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.政治  投稿日:2021/6/28

「組織力生かし、改革中道路線を訴えていく」国民民主党東京都連会長川合孝典参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・東京五輪は「再延期」主張、開催の是非を政争の具とすべきではない。

・現在都議会には国民民主党所属議員はおらず、ゼロからのリスタート。

・連合東京の推薦と支援を受け、組織の集票力を最大限に活かしつつ、有権者に対して改革中道路線を訴えていく。

 

安倍: 今回の都議選、どこにも風が吹いていないという状況にみえる。

川合氏: 実際に選挙区の事務所を既に何回か回っているが、候補予定者が駅頭やる時、良きにつけ悪しきにつけこれまでの選挙では何らかのリアクションや風を感じるのですが、(今回は)ほとんど風を感じません。ただありがたいことに、野党の再編がここ数年繰り返されている状況の中で、ようやく何故、国民民主党という政党が存在しているかということについて、国会での採決の態度などをご覧いただいて、みなさん少しずつご理解いただいてきています。

政治に関心の高い層の方々では「頑張れよ」とか、「小選挙区制が導入される前の政党の主張みたいなものを彷彿とさせて期待感持ってるからお前ら頑張れよ」みたいな、与党系と思われる方からそういうお声かけを頂けたりするので。駅頭をやっている候補からは、やっただけ反応が少しずつ増えてくるということを言ってます。日々表情明るく活動してくれています。

安倍: コロナ禍とオリンピックは密接に結びついている。釈然としないのは、東京とはIOCと契約して主催側ということはありますが、都民の気持ちは置き去りにされてしまっている。その辺りのスタンスは国民民主党はどうなのか?

川合氏: 政府・与党としては、1年延期を決めたこともあり、開催ありきの思いが強いのだろうと思います。一方で政府・都など開催を決定に関わる人達は、責任は負いたくないので、責任の押し付け合いをしているように傍から見ていて感じます。

オリ・パラ開催がなし崩し的に決まる懸念を感じていたことから、GW後すぐに「再延期」という提起を国民民主党として正式に出させていただいた。

また、仮にオリンピック・パラリンピックを予定通りのスケジュールで開催するという事になった時に、政府が行おうとしているコロナ禍でのオリンピック開催に向けた感染症予防対策だとか、水際対策だとか、政府が考えている政策の実効性についてきちんと検証し、問題提起しています。

なおオリンピック開催の是非について、東京都議会議員選挙が近づいているタイミングでもあり、GW前後頃から各政党が自己アピールの手段として開催の是非に言及するようになりましたが、正直申して私共としてはオリンピック開催の是非を政争の具とすべきではないと当初から申し上げています。

オリンピック開催を国を挙げて誘致したのは日本です。おもてなしをするから日本で開催させて下さいと言って誘致したオリンピックであることを忘れてはなりません。同時にこのコロナ禍の中で不安を抱えながらも開催準備をしている大勢の関係者の方々もいらっしゃいます。こうした状況を総合的に勘案すると、政党が選挙戦を有利に戦うという目的で「やるべき、やらないべき」と声高に叫ぶこと自体が、それぞれの立場の方々の思いに寄り添っていないと考えます。従って国民民主党は、オリンピックを政争の具としないとの立場を明確にしています

安倍: するとスタンスとしては「再延期」と言っているが、感染症対策・水際対策含めて穴があれば物を申していくというスタンスか。

川合氏: 日々政府・都に対し、あらゆるチャネルを通じて提案させていただいています。

安倍: この都議選で議席獲得目標は?

川合氏: 現在都議会には国民民主党所属議員はおりません。前回の都議会議員選挙の時に旧民進党で戦った議員が5人当選しましたが、この方々は立憲民主党に移っています。従って失うもののないゼロの状態からのリスタートです。前回の都議選では当時の民進党執行部が舵取りを誤って大惨敗し、志ある有能な議員が大勢、議席を失いました。そういった経験と志のある人材を都議会に送り出すのが今回の目的です。

現在、立憲民主党、都民ファーストの会等に所属する議員の多くがかつての仲間でした。残念ながら国政政党(民主党・民進党)の混乱の煽りを受けて違う立場で活動することを強いられた結果、現在に至っています。言うまでもなく国政政党の混乱は、何よりも国民の皆さんにご迷惑をおかけすることになりますので政策に一貫性のある安定した政党の存在は不可欠です。そのような政党を育てる上で一番大切なのが人材だと考えていますので、そのためにも元職議員に捲土重来する機会をきちんと作って、将来に繋げていきたいという思いがあります。

安倍: ずっと繋がっているということか。

川合氏: 東京の選挙事情は地方のそれと全く違います。特に野党では、選挙毎にその地域に縁もゆかりもない落下傘候補が大勢擁立されますが、これでは地域に寄り添った都政など出来るわけがありません。政策・人材を繋げるための努力は必要です。

安倍: 現在の情勢分析は?

川合氏: 国民民主党という政党の知名度がありません。新・国民民主党を結党して初めての本格的な選挙となります。そういう意味ではお披露目ということになるので、どういう政策や主張を行っている政党なのかということを、まずは都民の皆さんにしっかりとお伝えする。その上で都民の皆さんの反応を見極めることが必要だと考えています。

また、必ず年内に解散総選挙がありますので、国民民主党の組織強化・活性化、党関係者の心合わせができればと考えています。一戦一戦が党の存続にも関わってくる重要な戦いです。そういう危機意識をもって、衆参国会議員・自治体議員が総がかりでこの都議選に取り組んでいます。毎日代表・幹事長にも入っていただく予定で作戦を組んでおります。

安倍: その中で山尾志桜里衆議院議員の議員引退というニュースが。これは国民民主にとっては打撃ですか?

