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.政治  投稿日:2021/3/12

「長期政権の悪い面が出た」総務省接待問題立憲民主党本多平直衆議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!

【まとめ】

・強い政権の元でそこに近い官僚に「強い長期政権の悪い面」が出た。

・まずは参議院で追及する。単なる接待問題ではない可能性がある。

・野党が何を言っても平気という状態が続き、チェック&バランスが効かなくなった。

 

安倍: 総務省の過剰接待問題について、立憲民主党の皆さんが入れ替わり立ち替わり国会で質問していますが、官僚を処分してうやむやにするのは良くない。NTTの接待も明るみになった。20年前に国家公務員倫理法が出来て、きちんと法整備されたはずなのに、またこういう問題が起きた。なぜ問題が繰り返されるのか?

本多: まだ推測で確証がないが、思ったより広がっているという感覚がある。しかし、(官僚)みんながみんなそうではないと思っている。今回、山田真貴子氏(前内閣広報官)にしても、谷脇康彦氏(前総務省審議官)にしても、安倍前総理大臣や菅総理大臣に気に入られて中枢を歩んでいる人達。農水省のことも調査したが、彼らは吉川貴盛前大臣に呼ばれて参加している。吉川大臣というのは菅さんとも同期であり親しい関係。やはり、強い政権のもとで、そこに近い官僚に「強い長期政権の悪い面」が出てしまったということかと思っている。

安倍: 全ての省庁が同じようなこと、というわけではないと?

本多: そうだ。これから調査をするのでなんとも言えないし、全ての省庁でどんどん実態が明らかになり、僕の推理は間違っているということになるかもしれないが。今のところ、みんながみんなあんな感じじゃないのではないかと。安倍さんにも色々不祥事があったが、強い政権の悪い影響が、結果として(政権に)近い官僚たちにも侵食しているのではないか。大臣に呼ばれたり、(総務省の件は)大臣の長男が絡んでいたりと。そこで「行かない」という選択も官僚としては難しい。

農水省の場合は吉川前大臣に呼ばれて参加したわけだから同情の余地はあるが、総務省の事例については、いくら官房長官の長男に呼ばれたからといっても、NTTへの広がりなどからみて体質がちょっと酷いのではないか。

安倍: 秋本芳徳氏(総務省前情報流通行政局長)でしたか。呼ばれて参加して、でも「利害関係者という認識がなかった」との発言もありますね。どう考えても虚偽答弁ですね。

本多: そうだ。ああ言った点をもうちょっと追及したかった。ちょっと論点が多すぎた。総理の息子であるという点についても私たちはスポットを当てたかったので、一つ一つの官僚の嘘にまで言及することが出来なかった。だが、おっしゃる通り、利害関係者かどうなのかグレーゾーンである人も居ると思うが、確実にそうだと言える人についても虚偽を言っているわけなので(追及すべきだった)。

安倍: 長男(東北新社菅正剛氏)は囲碁将棋チャンネルの重役になっていたのですよね?

本多: 取締役だ。

安倍: このチャンネルはデジタル化に遅れてたのか。

本多: 正確には、4Kと違って『デジタルの中での画質が悪い』ということだった。画質が良いものと悪いものがあり、囲碁将棋チャンネルは、2018年、一番悪い画質であるのに、より良い画質のものより優位な扱いを受けていた。

安倍: 本来だったら認可も取り消されていたということ?

本多: そこまでではない。枠が新しく出来たので、その枠を割り振っていくときに、良い画像のところや沢山自身のスロットを減らしたところなどが優先して入った。ところが、最後囲碁将棋チャンネルよりも良い画像で提案した会社がもう枠がないという状況で。3つしか余っていない囲碁将棋チャンネルが当選ということになった。もしかしたらルール通りなのかもしれないが、素直に見れば何らかの操作があった可能性もゼロではないと我々は思っている。

