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.国際  投稿日:2022/3/4

ロシア疑惑は民主党側の捏造


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・「ロシア疑惑」が実は民主党側の捏造だったことがさらに確実になった。

・今年11月の中間選挙、さらには2024年の次期大統領選挙での共和党対民主党の対決構図をも大きく変動させかねない。

・メディアの多くが「ロシア疑惑」を事実であるかのようにして報じたことは厳しく反省されるべきだ。

 

アメリカでのニュースといえば、このところウクライナ戦争で埋め尽くされている。日本の主要メディアでのアメリカ関連の報道は、ウクライナしかないと思えるほどとなってしまった。

確かにロシアが隣国のウクライナに軍事侵攻して、その主権を覆そうとして、国民を殺傷するという非道な行動はもちろん戦後の世界全体の歴史に特筆される大事件である。この大事件でのアメリカの超大国としての役割は当然ながら重大である。だからウクライナでの出来事へのアメリカ官民の一進一退の動きは、日本にとっても超重大となる。

しかし、とはいっても、アメリカ国内ではウクライナとは直接に関係のない大きな出来事も起きている。ウクライナ戦争の火の手に隠れて、見落とされがちのそうした他の重要な出来事への注意も欠かすことはできないのだ。

こんな注意を向けるべきなのはアメリカ国内での「ロシア疑惑」をめぐる新たな展開である。

ここで登場してくる「ロシア」はいまウクライナ戦争で主役となるロシアとは直接のかかわりはない。だがアメリカの内政にとってはきわめて意味のある動きなのだ。

さてこの新たな動きとは、簡単にいえば、トランプ前政権に向けられた非難の核心だった「ロシア疑惑」が実は民主党側の捏造だったことがさらに確実になったという骨子である。ロシア疑惑とは、「トランプ氏とその選挙陣営が2016年の大統領選挙でロシア政府機関と共謀して、アメリカ有権者の投票を不正に操作した」という疑いだった。

ところがそんな疑惑を生む事実は最初から存在しなかった、というのだ。存在しなかったどころか、現実にはトランプ陣営の政敵の民主党側によって、でっちあげられたデマ工作だったというのだ。少なくともそのでっちあげを裏づける具体的な物証が示されたのである。

日本でも主要なメディアは新聞でもテレビでもトランプ陣営をクロとしての「ロシア疑惑」報道の勢いはものすごかった。当初からこの疑惑に対する疑念はあったのだが、日本メディアは「トランプ氏こそロシアと共謀して不正を働いた」というクロ断定の一本槍だった。

ところがここにきて、この「ロシア疑惑」はトランプ陣営の政敵だったヒラリー・クリントン陣営がそのための「推測と物語」を創作した産物だったということが判明したというのである。

この衝撃的な展開を明らかにしたのは連邦政府の特別検察官ジョン・ダーラム氏の捜査だった。この展開は今年11月の中間選挙、さらには2024年の次期大統領選挙での共和党対民主党の対決構図をも大きく変動させかねない重みがあるといえる。

▲写真 特別検察官ジョン・ダーラム氏 出典:United States Attorney’s Office, District of Connecticut

当初のロシア疑惑に対してはトランプ政権の1年目の2017年5月にロバート・モラー特別検察官が任命されて、本格的な刑事事件捜査が始まった。この特別検察官の任命はたぶんに民主党が主導しての動きの結果だった。

モラー特別検察官とその配下の検事たちは2年に及びこの疑惑を捜査したが、共謀を裏づける証拠はないとの結論を出した。その後、逆に民主党側に不透明な動きがあったことがわかり、真相解明のためトランプ前政権の末期2020年10月に当時のウィリアム・バー司法長官がジョン・ダーラム検事を新たな特別検察官に任命したのだった。

ダーラム氏はコネチカット州で刑事事件捜査で幾多の実績を残した検察官だった。政治的にも中道に近いとされてきた。そのダーラム特別検察官はバイデン政権下でもメリック・ガーランド司法長官の公認の下に捜査を続けてきた。アメリカの司法制度ではいったん特定の政権に任命された特別検察官は政権が替わっても、捜査を続ける権限を認められている。

ダーラム検察官は継続捜査の結果、2021年9月にワシントン連邦地裁の大陪審でマイケル・サスマン弁護士を偽証罪で起訴した。同弁護士は大統領選中、クリントン選対と契約していたパーキンス・ク―イ法律事務所所属の事実を隠して「トランプ陣営はロシア政府系のアルファ銀行などと共謀のため秘密の交信を保っている」と連邦捜査局(FBI)に虚偽の密告をしたとされた。しかもこの密告はクリントン選対から委託されたのだという。

▲写真 2022年ニューヨーク州民主党大会で講演するヒラリー元国務長官(2022年2月17日、ニューヨーク市) 出典:Photo by Michael M. Santiago/Getty Images

さてそれから5カ月後の2022年2月、ダーラム特別検察官はサスマン弁護士やクリントン選対の行動について新たな捜査結果を公表した。刑事捜査の継続のためにワシントン連邦地裁に2月11日に提出した申請書のなかの新事実だった。トランプ氏の私邸やホワイトハウス執務室からの情報窃取までが記されていた。

その骨子は以下のようだった。

・サスマン弁護士は2016年の大統領選挙中、クリントン陣営の依頼でインターネット企業「ニュースター社幹部のロドニー・ジョフィ氏トランプ陣営の内部情報を秘密裡に取得することを依頼した。トランプ陣営とロシア政府の共謀という「推測と物語」を創ることが目的だった。

・ジョフィ氏は選挙期間中はニューヨークのトランプタワー、トランプ氏の私的アパート、選挙後はトランプ大統領のホワイトハウス執務室のそれぞれのサーバーに侵入して、不法にネット情報を窃取した。クリントン陣営はその工作に対して多額の報酬を払った。

・ロドニー氏はこの情報窃取工作のために数カ所の研究機関や特定の大学に所属する多数のインターネット専門家、技術者を使った。サスマン氏はロドニー氏との接触を保ち、クリントン選対とも連絡し合って、同選対に工作のための代金の請求を重ねていた。またサスマン氏はトランプ陣営についての「疑惑」をその後もFBIなどに伝えていた。

ダーラム検察官はワシントン連邦地裁に以上のような「申請」を述べて、これらの捜査結果の証拠はすでに得ていると主張した。そうなると、ロシア疑惑はまったく逆転したことになる。クリントン陣営の工作がトランプ大統領のホワイトハウス執務室の交信内容入手にまで及んでいたとすると、アメリカ議会でも追及の動きを生む重大な事態に発展するともいえる。

アメリカ大手紙のウォールストリート・ジャーナルは2月14日付の社説で「トランプ氏は本当にスパイされていた」と題して、「ロシア疑惑」は「アメリカの政治史でも最も汚いトリックだ」と民主党側を非難した。同社説はアメリカのメディアの多くがこの「ロシア疑惑」を事実であるかのようにして報じたことは厳しく反省されるべきだとも批判していた。

この批判は日本の主要メディアの多くにも当てはまるようだ。

トップ写真:保守政治活動協議会(CPAC)で講演するトランプ前米大統領 (2022年2月26日、フロリダ・ローゼンシングルクリーク) 出典:Photo by Joe Raedle/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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