していく中で必ず感染が増えていくので、そこをどうアンダーコントロールにしていくかが次の課題だ」と述べた。
細川氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大は、特に女性のメンタルヘルスに大きな影響を与えていると述べ、8月の調査で、女性の自殺者が例年から4割増えた事を挙げ、「理由は様々だと思うが、何か施策として取り組むことはあるか」と聞いた。
自見氏は、新型コロナと妊娠・出産の関係について述べた。
「妊婦が新型コロナウイルスに感染すると、本人の同意の下だが、多くの場合帝王切開になる。これは、息むと飛沫感染するからだ。生まれた後も、2週間近く、あるいはPCR検査で陰性が出るまで、母親が子どもを抱っこすることもできず、母子の愛着形成に大きな支障が出てしまう」と問題点を指摘した。
そこで今回、妊娠している女性に「コロナに罹ることが不安だ」という理由で産婦人科医や助産師から特例的に発行されるカードを事業主に提示すると、事業主はその妊娠している労働者を休ませなければいけないという労働法制が出来た。既に500件を超える申請があるという。
しかし、これにはもう一つ問題があると自見氏は指摘し、それに対し次のような対応を取ったことを紹介した。
問題となったのは、労働法制上、有給でも無給でもいいという点だ。そこで、国が全部で90億円を投入し、事業主が妊娠している女性を有給で休ませる制度を作った場合に、事実上の支援金を支払っているという。この制度は、1事業所あたり20名の妊婦に対して使える。
「保育園、介護施設、医療現場、商店街、中小企業などで、妊婦を抱える事業主がいれば、是非この制度を使って欲しい。社労士の方にも(普及を)お願いしている」と述べ、この制度の普及を呼びかけた。
また、コロナウイルス感染者の妊娠・出産は、母子分離に繋がることから、産後ケアに力を入れる自治体には、PCR検査は妊婦に限って全額国が補償することにした、と述べた。
「トータルパッケージで予算措置を組んでおり、国家規模の『妊婦さん丸ごと安心セット』のようなものを作った」と述べた。
さらに自殺の問題に関して自見氏は、「人間は、本当の危機の時には自殺をしない、という本能があるそうだ。東日本大震災の時もそうだったと言われている。それがふと『なんとなく日常に戻るかもしれない』と、緊張が緩んだ時、衝動的な部分も含め最も自殺者が出易いと言われている。もしかしたら今はそういう時期にさしかかっているのかもしれない」と述べ、新型コロナウイルス感染症の拡大が社会に与える影響について懸念を示した。
また、細川氏が指摘した、家事と育児、仕事との両立、という女性特有のものがかなりの負担になっている点について、「政府や自民党として、原因をきちんと調査して対処する。そう(家事、育児と仕事の両立による負担の問題だけと)は言っていられないほどの数だと思っている」と、危機感をあらわにした。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年10月10日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。