実は電波行政の論点は4つか5つあって、4Kの話も後ほど出てくる。今後、囲碁将棋チャンネルは4K化をしたいと考えているが、その為にはまず枠が必要。だから、2018年当時の電波の割り振りの話と、衛星の使用料を安くして欲しいという話と、業界(ワーキンググループというのを作っている)の政策決定、これはそんなに関係がないかもしれないが、認可そのものの話とがある。

さらにもっと怪しい点もある。年末に飲み会が集中しているが、ワーキンググループの報告書が出たのも12月。流石にその報告書にまで影響を及ぼそうとしていたら、飲み会の開催時期は遅すぎる。なのであの飲み会は「先」のためのもの(と考えられる)。この先4Kにしていく為に、また電波の再編が本来なら今年に予定されていた(ので、そこに何らか影響を及ぼしたかったということ)。

怪しい点だけでも先ほど述べたように4つほど論点があるし、もっと隠されているかもしれない。

安倍: そこについては今後は誰がどのように追及していくことになるのか?

本多: 総務省の中で第三者委員会を作るという話になっている。だが、内部の話なのであまり信用は出来ない。まずは参議院で追及する。それと国会の中でも総務省の接待問題については引き継ぎをやっていく。本質的には検察にも頑張ってもらわないといけない話かもしれない。単なる接待問題ではない可能性がある。

安倍: 参議院でまず扱い、今後は司直がどのように動くかということにかかってくるわけか。

本多: そうだ。そしてメディアにも頑張ってもらいたい。総務省の内部調査(第三者調査)が上がってきたところで、「おかしい」という声を上げないといけない。「歪められていなかった」という結果が出てくると想定されるので。犯罪の立証までは簡単ではない。

安倍: 政策が歪められたか証明することがですね。

本多: そうだ。難しい。本当は予算委員会でももっと時間があれば詰めたかったと私も思っているが、残念ながら時間切れだった。まずは参議院に頑張ってもらって、という思いだ。しかし、実は贈収賄は政策が歪められていなくても成立する。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 参議院は今予算審議をやっているところだが、これから先もやっていくのか。

安倍: テレビに映らない期間も含めてまだこれから1ヶ月はやっていくわけですから。今日も小西洋之参議院議員が新たに、東北新社が一時「外資規制に違反していた」という事実があるのに認可を取り消されていなかったという論点を提示したところ。これに続いていかないといけない。一個一個の接待が、というよりは実態として「ズブズブ」の関係だったという可能性もある。」

安倍: 1998年の大蔵省の過剰接待問題から国家公務員倫理法が改正され、倫理規定が出来て。そこから20年くらい経っている。本来それを守らないといけない幹部達が実際には守っていなかった。それこそ問題じゃないかと。

本多: そうですね。菅正剛氏(総理の長男)が出てきたことで、ちょっと焦点がボケている。でも総務省の調査はある程度頑張った。内部調査資料を見てみると、『総理の息子だから』というよりは、何度も何度も同じ課長なんかが接待の席についている。一個一個の接待で歪めるというよりも、内輪感覚で飲んでいる。こんなに頻繁に飲んでいたら政策への信頼性もゆらぐ。だからこそこの総務省の話は酷いと思う。

安倍: ほぼ毎日みたいなペースで飲んでますね。実際に倫理規定を見るとすごく細かく(箸の上げ下ろしまで)書いてあるわけだが。研修もやっているはずなのにこういうことになってしまった原因は、長期政権と言うのも一因だと思うが、役人の感覚が麻痺してしまっているのか?

本多: ちょっと原因はわからないが、今回の処分は甘い。減給10分の1だなんて。これではまたやる、何年か経てば。

安倍: ノーパンしゃぶしゃぶ事件の後はものすごく厳しくなって、一瞬大蔵省は民間企業人間とは「コーヒーも飲めない」といった状況になったじゃないですか。

本多: 今も金融庁はそうなっているんじゃないか?こういう事態になったら、官僚一人一人には「菅正剛に呼ばれたから参加した」という言い訳や事情があるかもしれないが、残念ながら厳しくしていかないと。

