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.国際  投稿日:2022/1/24

仏でワクチンパス施行 反対も


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・ワクチンパス反対デモが一部で暴力化。賛成派議員が襲われる事態も。

・海外県では反対デモがギャングの資金集めに利用されていたことが判明。

・国民の多数はパスに「賛成」。変異株への警戒もあり、仏政府はパス導入で接種促進の方針。

 

1月24日の月曜日から、フランスではワクチンパスが施行されることとなった。ワクチンパスとは、ワクチンを完全接種している場合のみ有効になるパスだ。前回の接種から4カ月以内に追加接種を受けなければいけないとしている。1月24日以降は、16歳以上を対象者に飲食店、文化・娯楽・スポーツ施設、長距離移動の公共交通機関を使用するときに提示が求められることになる。15歳以下は今まで通り「衛生パス」を使用することになっており、12歳未満はパスは必要ではない。

このワクチンパス導入の目的は、ブースター接種率を高めることでもあるが、いまだにワクチン接種を1回も受けていない人たちに接種を促すことでもある。そこで、ワクチン未接種者に対しては、また違う規則がもうけられた。

ワクチンをまだ一回も受けていない人は、2月15日までに1回目のワクチン接種を受け、28日後に2回目の接種を受けることを条件に、陰性証明を提示することでワクチンパスを有効にするとした。これにより、1回でもワクチン接種を受ければ、当分は陰性証明を提示することで引き続きレストランなどを利用することができる。

このワクチンパス導入についてのフランス国民の評価はというとおおむね良好のようだ。フィガロによるOdoxa Backbone-Consultingのアンケート結果によれば、フランス国民はこのワクチンパスに62%という大多数が賛成している。また76%は、高齢者や基礎疾患がある人に対するワクチン接種を義務とすることに賛成しており、61%は、ワクチン接種義務をすべてのフランス人に適用してほしいと考えている。

しかしながらあくまでもワクチンパスは感染が広がっている時期の特別な措置であり、71%は感染状況が収まりしだいワクチンパスを自動的に撤回することを望んでいる。

■ ワクチンパス反対デモ参加者減少。しかし一部のデモ隊の暴力が問題に

一方で、ワクチンパス反対デモは続いている。施行前の土曜日である1月23日に全国で行われた。しかしながら、参加者はどんどん少なくなっている。前の週も大幅に参加者が減少し5万4千人となったが、23日はさらに参加者が減り3万8千人となった。

しかし、参加人数が減少したものの、一部のデモ隊によって暴力行動が過激化している。今回、暴力を受けたのはペルピニャンのロマン・グラウ議員だ。集まったデモ隊に「パスに投票したんだろう!」「死ね」などの罵声をあびせかけられた上、平手打ちや、あごを強打されるなどの被害にあったのである。以前からも、議員の自宅まで押し寄せて車を燃やしたり、ゴミを投げ込んだりする反対派のこういった行動は問題視されている。

▲参考:BFMTV Twitter

▲写真 ロマン・グラウ議員 出典:仏国民議会ホームページ

また、フランス本土とは異なり、海外県ではワクチン接種をめぐり別の問題が起こっている。フランス海外県のグアドループでは、依然としてワクチン接種に対する不信感が高いこともあり、接種率はまだ38.4%と低く、反対派のデモ活動も活発だ。そのためこの3カ月ほど都市部で破壊、略奪などの騒動が続いてきた。

▲写真 カリブ海に浮かぶフランス海外県グアドループ 出典:iStock / Getty Images Plus

こうしたなか、表向きはワクチン接種の義務化に対する反対デモ隊もいるにはいるが、実は、町の強奪行為などはギャングによる資金集めを目的とした計画的な暴力行為だということが最近になってわかった。

大規模なグループに店を破壊しないという約束を持ちかけ、資金提供を要求していたという。大型のショッピングセンターは襲撃を免れ、金を払ったとみられており、すでに8人が起訴されている。ワクチン反対デモがギャングに利用された形だ。

■ ワクチンパスへの移行はスムーズに

現在、フランスの12歳以上のワクチン未接種者は、6.8%である。ワクチンパスがないため不自由を感じる人は全体から見ればそこまで多くの割合は占めてはいない。ワクチンパスのチェックは衛生パスのときの手順と同じで、運用の問題はなさそうだ。そして今後は、このまま、新規感染者数や重症者数が減少すれば、ワクチンパス提示の義務も自動で必要なくなる予定となっている。

しかし、現在は、あらたに出てきた株(オミクロン株の亜種)の存在が警戒されている。オミクロン株よりもかなり感染力が強いとも言われ、今後どうなるかの見通しはまったくついていない。そういったこともあり、フランス政府はブースター接種の促進と、未接種者にワクチン接種を受けるようすすめることを戦略としているのだ。そのためにもこのワクチンパスの効果が期待されるところなのである。

<参考リンク>

『ワクチンパス反対デモ:内務省によると、土曜日の参加者は全国で3万8,000人』

『ワクチン接種パス:制度に賛同するが、期間限定を希望』

『ワクチンパス:土曜日に反対派約3万8千人が撤回求めるデモ』

『グアドループの暴動は「計画的かつ組織的」』

トップ写真:「衛生パス」反対デモ(2021年7月 仏・パリ) 出典:Photo by Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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