維新代表選【政策・人間力分析】その2 馬場伸幸さん
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・日本大改革プランをベースに、雇用の流動化、消費税・法人税・所得税の減税、ベーシックインカムを主張。
・「納税者が納得できる」「再チャレンジができる社会づくり」国民目線を大切にする穏健な政策スタンス。
・「維新スピリッツを継承していくべき」と主張、身を切る改革、既得権益の打破、若い力の活用の実現を訴える。
日本維新の会の代表選、第二回は馬場伸幸さん。松井一郎さんの直属の部下として有名だが、今回、維新の顔となるべく立候補した。1965年1月27日生まれの57歳。日本維新の会所属の衆議院議員である、日本維新の会共同代表・国会議員団代表、大阪維新の会副代表でもある。
■ 馬場さんってどんな人?
政治関係者以外にはあまり知られていない、馬場さんの経歴を見てみよう。
昭和40年大阪府堺市鳳西町に料理人の父のもと生まれる。堺市立鳳南小学校、浜寺中学校、鳳中学校で学んだ。大阪府立鳳高校に進学するとラグビー部で活躍、卒業。
その後、オージーロイヤル(現ロイヤルホスト)に就職。1986年2月から中山太郎参議院議員の秘書になる。中山太郎さんとは衆議院議員、外務大臣、総理府総務長官、沖縄開発庁長官を務めた自民党の政治家である。1993年の市議会補欠選挙に出馬し当選。堺市議会議員として6期を務める。堺市議会議長や副議長を歴任。2010年に自民党を離党し、大阪維新の会結成に参加した。2012年堺市議を辞任し、第46回衆議院議員総選挙に大阪17区から出馬し、初当選。その後、維新の会の中心人物として活動。当選4回。
▲図 馬場信幸氏 出典:日本維新の会HP
■ 政策的主張は日本大改革プランがベース
政策の基本柱として:
・憲法改正
・地方分権(統治機構改革)
・次世代への徹底投資(出産、教育無償化)
・多様性を尊重する社会政策
を掲げている。馬場氏は出馬会見において、「日本大改革プラン」についても改めて重要性を力説している.
日本の問題への解決策、処方箋を提示し、明確にしているわけだが、今回、雇用の流動化についても出馬会見で力説していた。
労働者の賃金が上がらない理由の1つに雇用環境があると指摘し、労働市場の流動化を主張する。中でも、解雇規制の緩和、同時に再就職支援の強化、再教育支援・職業訓練の充実が必要ということだ。
▲図 出典:日本大改革プラン
また、日本大改革プランでは、消費税・法人税・所得税の減税、ベーシックインカムといった政策を進めることで、消費喚起・企業の競争力向上・可処分所得の増加、ユニバーサルなセイフティーネット強化につながるとしている。
■ 理念をもとにした政策
馬場さんの政策の特徴は、第一に、理念である「納税者が納得できる」「再チャレンジができる社会づくり」という理念をもとに、政策が展開されている。その理念と具体的政策に論理的なつながりがあり、整合性がある。
第二に、国民生活への視点である。演説の中で、馬場さんは「日々の暮らし大丈夫か?」「国民の皆さんが不安を持っている、疑問を持っている。それを解消していきます」と発言するなど生活者、国民目線での発言が多かった。具体的な政策では、電気代、ガス代、物価の値上がりに対して警鐘を鳴らしている。馬場さんは「国民の皆さんに安心していただくことが最大の仕事と考えている」そう。ガソリンの暫定税率を即時廃止すべきと主張している。消費税については、軽減税率を物価の上昇に合わせて下げていくべきと話す。資産課税については、「一定の所得を超える人には何らかの負担をしていただくことを検討」と言及している。
■ 意外に穏健な政策スタンス?
今回明らかにされてはいないが、国政についての政策についても見てみよう。各種政策アンケートなどにおいては、憲法改正は賛成、特に「自衛隊の保持を明記する」「教育の充実に向けた環境整備を行う旨を明記する」「首相公選制を導入する」「地方公共団体の権限強化を明記する」「憲法裁判所を設置する」「緊急事態に関する条項を新設する」などを志向している。
安全保障関連法の成立は「どちらかというと賛成」、北朝鮮には対話よりも圧力ということに「どちらかというと賛成」、普天間基地の辺野古移設については「賛成」ということである。足立さんと比較して穏健なスタンスである。
社会的テーマについては、選択的夫婦別姓制度の導入や同性婚を可能とする法改正については「どちらかというと賛成」と、穏健な政策スタンスを示している。
■ 維新スピリッツの伝道者として
今後の党の方向性としては、いろいろな改革を進める、政党の中を改革し、政策のブラッシュアップし、改革を積み重ねることで、自民党が国政の場で改革競争をして、改革合戦をして、前例慣例をぶち壊していくことを志向している。
特に「維新スピリッツを継承していくべき」と強く主張しているが、具体的には身を切る改革で覚悟を示し、既得権益を打破し、若い力の活用、実直に努力する人に光を当てる組織ということだそうだ。「維新スピリッツ」を継承し、複雑な税制度や社会制度を「シンプル・イズ・ベスト」という手法で改革を進めることが大事と語る馬場さんに期待したい。
トップ写真:堺市鳳で街頭演説する馬場信幸氏(2022年8月25日) 出典:馬場信幸公式Twitter
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。