無料会員募集中
.国際  投稿日:2021/12/25

仏、コロナ偽造パスが横行


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・フランスで新型コロナウイルス感染が急拡大、約3割がオミクロン株。

・「ワクチンパス」の義務化を前に、偽造パスも横行。

・政府はパスの偽造に対する取り締まりと罰則も強化する予定

 

現在、ヨーロッパでは新型コロナウイルスの感染が急速に広がっており、フランスでも一日の新規感染者が、過去最高を更新し続けている。23日のフランスの新規感染者は、9万1608人となり、2020年11月の第2波で記録した8万6852人を抜いての最多記録となった。

ベラン保健相によれば、現在、感染者の30~35%がオミクロン株に感染しているとみられ、年末までに国内感染の大半がオミクロン株になるだろうと見通されている。また月末には1日の感染者が10万人に達する恐れがあるとし、オミクロン株の感染力の強さと速さに警戒を鳴らした。

進むワクチン接種

フランスではデルタ株による感染は減少し始めているが、オミクロン株による感染が急速に広がっている。その影響も受け、2020年3月に感染拡大が始まって以来の最多記録をこの数日更新し続けている。しかしながら、新規の感染者数は多いものの、第2波と死者数を比較してみると、23日の死者数は179人であり1日400人が亡くなった第2波の半数程度で抑えられている。

入院し重症化する患者の8割から9割はワクチン未接種の患者という報告もあり、フランス政府はワクチンの追加接種を急ぐ方針だ。来年1月には2度目の接種から「5カ月後」としていた接種時期を「4カ月後」に前倒しする。

また、5~11歳への接種対象拡大もすすめている。22日には、フランスが5歳以上の子どもへのワクチン接種を開始。この日には、ワクチン接種を受けた子供は3000人ほどとなった。ベラン保健相によれば、現時点でさらに1万5千人が予約しているという。

27日月曜日には、追加の規則が発表される予定となっているが、現時点では外出制限や飲食店などの営業規制までは至っていない。しかしながら、年末のコンサート、パリのシャンゼリゼ通りで例年大みそかに行われる花火イベントは中止が決まった。各県にも、花火大会など人が集まる年末の行事などを中止するよう呼びかけられている。

マクロン大統領は23日、自撮りの動画で「ワクチンを接種していても、家族とのパーティーに出席するとき、特にお年寄りと会う前には感染していないか検査して欲しい。」と、警戒を呼び掛けた。この呼びかけ前にはすでに、薬局では自宅でできる検査キットの売り切れが続出し、各地で検査のために並ぶ長い列を見かけることとなっていたが、BMFTVによれば、このクリスマスは50万人ほどのフランス人は隔離生活となるそうだ。

衛生パスからワクチンパスへの移行と、横行する偽造パス

現在、フランスでは、飲食店や公共施設などを利用する際にワクチン接種をしているか、もしくは24時間以内の陰性かを証明する衛生パス」の提示が義務付けられている。しかし、今後この衛生パスは、新型コロナウイルスワクチン接種を完了していなければ取得できなくなる「ワクチンパス」に移行することが、17日にカステックス首相から発表された。

▲写真 カステックス仏首相(2021年9月19日) 出典:Photo by John Berry/Getty Images

この時、オミクロン株が主流になるのは1月末だと考えられていたため、この法案を1月に頭に提出し1月末にまとめる方針を立てていたが、しかしながら、オミクロン株の急激な感染拡大と新規感染者数の急増を受け、急遽予定が早められ法案提出は12月末までを目指し1月中旬までにまとめる方針に変更された。

また、フランスの衛生パスは導入時期も早く感染抑制に対し一定の効果を示しており、現時点までの外出制限などを回避できたとされているが、一方で、偽造パスが流通していることが問題になっている。この夏以来、18万2千件の偽造パスが発見され400の調査が開始。そして、約100の逮捕がすでに実行された。

偽造パスは、かなり簡単に手にいれることができたようだ。SNSなど流れてくるアカウントにアクセスして、そこで100ユーロ払えばQRコードの複製を数分で取得できる。さらに350ユーロ払えば、社会保障のアカウントのデータも書き換えた本物の偽造パスも入手できたのだ。これらには、医療関係者や医者が関わっていることが明らかとなっている。

だが、すでに、このように発行された偽造パスを日常で使用していた57才の女性が、コロナに感染し、オートセーヌ県内の病院で重症化し死亡した例も報告されている。

偽造パスを所有している人が新型コロナウイルス感染症にかかった場合、医師がワクチン接種者と勘違いして、適切な治療する機会を失うリスクがあり、こういった偽造パスは、「死のパス」とも呼ばれており、政府はパスの偽造に対する取り締まりと罰則も強化する予定だ。具体的には、現在使用者への罰金が139ユーロのところ、今後は1000ユーロまで引き上げなどが検討されている。

コロナに関する状況は日々と変わっていくが、年末には大方の方針が決定されそうである。

偽造衛生パスの密売:「良い機会だった、4ヶ月で10万ユーロ手にした」と元販売者

トップ写真:新型コロナワクチンの接種を受ける子供(サンカンタン アンイブリーヌ、フランス 2021年12月22日) 出典:Photo by Chesnot/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."