無料会員募集中
.政治  投稿日:2022/3/21

「日中友好」の光と影 国交50周年を機に その4 中国に抗議しない日本の議員


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

 

「古森義久の内外透視」

 

【まとめ】

 ・中国の反日行動や国際的な規則違反に、日中友好議連は抗議や反対を公式に述べたことはない。

・議連会長だった林氏は「中国側に非公式に伝えている」と言うが、公式でなければ意味がない。

・中国側が「日中友好議連」を日本国内の世論工作に利用していると、アメリカが警戒。

林芳正氏が2017年12月、日中友好議員連盟の会長になったときの同連盟の会合には当時の日本駐在の中国大使の程永華氏が出席して、林氏への祝辞などを述べていた。

駐日中国大使館の公式サイトの記録によると、程大使はこの演説で中国と日本は「平和、友好、協力への大方向の下に一帯一路の推進に協力して、中日関係の前向き善意の政策をとる」と強調した。

そのうえで程大使は林氏の同議連会長就任を祝って次のように述べたという。

「日中議連が林芳正新会長の積極的で力強い指導の下、引き続き優れた伝統を発揚するとともに朝野各党のより多くの若い政治家を迎え入れ、一層豊かで多様な交流活動を繰り広げ、中国の発展に対する日本各界の客観的認識をけん引し、中日実務協力、中日友好促進のために一層積極的な役割を果たすよう期待している」

程大使のこの言葉は皮肉な結果を招いた。以来、4年余り、日中関係は悪化の一途をたどったからである。両国関係の悪化はごく客観的にみて、中国側の規範破りの行動がその原因だった。

 

写真)河野太郎外相を表敬訪問した程永華大使(2017年9月25日 外務省) 出典)外務省ホームページ

 

日本に直接に影響する動きとしては中国の武装艦艇による尖閣諸島の日本領海への継続的な侵入、中国で活動する日本企業への不透明な圧力、日本人の学者や企業人の理由を公表しないままの逮捕や拘束、そして年来の反日教育の継続などだった。

さらに中国当局によるウイグル人やチベット民族の弾圧、香港での民主主義の抑圧、台湾への武力での威嚇など国際的な規則違反も目立ってきた。

しかし中国側との接触が日本側で最も頻繁なはずの日中友好議員連盟はこうした諸点についての中国側への抗議や反対をまったく表明はしないのだ。

実は私自身、外相就任直後の林氏にこの点を質問したことがある。BSフジの『プライムニュース』という討論番組に林氏とともに私も招かれ、直接に話しあう機会があったのだ。

林氏はこの種の日本側の主張について「中国側に非公式には伝えている」という趣旨を述べた。だが非公式では意味がないのだ。日本国として表面で、公式に、オープンな形で日本の主張を述べなければ、なんの効果もないこととなる。

日本側のだれが、いつ、どこで、中国側のだれに、なにを伝えたのか、具体性がなければ、そんな主張が果たしてあったのかどうかも、疑わしくなる。

要するに日中友好議員連盟は中国政府に抗議や反対を公式に述べたことはないという記録はそのままなのである。

さて日中友好議員連盟に関してさらに懸念されるのはアメリカ側に警戒があることである。日中友好議員連盟を始めとする日本の対中友好団体に対してはアメリカの官民できわめて具体的な警鐘が鳴らされているのだ。

たとえばアメリカの国防総省国防情報局(DIA)が2019年1月に発表した「中国の軍事力」と題する調査報告書である。

 

この報告書は中国人民解放軍が共産党内部の他の組織と共同で日本に対する「政治闘争」を進め、日本側の中国への世論や政策を中国側に有利に動かすために「日中友好七団体」を利用することがあると記していた。この七団体にはもちろん日中友好議員連盟が最有力団体として含まれていた。

アメリカ議会の諮問機関「米中経済安保調査委員会」も年次報告書などで中国の日本に対する政治工作、とくに中国共産党の統一戦線工作部(略称・統戦部)による対日影響工作に言及し、友好七団体が関与することがあると指摘していた。

統一戦線工作部とは中国共産党中央委員会の重要部門である。この統戦部は本来は共産党が主敵との闘争に際し反共、非共の勢力とも連帯しての、からめ手作戦の実施を任務としていた。

だが近年の統戦部は習近平政権から新たな対外工作を命じられ、相手国内部での中国の動きへの反対を崩し、賛成を増やすための違法合法の活動を積極果敢に進めてきたという。

統戦部の工作はアメリカでもトランプ政権時代に深刻な課題として提起され、糾弾された。さらにオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、台湾などでもその触手が発見され、追及された。

(その5につづく。その1その2その3。全6回)

トップ写真)クアッド(日米豪印)外相会合に臨む林芳正外相(2022年2月12日 豪メルボルン)

出典)Photo by Con Chronis-Pool/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."