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.社会  投稿日:2021/9/11

【眞子さまから学ぶ】金銭トラブルを抱えた夫との結婚生活


田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】

・自己肯定感が低いと、必要とされる喜びを求めてしまいがちである。

・共依存関係になると、周囲の声は耳に入らず、自分を責めはじめる。

・あきらめる、手放すという道もある。また、周囲は寄り添うべき。

 

 秋篠宮家の長女 眞子様が、駆け落ち婚をするのではないかと話題になっているが、皇室ファンの一人として、好きな人と結婚して欲しいという気持ちがある一方で、結婚前から金銭トラブルを抱えた男性と結婚することには危惧している。

 というのも私たちギャンブラーの妻(通称:ギャン妻も、かなりの確率で夫の借金について分かっていたのに結婚してしまったというパターンが多い。そして「結婚すれば変わるだろう」という大方の予想は裏切られ、借金を抱えた夫は、結婚しても借金トラブルを起こす。子供が産まれてもそれは変わらない。

 ではなぜ周囲の人が「やめておいた方が良い」と言う男性と結婚してしまうのか。そしてそのような金銭トラブルを抱えた夫を持った場合の妻の自衛手段についてお伝えしたい。

 

◆必要とされる喜び

 一般庶民である私には、メディアを通じて知る皇室の様子から推測するに過ぎないが、眞子様をはじめとする皇室の若い親王、内親王様は大変なご苦労を強いられていると思う。日本で一番世間体を重視されるご家族、それが皇族ではないだろうか。

 ご自身の希望や自由よりも、皇族としての品位が優先される。事実、天皇陛下や秋篠宮様からも、かつてそういった不自由な生活にご不満を漏されることがあった。失礼を顧みずに言えば、今の眞子様は、皇族としてのあるべき姿を優先されるあまり、ありのままの自分を否定されているようなお気持ちになり「自分を大事にする」という自己肯定感が低下しておられるのではないだろうか。そう考えると、これほどまでトラブルが報じられている小室さんとの結婚に固執されておられることにも説明がつく気がしている。

こんな勝手な推測を前提に、金銭トラブルを抱えた男性と結婚してしまう女性の心理について触れたいと思う。

 私がよく相談を受けるギャン妻達も「一体なぜ?」と思うほど、自己肯定感が低い人達が多い。例えば、Aさんは美人で英語も流暢に話し、外資系企業に勤め、給料は女性会社員平均の二倍は稼ぐ、端から見たらうらやましい限りというような人だが、彼女も「自信がない」「自己肯定感が低い」と語る。こういった女性達に体験談を聞くと「夫の借金については知っていた」もしくは「結婚して夫の借金を知り肩代わりをした」と言う。

かくいう私自身も、特別な才能もルックスも持っていないが、夫には恋人時代から貢ぎ、借金の肩代わりを何度もしてしまった。何がそうさせたのか?ギャン妻達と話しをすると「私がなんとかしてあげなくちゃ」という強い想い、必要とされる喜びに共通点を見いだす。

 自己肯定感が低いと、自分の存在意義が見いだせない。「こんな自分で良いのだろうか?」「どこにも自分の安心できる居場所がない」「ありのままの自分では愛されない」と常に不安を抱え、心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚を持っている。そこに問題を抱えた男性が現れると「この人をなんとかしてあげたい」という自分の存在意義が生まれ、自分に軸ができたような錯覚を起こしてしまう。心の空白が初めて埋まったような気がするのだ。

 これは何も男性側から「助けてくれ」と言われる場合だけではない。夫や恋人は何も求めていないのに、問題を知った途端、俄然張り切って相手の問題を処理してしまうことがある。すると自分が「役にたった」という喜びに満たされ、自分の居場所を見つけたような感覚に陥る。借金を繰り返す男性も、最初のうちは後悔や罪悪感を抱え、肩代わりをしてくれた妻や恋人にとても優しくなったり、殊勝な姿をみせる。すると妻や恋人はこの優しさを強く記憶し「これが彼の本当の姿」などと思ってしまう。よくギャンブル依存症者が「ビギナーズラックが忘れられなくてはまっていった」と言うが、妻や恋人も同じでこの「借金返済をしてあげると優しくなる」というビギナーズラックを求めてしまう。

