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.政治  投稿日:2021/10/30

日本の維新の会 各政党政策・リーダー分析 その4


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・維新、「身を切る改革」を明確にしており、改革姿勢はぶれない。

・課題は、既得権益と「共存共益」の仕組みをどう作るかと、面白い提案が機能するか。

・後は大阪以外で実績を作る事。

 

各党政策・リーダー分析、第四回は、日本維新の会と松井一郎さんと吉村洋文さん。野党の中で、独自の路線を歩む日本維新の会。「昭和の構造を変える」を掲げ、改革政党の代表として奮闘している。吉村知事の認知度アップで勢力を拡大中である。

■ 改革政策で日本を変える

維新の政策維新八策 2021として、いの一番に政治改革を掲げる。「国民との約束である「身を切る改革」を徹底するため、国会議員の議員報酬(歳費)・議員定数3割カットを断行」といったいわゆる「身を切る改革」を明確にしている。改革姿勢はぶれない。

松井代表は「領収書がいらない経費がもらえているのは国会議員だけ」など政治の問題点を重ね重ね指摘する。報酬カット、退職金なしという納税者が当たり前に感じる形に政治家の身分を変え、「議員特権に対する厳格な姿勢を堅持」するそう。

さらに、その裏にいる既得権益、業界との関係についても「議員、政党への企業・団体・組合等による献金の全面禁止を求め、ネット献金を含めた個人献金を促進します。全面禁止の成立以前においても、所属議員は企業団体献金を受け取らない政治姿勢を堅持します」と踏み込んでいる。政治改革はなおざりになりつつあるが、そこへの言及は凄い。

特に、既存政党は特定の業界と近いため、新しいチャレンジを起こさせないようにしてしまうという本質をついており、それが基本的な考え方である。だからこそ、維新派改革で成長を生み出していくという考え方なのだそうだ。

■ 経済政策で日本を変えられるか?

「減税と規制改革、日本をダイナミックに飛躍させる成長戦略」である経済政策については、産業政策として「競争政策3点セットとして①供給者から消費者優先、②新規参入規制の撤廃・規制緩和、③敗者の破綻処理が行われ再チャレンジが可能な社会づくりを実現します」という基本的な考え方がベースにある。

税については「成長のための税制を目指し、消費税のみならず所得税・法人税を減税する「フロー大減税」を断行し、簡素で公平な税制を実現します」「既得権益化した複雑な租税特別措置法を廃止し、「簡素、公平、活力」の税制へと転換を図ります」と大改革を打ちだしている。つまり、明確な方針を打ち出しているのだ。

デジタルをはじめとする新規ビジネス、成長についても様々な提案をしてる。30年、政権を取っていた党への疑問を提示する。令和の時代の規制の見直しがスタートだと考えている。解雇規制についても松井さんは問題提起もしている。企業側から見ると社員を継続して雇用するために余裕を置かないといけない、だから儲かっていても、所得が上がらないと指摘する。時代にあわないビジネスも出てくる、雇用環境を変えていくこと令和の「規制」改革であり、分配面を考えて、先んじてベーシックインカムの検討をしているそう。

障がい者支援として、分身ロボットなどのテクノロジー開発、「2000兆円を超えるともいわれるSDGsビジネスにおける国内企業の優位性を獲得し、市場獲得への環境整備を行うため、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業を支援します」というように、ビジネスか正義かの2分論のような過去の価値観や考え方にとらわれない独自の社会政策の視点を見せる。

課題は、2つ。第一に、既得権益という「業界団体」「企業」をどう説得して、「共存共益」の仕組みを作っていけるか。未来を見据えて、調整をしていけるのかをしめすことである。既得権益に臆せず、政治家として未来のビジョンを提示し、対話の舞台を作り、説得し、「どのように」納得・妥協してもらうかを明らかにしてもらいたい。原則は素晴らしいが、中身について複雑な制度をどう変えていくのかということに挑戦することになる。制度設計と運用についての「難易度の高い」取り組みにおいて、関係者をどう説得してすすめるのか、大阪都構想とは違う、新たなアプローチ、知見が必要だろう。

第二に、面白い提案が機能するか。「感染症の対応にあたる「日本版 CDC」を首都圏と関西圏に 1か所ずつ整備」、「アニマルポリス創設」「法務省の保護司のような「情報(デジタル)司」制度の創設」など面白い提案をしている一方、行政の業務もしくは委託が増えるだろう。制度を作って本当に機能するのか?運用は?問題はないのか?いわゆる、実行可能性調査(FS:Feasible Study)の視点や考察・言及が問われるところだろう。

男、松井一郎

松井一郎さんは1964年1月31日、大阪府八尾市出身。大阪府議を父に持つ。福岡工業大学卒業後、きんでんに就職。25歳にて電気工事会社を継いだ。2003年に大阪府議会議員になり、自民党では大阪府議団の政調会長まで務めたが離脱し、維新の会を設立し、中心となった。

一般社団法人日本声診断協会、株式会社ターンアラウンド研究所のコンサルタントの中島由美子氏に今回も登場いただいた。声診断結果では、「義理人情に熱く、とても実直な性格を表していることが分かります。一度思い立ったら実現するまで猪突猛進で行動していき、行動の背中で引っ張っていく有言実行型リーダー」だそう。

課題は、「戦略、冷静さ、全体の構図、先のビジョンなどを指し示すこと。もしそばに軍師のような存在がいて、その実行部隊として現場で行動していくことに特化することができたら、パワーバランスがとれて来るのではないかと思います」とのこと。

▲図 【出典】中島由美子氏による声診断結果

次世代のスター?吉村さん

吉村洋文さんは、1975年6月17日大阪府河内長野市生まれ。府立生野高校卒業後、九州大学法学部へ。卒業後、弁護士として活動。その後、大阪市議会議員、衆議院議員を経て、大阪市長、大阪府知事という経歴である。現在、日本維新の会の副代表。高校ではラグビー部所属の文武両道であったが、寡黙であったと言われている。

中島由美子氏の声診断結果では、「信念の強さ、ぶれない軸の強さがあります。松井市長も同様なので、強い信念や思いでつながっている関係性なのだと思います。更にプラスして、行動力、人とのやり取りやビジョンを伝える力、戦略などを考える冷静さなどもバランスよく持ち合わせています」という評価となっている。

課題は「新しい時代にとって本当に大事なものはなにか?を知ることです。それは戦略や仕組みといったものではなく、人が自然や命と共存共栄して行くことに価値をおいて政治に携わることができたなら、大阪だけではなく、日本を救済していくことにつながると思います。」とのことです。期待は大きい。

▲図 【出典】中島由美子氏声診断

国を改革してくれる政党なのだろうか?

改革政策については、さすがの内容である。基本的な方向性は正しく、未来を踏まえている。大阪での実績という根拠もあり、それなりに信頼できるものであるといえよう。あとは、大阪以外で実績を作る事だろうか。

様々な補助金の見直しなども「本気でやればできる」といたるところで発言し、大阪のモデルを発信するものの、なかなか日本の他の自治体では進まない。大阪都構想をめぐる対応は、政治化してしまい、多くの国民が「本質」を理解できなかったり、感情的な反発をしてしまったりしているのが現状だ。なので、日本全国・国民へ丁寧に伝える工夫は必要だろう。

また、改革が既得権益のためにも結果的になることを明確にし、いかに説得していけるか、そこに注力すれば巨大政党への道が開けるだろう。松井さん、吉村さんと日本維新の会に期待したい。

トップ写真:【出典】日本維新の会 衆議院議員選挙2021




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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