大蔵省の件については、接待問題だけでなく贈収賄罪でも何人か挙げられている。三塚博大蔵大臣(当時)まで辞めて。今回もこんな風に甘く終わらせていると結局続くことになってしまうのは残念だ。

今回は、シンプルに接待問題でとりあげればいいわけではなく、「菅正剛」と言う特殊な案件でそこにも焦点を当てざるを得なかった事情もあった。シンプルに官僚の悪さに焦点を当てきれなかったというのはある。

安倍: 官僚と民間との不適切な関係。それによって行政が歪められかねないことを、「想像してませんでした」などという言い訳をした挙句、簡単な処分で終わる。山田さん(真貴子前内閣広報官)含め、現場から去っていって一件落着、といったような。国民としては「おいしい思いをする人はおいしい思いをしたままたいして咎められないんだな」と思ってしまう。それに比べて、一般庶民はコロナの影響で緊急事態宣言も再延長が決まって追い詰められている。首を括る人も増えるというときに、この間の菅さんのぶら下がり会見など、人ごとのような政府の態度だ。心がこもってない。

本多: 先ほどの「長期政権」の問題をもうちょっとわかりやすくいうと、例えば、甘利明さん(前経済再生担当相)も下村博文さん(元文科相)も小渕優子さん(元経済産業相)の件も、ずっと安倍政権下で検察が一時萎縮していた(検察不祥事があったせいもあって)り、安定政権のプレッシャーもあり、検事総長になりかけた黒川弘務さん(前検事長)の話もあり、全部不起訴ですから。安倍さんに及んでも。

ようやく吉川貴盛元農水相事件と秋元司(元衆議院議員)カジノ事件で、検察が目覚め始めた。この10年、政治の側は何をやっても起訴されないというのがあった。これが官僚にも悪影響がなかったとは言えない。連動していると思う。段々みんな「接待くらい(いいじゃないか)」と言う感覚になってくる。起訴もされない、辞職もしない、と言う事例が続きまくっているのだから、長期政権の中での政治の緩みが伝播したと思う。

本多: 今後こう言うことを無くすためにはどうしたらいいのか?

本多: 国家公務員倫理法にも穴があるので、それを埋めていかねばならない。例えば「1万円以下は届け出さえすれば良い」とかいう規定は、「いくらだったのかわからなかった」などという言い訳の原因になっている。「利害関係者」の定義もそうだ。「利害関係者かどうかわかりませんでした」なんて言い訳を言わせてはいけない。元々、私達の当初発案よりも自民党側が緩くして作られた法案でもあるので、法律を見直すのも一つだ。過ぎたことではあるが、処分が甘すぎたのではと言って世論を喚起していくことも必要だ。

安倍: 今の公務員制度を抜本的に変えないといけないのではないか?何10年も官僚の世界にいて、立場が上になればなるほど政権の顔色伺うようになってしまう。そうするとどうしても忖度が生まれるので、もう少しリボルビングドアを回すようにしなければいけないのでは。

本多: 内閣人事局を作った時、我々も政治主導には賛成だったが、それを安倍政権が悪く使いすぎた。かつ、(私たち野党がだらしなかったこともあって)何をやっても選挙で勝つという過程のもとで、菅さんが人事を良いようにした。「菅さんが怖い」という(官僚の)萎縮と忖度が如実に出ている。

安倍: 菅さん自身がかつてはっきりと「自分の意に沿わなければ辞めてもらう」と言っている。そういう人事をやると恨みを買う。どこか綻びが出てきたのかもしれない。恐怖政治では全てをコントロールできない。内閣人事局を使った官邸主導の人事を強い政権の元でやりすぎて弊害が出てきたのか。

本多: あの仕組み自体を全否定するのではなくて、やはりちょっと強い政権というのか、「何があっても選挙で勝たせすぎてしまった」という僕ら野党の反省点がある。国民の皆さんにもそろそろ「選挙で一方を勝たせすぎるとこう言うことが起こるのではないですか?」ということを言いたい。野党が何を言っても平気、と言うのが10年も続くとチェック&バランスが効かないので、政治も官僚もこうなってしまう。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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