仏で使い捨てプラスチック廃止加速
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・EUは、2019年に使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する「特定プラスチック製品の環境負荷低減案」を採択。
・仏は2020年に「循環経済法」を定め、2040年には使い捨てプラスチックの市場への投入を禁止する長期的なゴールを設定した。
・今年1月1日からは、ストロー、ナイフ・フォークなどが禁止されるなど、EUのプラスチック削減のリーダー的存在となっている。
日本では新内閣が発足し、環境相の交代を受けて「レジ袋有料化」に対する論争が再燃した。有料化に意味を感じず反対する人たちも多いからだ。かなりの高いリサイクル率を保持する日本で、ほんとうに必要な施策なのだろうかと疑問が投げかけられている。
しかしながら「レジ袋有料化」は、化石燃料の輸入依存の削減、リサイクル率100%を目指すため、世界では多くの国が行う流れになっているのも事実だ。
特にフランスでは、2016年に他国に先駆けて使い捨てプラスチック製レジ袋の使用を禁止し、さらに循環経済法が2020年に制定され、廃プラスチックへの取り組みが強化された。その結果、フランス国内では「レジ袋有料化」どころか、現在ではその先の政策に進んでいるところである。
確かに日本と世界のリサイクルに対する戦略はもちろん違うのだが、重なる部分もある。日本もレジ袋の有料化の次には、フランスと同様に他のプラスチック製品の使用削減へと動いていく可能性もあるだろう。そこで、参考のために、現在フランスで行われている取り組みと計画をまとめてみた。
■ フランスのレジ袋有料化の流れ
ヨーロッパでは環境への問題意識が高い国が多い中、約10年前のフランスは、他のヨーロッパ諸国に比べて環境対策が遅れていると言われていた国であった。そこで、あたらな環境対策を組み込み、その遅れを取り戻そうとしたのがオランド政権時に制定された、「プラスチック容器の使用禁止」を含む「エネルギー転換法」だ。
2016年に他国に先駆けて、使い捨てプラスチック製レジ袋の使用を禁止するなど思い切った政策を行ったことで、環境対策に対してリーダー的存在感を示すことにも成功したこの「エネルギー転換法」は、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の輸入依存を減らすことを狙いとし、再生可能エネルギーへの移行を進める長期的なプロジェクトでもある。そして、プラスチック製品を減らしていくことで、環境保全に貢献することにもつながっているのだ。
当時、フランスでの石油由来のレジ袋の消費は、年間約170億枚にのぼっていた。そして環境庁によれば、そのうち約80億枚の袋が自然界に捨てられ、生態系が破壊されていたのだ。欧州委員会の報告でも、海の廃棄物の75%が石油由来の袋で、海亀の86%がクラゲと間違えて摂取したり、北海の鳥の胃袋には94%に石油由来の袋が入っていると述べられている。
このような事情を踏まえ、フランス政府は2016年7月1日、石油由来の使い捨てのレジ袋の配布を禁止し、有料化した。が、当時は、大きなスーパーでは、長期買い物に使える大きくて丈夫な買い物袋が無料で配布されるなどの対策が取られ、そこまで大きな混乱もなく移行した。
また、厚みが50ミクロン以上であり、繰り返し袋として利用ができると表示がされているプラスチック製の袋は対象外だ。大抵の店では、大きくて丈夫な買い物袋と共に、この厚手のプラスチックの袋が有料で売られている。
また、土に戻る「植物性原料」のバイオプラスチックの袋は許可されており、野菜を入れる薄手の小袋などはバイオプラスチック製の袋が使用され、現在も使われている。最初の頃はバイオプラスチックでできた袋に入れて冷蔵庫に保管すると、冷蔵庫内で溶けて穴があくような袋もあったが、さすがに最近は十分な機能を備えた袋がほとんどになっている。
しかし、プラスチック全体からみればレジ袋の占める割合はほんのわずかである。レジ袋を有料化しエコバッグを持参すればプラスチック削減が解決される話ではない。あくまで意識を高める第一歩にすぎないのだ。その後フランスは、欧州連合(EU)で設定された、プラスチック製品の流通禁止の目標に沿った削減計画が立てられていった。
