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.政治  投稿日:2021/6/25

「五輪は延期か中止を」立憲民主党東京都支部連合会長妻昭会長


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(阿部翔太郎)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・今回の都議選は、小池都政をチェックする本来の議会の役割を取り戻すための戦い。

・都議選の結果によっては、オリンピックの延期、中止もありうる。

・なし崩しで進むオリンピック、「無理が通れば道理が引っ込む」という体制からの脱却を。

 

都議会選の告示目前。前回の選挙で第一党に躍進した都民ファーストの会が、今回は大きく議席を減らすという下馬評もあり、再度公明党と選挙協力を組む自民党鴨下都連会長は、過半数獲得に自信を示している。

その中で国政野党第一党として、立憲民主党はどのような姿勢で都議選に臨むのか。立憲民主党東京都支部連合会会長を務める長妻昭衆議院議員に話を聞いた。

■ 立憲の都議選の戦略

安倍: 立憲民主党は今回の都議選をどのように位置付け、どのような戦略で臨むのか。

長妻氏: 確かに今回の都議選は、主導権を自民党が取るのか、それとも都民ファーストの会が取るのかという点が最大のポイントだという声があります。しかし都民の立場から考えれば、自民党も都民ファーストも結局小池さんを支えている勢力であることに変わりありません。小池都政をチェックする勢力ではありません。その中で我々は、都議会の中で相当大きな存在感を示せるような勢力になって、小池知事や都政をチェックするという二元代表制における議会の本来の役割を取り戻さなければならないと考えています。そのための都議選という位置付けです。

例えば今月の17日には、都議会開催の要請を文書で提出しました。昨日解除された緊急事態宣言について、この段階での解除は危ないと思っている都民は多いにも関わらず、議会が開かれないのでこのことについて議論されていません。またオリンピックの観客が1万人ということも決まりましたが、これについても議会で議論されていません。こんなバカなことはないですよ。

こういった状況も見かねて、立憲民主党を含めた野党6会派で議会の開催を求める正式書類を出しました。しかし、これは議員の4分の1が要請しなければ有効にならず、立憲民主党所属の都議が今8人で、他の野党勢力と足し算しても、4分の1である32人には足りない状況です。それだけ議会を開かなくてもいいという勢力が多いので、今回の都議選では、とにかく都議会を開いてしっかりと都政をチェックしようと考える都議会議員を増やさなければならないと考えています。この緊急時に都議会を開かないなんてありえないですから、まず一番にそこは変えなければならないでしょう。これは多くの都民の皆さんに共感していただけると思います。

安倍: 協力金の振り込みが遅いことや、区からワクチン接種券がなかなか若い世代に送られてこないことなど、都のコロナ対策に対して不満を持つ都民は少なくないように思える。そうした不満から自粛要請なども守られづらくなり、また実際に人流が増えている。それでも都民は都政に信頼を置いていると言えるのだろうか。

長妻氏: そうは言えないでしょう。その一つの原因は、小池さんが議会で追及されていないことだと思います。他の県議会では、県知事が議会で相当追求されています。各知事ともこれだけ大規模な感染症の対策に当たるのは初めてですから、多少の失敗はあるでしょう。だからこそ、県議会議員が一問一答の場で追及するわけですが、東京都は知事が追及されていません。多くの皆さんは、菅首相が国会で追及されている姿は見たことがあっても、小池さんが都議会で追及される姿は見たことがないと思います。都議会には本来、一問一答の場として予算委員会や決算委員会があるのですが、そもそも都議会が開かれないので、小池さんが追及されないわけです。小池さんが追及されていないから、都民の皆さんは誰に責任があるのかがよくわからない、判然としない状況になってしまっていると思います。

ですからやはり都議会を開いて、うちの議員を含めて各議員が一問一答で、時短要請やお酒の自粛に際して支払われるべき、何ヶ月も前の協力金が未だに振り込まれていないことについて、しっかりと小池さんを質さなければならないと思います。私も色々な地域でお話を聞きますが、協力金の振り込みがないために、本当に真面目に自粛を守ってきた店主の方が、止むを得ず営業を再開せざるを得なくなっているというお話をたくさん聞きます。『これはやっていられない』『都庁は何を考えているんだ』という声が上がっているのです。

そして結局この背景にあるのは、ヒト・モノ・カネがオリンピックに取られてしまっているということがあるのではないでしょうか。組織委員会に出向している人もいますし、東京都庁職員のかなりの人数がオリパラの準備に持っていかれている。都政の問題がなかなか表立って追及されず、都民の目に見えてこないことも、小池さんの評価が悪くもないし良くもないということにつながっていると思います。

安倍: 自民党も議会を開くことに賛成しないのか。

長妻氏: 結果として議会は開かれていません。今は自民党も小池さんと融和路線なのです。昨年の都知事選でも自民党は対立候補を出しませんでしたから。自民党と都民ファーストの会の戦いだと一部マスコミは言いますが、都民の視点からするとやはりどちらも小池さん側擁護で、ちゃんとチェックできていないというのが実情です。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

■ オリンピックについて

安倍: 今回の都議選では、自民党は流石に前回の23議席からは増やす、また都民ファーストの会は議席を少し減らすことが予想されるが、それを踏まえると両党が選挙後に協力体制を組む可能性もあると見ているのか。

長妻氏: 十分あると思います。過半数が64議席ですから、そこを巡ってそういう体制になりかねない。そのため我々としてはできる限り立憲の勢力を伸ばし、また他の野党とも連携しながら小池都政をしっかりとチェックできる体制を築くことが一つのポイントだと考えています。