川合氏: 色々な受け止めがあることは承知しています。愛知から東京に選挙区替えした時、私自身が都連会長として対応してきた経緯もありますから、彼女とは丁寧に意見交換を行い、彼女の思いも聞かせて頂きました。最終的には本人が発信した内容がすべてです。ご本人なりのけじめの付け方ということであり、我々としてはそのことを尊重するしかないと考えました。

彼女とよく話していたのは、生き残るため・当選するためにどうするのかと同時に、自分自身のモチベーションが入らないと、言葉に・演説に力がこもらない。納得して気持ちよく戦うためにどういう形がいいのか、ということはずっと彼女と話し合ってきました。

今回の週刊誌報道などが、きっかけになったのは否定できない事実です。法曹としての論理的思考が彼女の持ち味ですが、彼女自身の想いとは別に政治の世界では道義的な説明責任も求められます。興味本位を含めた報道が加熱する中、政界で満足できる活動をする事は難しい、とお考えになったのだと思います。

いったん議員記章を外し、政治の外に身を置いて、白紙の状態で冷静に政治と向き合いたいとのことです。なお政策立案や立法活動については法曹としてこれからも続けていくとのことです。なお今回、一回選挙を見送るだけでは、との憶測報道も出ていますが、私はそのような話は聞いていません。私自身は、彼女のスキル・造詣の深さを知る者として、率直に惜しい人材を失ったと思っています。

安倍: 本人も党に迷惑をかけたくないという気持ちもあっただろう。

川合氏: 私自身が彼女にお伝えしていたのは、東京ブロック単独比例一位という東京選挙区の党の顔として、都連関係者の合意形成が図れるか否かで判断する、という一点です。

安倍: 会長が説得したのか?

川合氏: 出馬の是非については何も言っていません。都連メンバーの総意を尊重する、ということだけを事前にお伝えしていました。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 都議選候補者当選の可能性はどうか?

川合氏: ゼロの状態からスタートさせましたが、各候補者とも善戦しています。本番期間に入り、玉木代表をはじめ党幹部が連日応援に入っています。今は私たちにできることをやるだけです。

また彼らは連合東京の推薦と支援をいただいています。組織の集票力を最大限に活かしつつ、有権者の方々に対して我々の政治に対する考え方と政治への向き合い方を訴えるのか、やれるだけのことをどんどんやって、「面白い。一度やらせてみようじゃないか」と思っていただける状況を作れるかどうかで結果は変わってくると思います。

安倍: 立憲はたしかに大きな野党ではあるが、共産党と選挙協力をやっていることを知っている人は知っている。

川合氏: 他党の動きに興味はありませんが、昨年秋の政党合流協議の折、なぜ我々が新・立憲民主党に合流せず、新・国民民主党を結党したのかということが、今回の都議会選挙での立憲・共産の共闘で都民の皆様にご理解いただけたかと思います。実際「川合さんは、なんでそんなに立憲民主党を拒むのか」との周囲の方に言われてきましたが、最近は「なるほど、共産党とは一緒にできませんよね」とよく言われるようになりました。

安倍: 国民が何人か通ればキャスティングボートを握れるかもしれない。

川合氏: そこまでは考えが至っていませんが、今回の都議選では積極的支持ではなく消去法で投票する有権者が多くなると考えています。投票日前後のコロナ禍の状況、オリ・パラの状況等に相当影響させるのではないかと考えています。

前回は都民ファーストと名乗っただけで当選できました。告示日直前に立候補を表明し、ポスターを貼っただけでトップ当選した方もおられます。あの猛烈な小池旋風の中、都民ファーストさんへの期待感が大きかっただけに、普通に都政運営しただけでは都民ファーストに都民は満足出来ないのでしょう。

また小池知事と自民党・与党との関係が円滑な都政運営を行う上での障害になっているのではないでしょうか。政府与党との関係が脆弱であるということがここに来て、都政運営・オリンピック開催など意思決定を行う上で悪影響を及ぼしているのではないかと感じています。

安倍: 選挙が終わってもし自公マジョリティを取った時には国民民主の立ち位置は難しい。

川合氏: 難しい立ち位置ですね。ただ国民民主党が国会で行っている色々な政策・提案に対しては、政府与党も真摯に耳を傾けて頂いています。政策実現力いう意味ではすごくいい立ち位置だと思います。ただ選挙を戦う上では、改革中道路線というのは、まとも過ぎてエッジが効いていません。有権者への訴求力という意味で非常に難しい。本当の政治は対立する意見を受け止めて現時点での最適解を導き出すものなのですがね。

安倍: 立憲みたいにオリンピック中止って言った方が訴求力はある。

川合氏: 既に世界中がオリ・パラ開催に向けて動き出している中、無責任だと思います。元々、オリンピック誘致に反対であったのなら話は違いますが。

安倍: どういう風が吹くかは全く分からない無風状態の選挙だ。投票率も下がると思うが。

川合氏: 投票率が下がると組織型選挙をやっているところに有利に働く可能性はありますね。

安倍: 小池さんが雲隠れしてしまった影響は?

川合氏: 雲隠れだと思われますか?この時期だから憶測を呼ぶんですよね。その質問で今日だけで「どう思います?」と3社記者が来ました(笑)。選挙期間が始まってから戻ってきて動くのか。回復せずに休養が長引くのか。その動きからこれからも憶測情報が流れるのでしょうね。

(インタビューは2021年6月23日に実施)

トップ写真: Ⓒ川合孝典事務所
 




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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