不動産バブルが懸念材料 「2023年を占う!」中国
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・李克強首相引退後、2023年に真の習近平「一強体制」が到来。
・「ゼロコロナ政策」に対する抗議の鎮静と経済停滞の現状打破が課題。
・不動産業界トップである碧桂園HDの破産がバブル崩壊の引き金となり、ひいては中国経済壊滅になりうる。
「2023年の中国を占う」のは容易ではない。2022年10月の第20回共産党大会まで、習近平政権は主席の「一強体制」と言われていた。だが、「習派」以外の他派閥から構成される「集団指導制」が多少なりとも機能していたのである。
けれども、周知の如く、党大会は「習派」の“大勝利”に終わり、真の習主席「一強体制」が出来上がった。そのため、今後、習主席の意のまま政治が動くかもしれない。中国の不確実性が増したと言えよう。
先の党大会最終日、習主席は、「反習派」の“表の総大将”、胡錦濤前主席を強制的に退場させた。同年11月末、「反習派」の影の“総大将”だった江沢民元主席が死去した。そこで、23年春、「反習派」の代表格、李克強首相引退後、習主席はフリーハンドを得ると考えられよう。
まず、2023年、「戦狼外交」(対外強硬策)復活の公算が大きい。特に、米欧に対してである。一方、習主席は台湾の武力統一を狙っているだろう。したがって、将来、中国が台湾を攻撃する可能性を排除できない。
次に、習主席肝煎りの「ゼロコロナ政策」である。主席は同政策によって、人民を完全に自分のコントロール下に置きたがっているのではないか。
2022年11月24日、ウルムチ市の高層マンションで大火災が起きた。そして、少なくとも10人が死亡している。同市の厳しい封鎖によって、消化活動が妨げられた。
この事件を契機に、2日後、まず、ウルムチ市で「白紙革命」が勃発した。それが、たちまち大都市、北京市・上海市・広州市等の学生に拡大している。一部の人々は「共産党退陣」、「習近平退陣」とまで叫んでいた。
そこで、習近平政権は、多少「ゼロコロナ政策」の手綱を緩めた。「今、相次ぐ抗議行動に直面し、政府はようやく後退し始め、現実的な政治に戻り始めている」(a)と言えなくもない。なお、「病院でコロナ対応にあたる医科大学の学生らが感染時の補償などを求め抗議」(b)をしているという情報もある。
李首相在職中は若干、ブレーキが効いた状態が続くかもしれない。しかし、その後は、習主席お気に入りの李強(元上海市トップ)が新首相となる。習主席は、たとえ「白紙革命」が全国的に燃え広がろうとも、最終的に、軍を使って鎮圧すれば良いと考えているのではないだろうか。
ところで、問題は肝心の経済だが、現状は以下の通り(c)である。
(1)若者の失業率は約20%に達している。
(2)小売売上高と工業生産高は引き続き期待外れである。
(3)世界的な成長の鈍化により景気を支えてきた輸出は低迷し始めている。
(4)かつて中国は、世界の工場として信頼されていた。だが、同国が絶望的な状況にあるので、いまや国際的投資家が撤退しようとしている。
(5)大規模な不動産バブルが弾けつつある(ちなみに、中国では高齢化と人口減少が進行しており、これらが長期的な経済衰退の原因となっている)。
中央政府で務めた経験のない李強新首相が、これらの難題を克服するのは極めて困難ではないだろうか。また、第1副首相になると目される丁薛祥(党中央弁公室主任)も、やはり中央政府で働いた経験がない。このような心もとない布陣で難局を乗り越えられるとは考えにくい。
喫緊では、中国1の不動産ディベロッパー、碧桂園HD(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が、2022年上半期、前年比96%利益減、不動産販売数は、前年と比べて3分の1も減った(d)。
同年11月15日、碧桂園は、新株発行で約39億香港ドル(約700億円)を調達すると発表(e)した(1株当たり2.68香港ドルで14億6000万株を発行)。そのため、同社の香港上場株は223%急騰している。
更に、その後、碧桂園は最大500億元(70億米ドル)の与信枠について、中国郵政儲蓄銀行(国営の中国郵政集団有限公司傘下)と契約を結んだ(f)。
北京としても、事実上、ほぼ破綻した中国恒大集団(業界ナンバー2)とは異なり、業界トップの碧桂園を簡単には潰せない。同社の破綻がバブル崩壊の引き金となり、ひいては中国経済壊滅につながりかねないからである。
〔注〕
(a)『DW』
「ドイツ語メディア:全体主義の限界」
(2022年12月8日付)
(b)『KSB5ch』
「ゼロコロナ緩和で医学生ら抗議 感染時の補償求め」
(2022年12月12日付)
(https://news.ksb.co.jp/ann/article/14790531)。
(c)『ビジネス・インサイダー』
「中国での歴史的な抗議行動は始まりに過ぎない。習近平が経済を立て直さない限り、彼の抱える問題は悪化の一途をたどるだろう」
(2022年12月1日付)
(https://www.yahoo.com/now/xis-first-real-test-stumbling-110700619.html)。
(d)『(中文版)ウォール・ストリート・ジャーナル』
「碧桂園HD、上半期の利益が大幅減、中国の不動産市場は冬に突入と称される」
(2022年8月31日付)
(e)『ブルームバーグ』
「中国不動産開発の碧桂園、700億円調達へ-今月に入り株価223%高」
(2022年11月15日付)
(https://news.yahoo.co.jp/articles/65f73b21fcb7a64b3c101875a880738c16c3bd2b)。
(f)『ロイター』
「中国不動産の碧桂園、最大70億ドルの与信枠確保=証券時報」
(2022年11月24日付)
(https://jp.reuters.com/article/china-property-countrygarden-idJPKBN2SE071)。
トップ写真:Daily Life In China’s Evergrande Community
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この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長
1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。