[現役女子大生・留学リポート]豊間友佳子の“ありのまま!ドイツ生活”(3)<日本と全く異なるドイツの教育制度>ドイツの子供たちは10歳になる前までに自分の将来を描き始める!
豊間友佳子(慶応義塾大学3年|ドイツ・ケルン大学留学中)
日本では毎年12月になると、様々なメディアで”就職活動”に関する話題が飛び交います。
一般的に、就活がきっかけで将来について考え始める人も少なくないようですが、いずれにしても社会に出てから、自分がこれまで生きてきた時間の何倍もある歳月をどう過ごすかを決めることは、決して容易なことではなく、時間を要するものです。
私はドイツに来てから、将来の自分について他人と話す機会が増えました。”実力主義”であるドイツにおいて、現地の学生は早いうちから将来の自分像を描き、”経験”によって一歩一歩それに自らを近づけていくのです。
どんなに回り道をしていても、夢に対して真っ直ぐであり、常に前向きなドイツ人が私には特別輝いて見えました。 「回り道に費やした時間は、幼い頃から将来についてしっかり考えて夢に向かってきたからこそ、自分にとって成長の糧となり、自分の強みとなる」というドイツ人にとって当たり前の考え方は、日本でも同様であるように見えて実際には実践が難しいからです。
ドイツ人にとって、将来を考え始めるきっかけというのは一体いつなのでしょうか。それには、ドイツの教育及び就職制度と深い関わりがあります。
まずはドイツの教育制度を見てみましょう。
※文部科学省「教育指標の国際比較」平成16年版より
基礎学校に通った後に進む学校こそが、ドイツ人にとって最初の人生の分岐点です。総合大学を目指す“ギムナジウム”、専門職を目指す“実科学校”、職人を目指す“基幹学校”の3種類の選択肢があります。
“基礎学校”の成績の良かった生徒は“ギムナジウム”に進学可能ですが、一方で“実科学校”や“基幹学校”に行くことになった生徒が、後で「やっぱり大学で勉強したい」と思っても、一部の例外を除き、基本的には総合大学に進学できません。つまり、日本のように大検を持っていれば誰でも大学受験できるわけではないのです。ですから、ドイツの子供たちは10歳になる前までに将来の自分像を描き始めねばなりません。
また欧州の多くの国では、勉強した専門領域でしか職を得ることができません。異なる分野で働きたい場合、他の学科に入り、勉強し直す必要があります。“ギムナジウム”には、企業が高学年を対象に業界を理解してもらうための説明会を開催し、2週間ほどインターンの機会を設けるところもあるようです。こうして、大学進学する前に将来就きたい仕事や得意分野について考えながら、自分自身と真剣に向き合います。
職務経験を重要視する就職制度であるからこその、日本と異なる独特な教育制度であり、日本のそれとは大きく異なります。
大学に入っても、「自分のやりたいことがわからない」、「進むべき道が見えない」という学生が多い日本。ドイツ人の就職観を知れば知るほど、幼い頃から自分の将来について考える機会を持つということは、自らの“Quality Of Life”を高めるためにも必要なのではないでしょうか。
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