おそらく自民党や公明党はオリンピック開催の是非は都議選の争点ではないと言うと思いますが、オリンピックをやるかやらないかが都議選の最大の争点でしょう。なぜかもう決まったからしょうがないという空気になっていますが、人の生き死にかかわる話で決まったからしょうがないという話ではないと思います。都議選の結果いかんによっては、私は中止や延期もありうると考えています。感染者に関しても、昨日もまた前週から増えていますし、緊急事態宣言が解除されて一気に人の流れは増えましたから。

我々が一つ訴えていくのは、ヒト・モノ・カネはコロナに集中せよということです。オリンピックによってで、都庁の本業が疎かになってしまいかねない。そしてオリンピックを開くことによって、感染で亡くなる方が増えるリスクが高まることは誰の目から見ても明らかです。これは誰も否定しないでしょう。それなのに、そのリスクを上回るようなオリンピック開催の大義も語られてないわけです。国際公約だから国家の威信をかけてやるべきだ、多少の犠牲のリスクは厭わない、そういう説明すらはっきりとされていない。

私の尊敬する石橋湛山は、8月15日の終戦の日を「日本が更生する日」と称して、この日を境に非科学的精神から離れなければならないと言いました。科学的発想や思考を取り戻さなければ、日本の未来は暗いという趣旨のことをおっしゃった。でも石橋が否定した非科学的精神は、75年以上たった今でもまさに繰り返されているわけです。そんな風になんとなくオリンピックを開催すると、流れるようになし崩し的に決まっていくのを傍観しているようでは、国としての体裁を成していないのではないかと、都議会としても役割を果たしていないのではないか。そういう中で今回の都議選がちょうど行われますから、この機会に五輪の意思決定について、徹底的に都民の声を聞きたいと思います。

安倍: 今回の都議選では五輪の延期、中止を謳っているという認識でよろしいか。

長妻氏: そうです。尾身先生ですら前回の提言を出したときに、菅首相がG7でオリンピックをやると発言したのだから、オリンピックをやるかどうかの議論にはもはや意味がないとおっしゃいました。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」ここに極まれり、というか、お上がやると言ったら反対してもしょうがないという雰囲気に国全体がなってしまっています。まさに非科学的精神が未だに続いているのです。

しかし実際にオリパラ事務局に聞くと、再延期の可能性すらさぐったことはない、とのことです。ですから本当に再延期を詰めに詰めてできない場合は中止とすべきですが、まずは延期という選択肢も追求するべきなのです。

安倍: やはりオリンピックを開けば人流が増え、感染者も間違いなく増える。また、政府分科会尾身会長が無観客にするべきと言っているにも関わらず、結局無観客にはしなかった。その上さらによくわからないのが、オリンピック最中に緊急事態宣言が発令されるようなことがあれば、躊躇なく無観客にするという発言だ。

長妻氏: 本当は躊躇なく延期か中止するべきではないでしょうか。オリンピックについての判断基準が、うまく無観客か有観客かにすり替えられています。やるかやらないかがそもそもの問題ですから、このようなことはおかしな話です。

安倍: もしオリンピックによって東京で感染が広がれば、GoToトラベルでわかったように、東京から結局、全国に感染が一気に広がっていく恐れもある。

長妻氏: 東京だけでなく、まさに日本全国の問題でもあると思います。だから医療崩壊、生活崩壊、二つの崩壊を防ぐっていうのが今回の都議選の大きなテーマだと考えていて、そのために個別の政策もしっかりと作っています。

オリンピックは観客を入れるということになりました。しかし「五輪チケットを持ってない人は全国に旅行するのは自粛してください」、「サラリーマンは49日間、リモートワークをして家にいてください」、「飲食店はフリーに酒を出さずに、時短営業でやってください」というお願いをするのに、「オリンピックのチケットを持っている人は全国から集まってください。対策をすれば怖くありません」なんて、こんなお願いは素直に受け入れられるでしょうか。いくら多くの日本人が真面目だからって、バカにするなという話です。我々だってオリンピックは別ですからなんて、国民の皆さんに説明できないですよ。

■ 総選挙を見据えた都議選の位置付け

安倍: 各党とも、今回の都議選の先には当然秋の総選挙を見据えているだろう。現在の菅政権には政治とカネなど様々な問題が指摘されているが、総選挙にも繋がる今回の都議選の意味合いとは。

長妻氏: 私はやはり二大政党的政治、つまり今の政権がヘマをしたら次はちゃんと政権が変わっていくという政治が望ましいと思います。そういった緊張関係があると社会の発展にも資することになりますし、政権が必要に応じて交代していくことで社会や政治に淀んだ膿が出されるわけですから、我々は政権交代可能な二大政党的政治を目指していきます。

特にうちの党は、そういう考え方のもとでこの世界に入ってきた人が多いと思います。しかしそれがまだ実現できてない。前回民主党政権で政権党が分裂してしまったこともあり、なかなか国民の皆様の信頼が戻ってこないという反省もありますが、やはり日本の国のためには政権交代可能な党がしっかりとありながら、必要に応じてスイッチしていくという体制が必要です。その中で、当然野党の時には研鑽を積んで、長期的な視野に立って色々な政策をまとめるという役割を果たさなければなりません。

実際に今回のコロナの危機の中で、我々も色々な議員立法を出したり、提言を出したりということをしてきました。秋の総選挙は非常に大きなポイントだと思いますので、なんとか議席を伸ばして、国民の期待があれば政権を取りたい。野党で政権を経験しているのはもう我々くらいしかいませんし、さらに時間が経過し今回の総選挙はラストチャンスに近いと思っています。その前哨戦として、この都議選も非常に重要になってきます。

今回は推薦を合わせて33人の候補者を立てていますが、全員相当厳選された候補者にしています。力のある候補者ばかりですので、全員の当選を本気で目指していきたいと思います。

(了)

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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