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.政治  投稿日:2021/6/25

「知事との信頼関係の下で都政を正しい方向へ」都民ファーストの会荒木ちはる代表


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(坪井恵莉)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・議員提案で条例を制定した実績を選挙戦でもアピール。

・都知事と適度な信頼関係と緊張関係を維持し、議会変革に取り組む。

・長引く自粛要請は水際対策とワクチン確保の失敗が原因。

 

安倍: 都民ファーストの会としての戦略は?

荒木氏: コロナ禍でデジタル化も含めて社会の構造が大きく変化しています。東京は首都ですから、コロナ対策も含め世界から遅れをとってははいけません。東京都議会は古くて遅い。国も古くて遅い。今回公約で「ふるくておそい頼れない国をはやくてあたらしい頼れる東京都が動かしていく」ことを1番のスローガンにしています。

今回も東京都は間をおかず感染拡大防止協力金の制度を作りました。一方、国は自粛と補償の話を延々とやり続けて、結局何も決まりませんでした。野党がいろいろ言っても実現せず、野党も責任を果たすことができなかった。そうした中で我々は、東京都独自の協力金制度を都知事に要望して作り上げました。また、(新型インフルエンザ等対策)特別措置法の改正にも時間がかかりました。そうした中で、東京都独自の対策を取らせていただきました。

実はコロナ対策だけでなく、受動喫煙などを規制する健康増進法の改正も国はなかなかできなかった。東京都は子供を受動喫煙から守る条例を作り、その後、ようやく健康増進法が改正されました。体罰の禁止についても、我々は、子供への虐待の防止等に関する都条例を知事に議員提案をして作りましたが、その時も国は児童虐待防止法を改正できなかった。

今、世の中がスピーディーに動いています。国では遅々として進まないことを我々は東京都の地域政党だからこそ国よりも先にできます。東京都が先にやることによって国を動かす。そして国を動かすことにより、全国にも良い影響をおよぼすことができる。スピード感のない国の政治や、25年でたった1本しか議員提案条例が成立しなかった古い議会がずっとはびこっていた東京都議会を変えていく。

議員提案で作らなければならない条例はたくさんある。例えば今回我々が議員提案で作った「五輪経費透明化条例」も都知事(理事者提案)としては作りにくかったり、作る性質にないものを、議員側から尖った条例を作っていくことが重要です。東京都を縛ったり、東京都と序列で一緒にある組織委員会や国がきちんと文書を残すことを担保する条例を作りました。

4年間で今まで議会活力度ランキングがワースト3だったところを第8位に上げた。そして国の政策も牽引してきた、という実績をアピールしていきたい。コロナ禍に対して、都民の命や健康、暮らしを守れることができるのははやはり都民ファーストです。私も39歳ですが、党首が30代で女性であることからも、新しい感覚でスピード感を持って取り組めるのは都民ファーストです。我々は時代の変革についていける政党だということを訴えていきます。

安倍: 都民ファーストの実績は都民に浸透していると考えているか。

荒木氏: 都政については「都議会が古い議会だったったことを知らなかった」、「ドンがはびこっていることを知らなかった」ということを5年前たくさん聞きました。区議会、区政は身近な存在であり、逆に国政は毎日のように報じられる存在です。そうした中で都政は地味な印象があり、結局暗い政治や「ドン政治」がはびこっていたわけです。一方でそうした事実が報じられないところがあって、注目をされる時は一気に注目されるが、普段はあまり目立たない、そのためなかなか十分なPRにつながっていないと思っています

安倍: 前回の選挙で協力体制にあった公明党が、今回は自民党と選挙協力を行うことになったが、その理由をどのように分析しているか。

荒木氏: 前回は公明党公認、都民ファースト推薦で戦ってますよね。「都民ファーストの方に推薦を」と依頼があって、推薦を出した経緯がある。公明党が小選挙区から立候補する東京12区など、衆議院選挙の影響が大きいかと思います。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

これまでも協力できるところは協力してきました。それが全部水の泡になるわけでは無いとは思っています。色々な助成金の勉強会、政策勉強会も一緒に取り組んできました。そうした信頼関係が全てなくなったとは考えていません。私の中野選挙区など、3人区ではお互い戦っていますが、そうではない選挙区は、良好な信頼関係をしっかり築いてきた議員もたくさんいますから、そうしたことはしっかりと説明をさせていただきたいと思っています。

安倍: ライバルとなる自民党は過半数獲得を目指しているが、現状どのように分析しているか。

荒木氏: 各社の調査結果報道は承知しています。選挙結果は最後まで分からない。全力で戦い抜きます。

安倍: 選挙後、自公との関係はどうするか?

