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.政治  投稿日:2021/7/3

都議選公約分析「立憲民主党」まっとうな都政のためにゼロコロナ政策で大丈夫?


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・立憲民主党の政策提案は評価出来る。

・行政の役割が拡大する内容になっている。

・「東京と地方の共存共栄」モデルが出せるのではないか。

 

都議選恒例「都民ファーストの会公約分析」今回は、立憲民主党

「あなたのための政治。」というキャッチフレーズで、今回の都議選に臨んでいる。

■貧困格差の解消

かなり丁寧に、各政策を網羅していて、さらに、問題意識を感じられる、素晴らしい内容である。提示するにあたっても、完全版、パンフレット版など様々なレベルで作成している。

▲画像 【出典】「都議選政策2021」完全版より

問題を明確に提示し、それに対しての政策を提言している。

ひきこもりの状態にある人やその家族への支援として、年齢にかかわらず受け付ける相談支援 窓口を設置します。アウトリーチ活動、居場所支援のほか、地域包括支援センターなど関係 機関と連携した切れ目ない支援を推進し、8050問題への対応を進めます。

体罰が学校教育法で禁止されていることの徹底はもちろん、学校において、子どもの人格を傷つけ、人権を侵害する行為、さらにはわいせつ行為など、断じてあってはなりません。厳しく指導・対応を行います。

8020運動、在宅歯科診療推進事業など、歯科保健対策、心身障がい者口腔保健センターなど、障がい者歯科診療体制の確保に必要な事業を着実に実施します。とりわけ8020運動については、予防推進に向けた国の支援拡充を求めるとともに、都として独自に支援していきます。

メリットオーダーの考え方にもとづき、企業が水力・風力・太陽光・地熱電力を優先して調達するよう促すための仕組みづくりを進めるとともに、国に対して必要な規制改革を求めていきます。

【出典】「都議選政策2021」完全版より

8050問題(80代の親が50代のひきこもりの子を抱えている家庭、そしてそこから派生する問題)、メリットオーダー(様々な種類の発電所を発電コストの安い順に並べる)などといった専門用語が並ぶものの、明確な問題を具体的な対応策でつなげており、まっとうな内容になっている。

さらに、日本の民主主義に対する明らかに既存の政党の中では異色の提案もしている。

日本が民主主義国として歩みを進める中で、多様な意見を政治に反映させることの重要性、さらには税や社会保険、働く意義、財政問題、社会保障なども含めた幅広い知識をもって政治参画が自分の人生や生活に大きく関わることなど、主権者教育をしっかりと行います。

【出典】「都議選政策2021」完全版より

閉塞した社会、権威主義にまみれる日本社会を踏まえた、民主主義とは何か、日本の現状への問いはとても鋭い。

■3つの特徴

これらをまとめると、3つの特徴にまとめられる。

 ①分厚い政策提案

 ②行政の役割拡大

 ③既存の前提は疑わない

という特徴、なかでも①分厚い政策提案はさすがである。

オンラインゲームなどの長時間化防止については、一律的に規制を行うのではなく、児童・生徒 自身が主体的に考え、行動できるようにします。

都立病院は、公社病院も含めて「都立病院」として一体的に運営するとともに、感染症対策など 行政的医療の強化に向け、その役割を明確に位置づけていきます。

都立オンライン高校の開設など、多様な教育機会を確保します。

【出典】「都議選政策2021」完全版より

そこに考え方がにじみ出る。個々人の尊重、包摂性、こういったものが体現されていて素晴らしい。

しかし、問題を列挙しすぎて、行政が全て担わないといけない、行政の役割がどうしても拡大してしまう内容になってしまっている。コスト(予算)の裏付け、最適なマネジメントや運用方法などの面で疑問が残る。

コロナ対策、東京五輪など、既存の前提を疑う視点すら見られない。コロナ対策については「ゼロコロナ」ということらしい。

▲画像 【出典】「都議選政策2021」完全版より

新型コロナは感染者数よりも医療病床の問題であるのにもかかわらず、枝野党首が内閣不信任案の趣旨説明で最初に強調していた「戦後最大の危機」「感染症における歴史的危機」「国家的危機」という認識を疑えていない。

課題は第一に、対策を強化するにしても「どのように」という点が欠けている。つまり、実行可能性という点である。具体的にどのように行っていくのか、が見えない。

・2万人超の雇用を創出、状況に応じてさらに拡充します。

・今後、未知の感染症が発生したら直ちに即応体制として発動できるよう、「新型感染症に際しての人員計画(仮称)」を作ります。

【出典】「都議選政策2021」完全版より

第二に、東京一極集中問題への言及である。コロナ禍が多くの国民も東京一極集中への問題意識を深めるようになった。東京の存在意義が問われているのにもかかわらず、それに対して出てこない点が問題であろう。与党ではない新たなモデルを提示できるのは立憲だからこそだとは思うが・・・。東京だけが栄えるのではない「東京と地方の共存共栄」についてのモデルが出せるのではないかと思う。

■政策評価の専門家としては

さて、政策評価の専門家として5つの視点から評価を下そう。

 ①コンセプト:〇 ⇒【理由】まっとうな政治の理念

 ②都民視点:〇 ⇒【理由】様々なレベルに対応

 ③問題解決:△ ⇒【理由】顕在する問題には対処はできているが・・・

 ④未来志向:△ ⇒【理由】社会の変化を見据えているが、経済面が弱い

 ⑤政策としての基本要件:△ ⇒【理由】それなりにそろっている

かなり分厚い内容の政策集であり、凄い内容になっていることも確かである。まだまだ、法律を作る、組織を設置するなどの旧来型の文章も並ぶが、他方、「運用の実効性」という言葉がでてくるなど、脱皮しようとしている。立憲民主党の政策提案に期待したい。

トップ画像:【出典】都議選政策2021




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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