 そして何度も何度も裏切られ、借金を繰り返しているのに「本当の彼は違う」と思い込んでいく。借金を繰り返しているのが本当の彼なのだが、現実が受け入れられず、白馬の王子様を待ち焦がれるかのように「いつかあの優しい彼が戻ってきてくれるはず」などと妄想してしまう。そして「あの人の良さを分かっているのは私だけ」という自分のポジションに陶酔していく。

 こうして夫婦関係は悪化の一途をたどっていながらも、何年も悪循環を繰り返してしまうことになる。これが俗に言う共依存関係である。

 

◆周囲の声が耳に入らない共依存

 恋愛はタダでさえ脳内麻薬が大量にでている状態だが、その上周囲の人に理解されないとなれば、二人だけの世界の結びつきはますます強くなる。

 自分たちだけがお互いの良さを分かっている、自分たちはどんな困難にも負けない愛がある。この蜜月期には周囲がどんなアドバイスをしようが耳には入らない。彼によって始めて与えられた居場所感は、それほど強固な作用をもたらす。

時々、相談会などに来られるギャン妻の中にも、生活費は入れない、子供の面倒は見ない、借金だけは作ってくるといった悲惨な状況になっていても「別れた方がいいんじゃないですか?」などと言おうものなら、サッと心を閉ざしてしまう。「本当は優しい人なんです」と言って、私たちの元から去ってしまう。

端から見れば、自分と子供の分の生活費を稼ぎ、ワンオペ育児でやり繰りし、その上夫の借金までなんとかしてしまうのだから、スーパーウーマンじゃないか、なぜそんな頼りにもならない男にすがりついているのだ?と理解ができない。しかしよく言われることだが共依存状態に陥ると、不思議なことに長い間困難が襲ってきても、時々みせる彼の優しさという報酬からは逃れられなくなってしまうのだ。

 では、ここで小室圭さんについて触れたいと思う。

ご存知の通り、小室さんと眞子様のご結婚を阻んだ最大の原因は、小室さんの母親に元婚約者が学費として貸し付けた400万円を返して貰っていないと証言したためだ。

 これに対して、小室さんが「贈与だと思っていましたが、元婚約者の方が返済を求めているのならお返しします」と言えば、これほどまでバッシングも起らなかったはずだ。

例え感情的なこじれがあったとしても、仮にも日本の皇室の内親王と結婚したいというのなら、騒ぎを大きくせず、金銭的なけじめをつけるべきだったのではないだろうか。そうできる機会は、この3年半の間に何度もあったはずだ。 

 恐らく400万円というお金が手元になかったのだろうが(がっちり貯金があってこの行動ならますます理解不能だが)、だとしたらアメリカに留学などせずにきちんと就職してお金を稼げば良いのではないか?400万円は大金だが、若い健康な男性が働けば返せない金額ではない。実際、現代日本では多くの学生が奨学金を返済をしている。眞子様を本気で守るつもりがあるなら、潔く借金問題に正面から取り組むべきだと思う。

 ところが周囲の予想を裏切り、借金問題はあやふやなまま今度は学費のバカ高い米国のロースクールに留学してしまった。しかもそれが2年間の学費免除という特別待遇だったため、これが皇室利用と批判された。さらに留学中に小室さんからは、金銭問題の解決をみたとして、「元婚約者からの学費援助は贈与であって、報道後贈与税を支払った」とのコメントが出された。この言い分に私は正直あきれかえってしまった。

 もし小室さんが金銭問題にスパッとケリをつけていたのなら、これまでの内親王のご成婚からは信じられないくらい庶民的なお相手だが、その努力は好意的に受け止められ、庶民感覚を持つ眞子様はますます人気者となられたことであろう。

 この小室さんの一連の行動は、自分の利益しか考えていない。眞子様とのご結婚がどうなろうとも、留学の実績だけは自分のものにできる。その上、400万円の借金すら払わない男と、皇室が親類関係となるのかと国民の不信感をあおり、これまで皇族方が必死に耐え忍んで守られてきた皇室の体面をないがしろにしている。

 小室さんは自分の利益を守るためには大胆な行動をし、都合の良い理屈を述べるには口達者だが、大切な人を大切にする誠実さが感じられない。これは私だけでなく多くの国民が感じたからこそ、これだけのバッシングに繋がっているのだと思う。

