【ファクトチェック】ツイート「サッカー勝ったとたん、急激な円高で1ドル139円台に入った」→ミスリード
Japan In-depth編集部(村田莉菜)
【まとめ】
・ワールドカップ日独戦で日本が勝利した直後、「サッカー勝ったとたん、急激な円高で1ドル139円台に入った」とのツイートが拡散。
・米国の利上げ幅が縮まるとの示唆や、米新規失業保険申請件数が予想より増加したことなどが円買いの原因との見方。
・1スポーツの国際試合が相場に影響を与えたとの印象を与えるのはミスリード。
FIFAワールドカップカタール2022日独戦で日本が勝利した後のことだった。
「サッカー勝ったとたん、急激な円高で1ドル139円台に入った」
とのツイートが拡散された。1.7万件のリツイート、1,525件の引用ツイート、9.4万件のいいね、がついている。
▲Twitterリンク画像
これに対して、以下の反論ツイートもなされた。
匿名:いや、サッカー関係ないでしょwたまたま同じタイミングで米国の指標が発表されたからですよ(https://twitter.com/yamada19791979/status/1595475280474255360?s=46&t=ZY0otfcHan3Qxc1DwkNy6g)
匿名:EURJPYでもUSDJPYでも似たような動きだから影響が全くゼロではないだろうけど、PMI発表のタイミングと重なっただけでは。(https://twitter.com/potter2021view/status/1595470174898921473?s=46&t=ZY0otfcHan3Qxc1DwkNy6g)
Japan In-depth編集部もファクトチェックを行った。
日本経済新聞によれば、23日に発表された11月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨において、米国の利上げ幅が縮まるとの示唆があったことから、海外市場で円買い・ドル売りが強まっていたとしている。
また同記事によれば23日に発表された11月の米国の購買担当者景気指数(PMI)が前月から低下し、不況を意味する数値となったことや、同日発表された米新規失業保険申請件数が予想より増加したことも、米長期金利が低下しドル買いが進んだ原因である。
つまり日本VSドイツ戦の後に生じた円高は、アメリカの利上げペース減速という動きから生じた円買い・ドル売りの影響であり、サッカーの試合結果と直接は関係ないと見るのが妥当である。
このツイートの見出しは、あたかも日独戦の大番狂わせが円高を招いたかの印象を与えている。一部の市場関係者の心理にFIFAの試合結果が何らかの影響を与えることを否定するものではないが、日独戦1試合の結果に為替相場の急激な変動の原因を求めるのは無理がある。
為替相場はあくまでグローバルな経済指標や市場環境により決まるものであり、1スポーツの試合結果が左右するものとは思われない。
したがって、「サッカー勝ったとたん、急激な円高で1ドル139円台に入った」というこのツイートの見出しは、タイミング的にはそうであっても、あたかも日独戦の結果が相場に影響を及ぼしたかの印象を見る人に与えることから、「ミスリード」と判定する。
【Japan In-depthファクトチェックポリシー】
Japan In-depthは、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、ファクトチェックを実施しています。FIJが定めたガイドラインに準拠して、言説の真実性・正確性の評価・判定を行います。政治家、有識者の発言、メディアの報道、ネット上で拡散されている情報など、社会的に影響の大きな言説を対象とします。判定基準は以下の通りです。
トップ写真:FIFAワールドカップカタール2022 日本ードイツ戦で日本が勝利した直後 カタール・ドーハ 2022年11月23日 出典:Photo by Jean Catuffe/Getty Images