[宮家邦彦]<ブリュッセルでG7首脳会議>ロシアと中国の「力による現状変更の試み」をどう非難するかが最大の焦点[外交・安保カレンダー(2014年6月2-8日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週(2014年6月2-8日)は6月4-5日にブリュッセルでG7首脳会議が開かれる。ロシアと中国の「力による現状変更の試み」をどう非難するかが最大の焦点だ。ロシアが抜けてG8は当面なくなり物事は決まり易くなるだろうから、中露にとって厳しい内容となる可能性はある。
ちなみに、安倍首相は3-7日にベルギーとイタリアを訪問する。シンガポールから帰国したのは5月31日だったが、6月3日にはまた欧州に向かうのだから、実にご苦労様である。これほど外遊を精力的にこなす日本の総理大臣は他に例がないだろう。
シンガポールといえば、現地での安倍首相の基調演説は結構評判が良かったらしい。案の定、絶妙のタイミングでベトナムや日本にちょっかいを出したこともあり、中国は四面楚歌で、事実上孤立したようだ。人民解放軍の軍人は本当に懲りない。
6月4日は1989年に起きた天安門事件の25周年でもある。あの大事件から4半世紀経ったが、状況は何一つ変わっていない。相も変わらず、民主活動家などに対する嫌がらせや弾圧が続いている。当時20代前半だった学生たちももうすぐ50歳。
1989年の夏は「若気の至り」だったということか。翌6月5日には唐家セン元国務委員が訪日するらしい。事実だとしても、安倍首相は外遊中でハイレベル接触はない。日中関係が動く兆候は未だ見えない。
6月4日といえば、欧州委員会はユーロ加盟準備状況に関する年次報告書を提出する。対象はブルガリア、チェコ、クロアチア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スウェーデンの八か国、EUは更なるユーロ圏拡大を本気で考えているのか。
近年ギリシャなどであれだけ大騒ぎしたのに「何故拡大なのか」と思うのは素人だ。EU条約上加盟国は基準を満たせばユーロ導入を義務付けられる。但し、その例外がデンマークと英国なのだそうだ。やはり欧州情勢は複雑怪奇である。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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