荒木氏: 選挙結果次第ですね。

はっきりと言えることは、自公が過半数を獲得すれば古い議会に絶対戻ります。せっかく新しくなった議会を古い議会に戻すということが信任されるという結果になるわけです。都民の皆さんがそのような選択はなさらないものと確信しています。

安倍: 東京五輪の観客上限は1万人に決定したが、都民からは不安の声も上がってる。

荒木氏: オリンピックは東京都で開かれるわけですから、都民の命と健康、暮らしを直撃することです。ところが、他の政党の公約を見ると、オリンピック・パラリンピックについて何も書いていない。実に無責任だと思います。国政政党はいろいろ忖度しているのでしょうが、都議会選挙ですから、我々は都民の皆様の声をしっかり受け止め、「無観客」と明言しています。

今日も知事が五者協議で、「感染状況や医療状況に応じては無観客も検討するべきだ」と言って、きちんと議事録にも載りました。都知事に対してはっきりとものを申せる与党の存在こそ、東京都を良くしていくためには不可欠ではないですか。

最初は意見が違っていても良い。私たちが10万円の出産一時金の支給を提案したときも、大金が必要なことですから、最初は知事も「えっ」となりました。けれども我々の提案を都民の声にいちばん近いものと受け止めてもらうことが出来ました。

こうした形で都政を動かしてきました。小池知事への59回にわたる要望は、与党としてより良くするために切磋琢磨して、良い結果を生んできた何よりの証拠です。今回も「無観客は知事と意見が違うのではないか」とマスコミは書いてますが、我々は都民の代表として、きちんと代弁する役割を果たしているだけです。

都議会で東京大改革2.0について代表質問した際に知事は、「受動喫煙条例など都政への成果を挙げられたのは御会派(都民ファーストの会)と手を携えてやってきた成果だと思っている」と答弁されました。知事がやることに全部「良いですね」と言うことではなく、真の与党として、信頼関係のもとでどのような都政を実現したいのか、どのような東京都にしたいのか、お互いに率直な意見をぶつけ合うことも大切だと思います。

今回の無観客開催についての発言はその証左だと思います。(メディアは)一緒の意見だと「馴れ合い」と言う、違う意見だと「齟齬がある」と言います。でも、齟齬があっても一緒の時があってもいいわけです。それがあるのが正しい健全な関係だと思います。私は(知事と)7年一緒していましたが、知事に物申すことが出来るのは信頼があるからこそです。

東京都で地域政党が新しく立ち上がって、国と切磋琢磨できる新しい首都東京を作っていくことが、ようやく始まっています。都民の皆様からもここで信託をいただかないと、良くする政党が2度と誕生しないと思います。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 緊急事態宣言や休業要請が長引けば、飲食業界を中心に生活への打撃が大きくなる。

荒木氏: 緊急事態宣言が続いているのは、国の水際対策の大失敗とワクチン確保の世界競争への敗北によるものです。菅さんがアメリカに行ったのは4月、行くのも遅い。イギリスは投資家の女性を大臣にして、投資的な視点でワクチンを買い付けていますね。国際競争に負けたということです。

そのツケが飲食業の皆さんに回されたと言っても過言ではありません。まともな、国際的視野に立った対応をしていれば、2回のワクチンは2、3ヶ月前に打ち終わっていたのではないでしょうか。

今回の緊急事態宣言の要因には感染力の高いインドからの変異ウィルスの流行があると思います。インド株の感染者は既に3月の時点で我が国に1万2000人もいた。感染者は羽田空港、成田空港を経て東京にやってくるので、水際対策の失敗のあおりは都民と都内の事業者を直撃しました。海外に行った時は徹底的に隔離されるのに、日本に来た人々には、徹底隔離などをせず、飲食店、スーパーやコンビニにも自由に行ける。後手後手の水際対策という大失敗、そして国産ワクチンの開発の遅れとワクチン確保の遅れが緊急事態宣言を長引かせていることを指摘します

安倍: 都独自のワクチン接種会場も増えつつあるが、区の対応の遅れが目立っている。

荒木氏: もともとワクチンの確保が遅く、最初はワクチンがないないと言っていたのに、1ヶ月経ったらドンと来た。最初から全国に広く薄く供給するやり方でした。私が菅さんの立場だったら、東京や大阪などの大都市にワクチンを集中させて供給していました。悪平等だったと思います。予防活動を最初にやるのではなく、火が出ている所に集中して消化活動をやらなければならないのに、そのような国家戦略が全くない。

今は東京都でもワクチンが溜まってきています。これがもう少し早かったら蔓延防止措置が前倒しされ、飲食店の再開も早まっていたかもしれませんよ。

今は65歳以上の2回目接種が進んでいるので、割とみんな出かけるようになっています。東京都としても2回の接種が終わった方への徹底した外出自粛要請は行いません。本来はこのようにしていれば、経済活動も徐々に再開して、飲食店も少しずつでも潤っていくということができたはずです。それを遅らせてきた国には大きな責任があると思います。ただ、おかげさまで、中野区の接種率は23区の中でもトップクラスです。私も力の限り、酒井直人区長とコンビを組んで、コロナ対策に当たっています。

(インタビューは2021年6月21日実施)

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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