▲写真 インドネシア、バリ島、ジンバランのビーチに打ち上げられたプラスチックごみ(2021年1月27日) 出典:Photo by Agung Parameswara/Getty Images
■ 使い捨てプラスチック製品の流通を徐々に禁止に
EUは、2019年に使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法案である「特定プラスチック製品の環境負荷低減案」を採択した。EU加盟国は2021年までをめどにこの案に対応した国内法を整備することが求められることとなり、フランスは2020年に「循環経済法」を定めたのだ。そして、2040年には使い捨てプラスチックの市場への投入を禁止するという長期的なゴールを設定し、個々の製品について2021~2025年末まで5年間の中間目標スケジュールを設定した。
現在は、その計画が着々と遂行されている最中である。2020年1月1日~は使い捨てのプラスチック製のカップ、グラス、皿が禁止され、2021年1月1日からは、ストロー、ナイフ・フォークなどが禁止された。
また、2022年1月1日からは、野菜・果物の包装、新聞・雑誌・広告の包装の禁止となる予定である。カットフルーツや傷みや崩れやすい果物・野菜はしばらくのあいだは包装して販売できるが、2026年6月末までに段階的に全廃する方針だ。この結果、年間10億以上の包装容器類が削減できるとしており、2023年からは、店内飲食用に再使用できるカップ、グラス、カトラリーの使用も義務付けられる予定だ。
また、EU全体では、自然界にペットボトルの蓋(キャップ)が落ちないように、2024年までに最大3リットルのペットボトルのキャップはボトルに取り付けることも決められている。
このように、今ではEUのプラスチック削減のリーダー的存在になっているフランスでは、着実にプラスチックの削減が実行されていっている。今年に入り、ガス不足による値段高騰からもわかるように、化石燃料の輸入依存を削減していかなくてはいけないのは明白である。今後もプラスチック削減計画を中止することはないだろう。
■ 現在、フランスで使用されている物の紹介
ところで、ペットボトルに取り付けられたキャップ(落ちてどこかに行かない蓋)とはどういうものだろう。
ファンタ、スプライトも所有しているコカ・コーラも2022年末までには、ボトルから離れないこの方式のキャップにすると表明しており、着実にEU内で増え始めている形態だ。
現時点のところ、フランスにはこういったキャップは2種類ある。
一つ目は、蓋を回して締めるタイプのボトルに取り付けられたキャップ。うまく閉まらない時もあり、水が漏れるときもあるのでちゃんと閉められているか確認が必要。
▲写真 ペットボトルに取り付けられたキャップ(筆者撮影)
二つ目は、薄い蓋をパチンとはじいて開けるタイプのキャップ。
フランスでは、2018年にクリスタリンというミネラルウォーターの会社が、最初にこの形式のキャップを使用始めた。当時はカバンに入れておくと蓋が何かの拍子に開いてしまい、カバンの中が水浸しになって苦情が話題になったこともあったが、現在ではボトルにキャップが付いている形式の実績が長い先駆者と評されている。日本で販売されているクリスタリンは、普通の回して開けるタイプの、厚めのキャップが主流だが、キャップが薄いとプラスチックの使用量も減ることも大きなメリットだ。
▲写真 ペットボトルに取り付けられたキャップ ※写真は違うメーカーの薄型の蓋(撮影筆者)
また、フランスでは、ペットボトルのリサイクルのための機械が設置されているところも増えてきた。一つ1ソンチームに換算してお店で使えるチケットをくれる。赤や緑などの色が着いたボトルは、機械に入れてはいけないことになっている。
▲写真 ペットボトルのリサイクルのための機械(筆者撮影)
プラスチック削減のため、発砲トレーの使用を控えるところもでてきている。紙製のトレーを使うところも増えてきた。湿気を含むと多少ふにゃふにゃしてくるが、まったく使用するのには問題ない。
▲写真 紙製トレー(筆者撮影)
<参考リンク>
コカ・コーラ社、来年からボトルにキャップを付けるサービスを開始
トップ写真:2021年4月18日にイタリア・リボルノで回収された廃プラボトルなど 出典:Photo by Laura Lezza/Getty Images
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。