そして、あくまでも推測にすぎないが、眞子様はこの状況に対し「自分が皇族でなければ、これほど騒がれなかった」「自分のせいで彼を苦しめてしまっている」と思っておられるのかもしれない。自己肯定感が低下していると、得てして理解できない状況に陥った時に、「自分のせいだ」と思うことで落としどころをつけようとしてしまう。だからこそ小室さんと別れるという選択肢が見えなくなっておられるのかもしれない。

 

◆妻達へのエール

 報道によれば眞子様は「納采の儀」を行わず、一時金も辞退されてNYに行かれるのではと予想されている。確かに膠着状態の現状を鑑みれば、この方法しかないように思われる。資産もなく最初から金銭トラブルを抱えた男性と日本のプリンセスが海外で新生活を送るという事態は、長年皇室に慣れ親しんだ我々世代には信じられないようなことだが、恐らく眞子様のご決意はそれだけ固いのであろう。

 そこで私たちのような一般人のアドバイスは、眞子様には役に立たないかもしれないが、借金トラブルを抱えた夫と夫婦生活を送ると決意した人には是非知っておいて頂きたいことがあるのでここに書かせていただく。

①結婚前の自分の財産は明確にしておく。

 旧姓の通帳など疎明資料を捨ててしまってはいけない。必ず結婚前の持参金は第三者がみても明確なものにしておく。

②自分も仕事を持つ

 借金に対してハードルが低い人間は感覚がおかしくなっている。いつ隠れ借金が出てきてもおかしくない。その時、夫の収入だけをあてにしていたのでは、自分も子供も一蓮托生になり路頭に迷ってしまう。自分のキャリアは手放さず、いざという時に「自分と子供の食い扶持だけはなんとかなる」という経済基盤をキープしておいた方がよい。

③貯金や保険など名義は妻にしておく

 共働きの場合、生活費や貯金を折半にすることが多いと思うが、二人の共有財産や将来資金を貯めるなら、名義は必ず妻のものにしておこう。特に学資保険や年金保険などの貯蓄型保険などは、被保険者は夫でも良いが、契約者は必ず妻にしておかないと勝手に解約されていたり、借り出されてしまったりする。こういう事例は嫌というほど見聞きしており「カードを預かっているから」「証券を持っているから」などと油断せず、名義自体を妻のものにしておくべきである。カードや証券など本人名義のものはいくらでも再発行ができてしまうのだ。

そして何よりもお伝えしたいことは、夫と一緒にいることが辛くなったら、あきらめること、手放すことも大切だ。私の経験値では、苦労が多い生活を続けていて「もうダメだ」と諦めがつく人と「いつかはきっと私を大事にしてくれる」と粘り続ける人がいる。百歩譲って当事者同士ならそれでもいいが、子供が巻き込まれると悲劇である。

確かに夫の借金問題で苦労をすると、どこかでその苦労の元が取りたくなる。こんなに苦労したのに別れるのかと喪失感にも見舞われる。しかし苦しいことを続けるよりも、あきらめて別の道を言った方が、よほど楽で安全で自由な道を進むことができる。

結婚に反対されていたりすると「それ見たことか」と、親兄弟に言われるのが嫌で、誰にも相談できず孤独を深めてしまうこともある。親兄弟に理解されないようなら、公共の相談機関や、カウンセラー、場合によっては自助グループなどを頼ろう。

そして周囲の人は「それ見たことか」と言わずに、「そうか頑張ったね」と迎え入れて欲しい。人間は失敗してみないとわからないことだらけなのだから。

眞子様がこれからどのような道を歩まれようとも、その道は決して平坦ではないであろう。けれども眞子様自身がお幸せになることを心からお祈り申し上げたい。

トップ写真:秋篠宮文仁親王と眞子さま 有明コロシアムにて 2015年10月7日
出典)Photo by Atsushi Tomura/Getty Images




この記事を書いた人
田中紀子ギャンブル依存症問題を考える会 代表

1964年東京都中野区生まれ。 祖父、父、夫がギャンブル依存症者という三代目ギャンブラーの妻であり、自身もギャンブル依存症と買い物依存症から回復した経験を持つ。 2014年2月 一般社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表理事就任。 著書に「三代目ギャン妻の物語(高文研)」「ギャンブル依存症(角川新書)」がある。

 

田中紀子

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