一人で抱え込まないで「新入社員に贈る言葉」その1
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・コロナ禍で人との付き合いが薄いまま社会に出る新人諸君。
・いきなり濃密な年上との付き合いに放り込まれストレスもあろう。
・自分一人で解決しようとせず、身の回りの信頼できる人に相談するのも手だ。
街にリクルートスーツそのままの若者があふれる季節になった。年が明けて早くも4月になったわけだ。
毎年というわけではないが、新しく社会に出る人達に先輩としてメッセージを送っている。年寄りの繰り言と思って聞き流してほしい。
私が現役だった2013年当時と比べ、職場の環境はかなり変わったと思う。パワハラが当たり前の様に横行していた時代はもう、ない。
コロナ禍以降は、リモートワークが当たり前になった。10年前には考えられなかったことだ。それはそれで良かったと思う。多様な働き方があってしかるべきだし、毎日ラッシュアワーの電車に揺られ、同じ時間に職場に行く必要もないと皆が悟った3年間だった。
一方で、やはり顔をつきあわせて議論しないとしっくりこないよね、という意見も出てきた。ワイガヤをやっているとアイデアができたりするということを再認識したわけだ。それはそれで1つの収穫だろう。
とにかく、オンラインかオフラインか、という二者択一ではなく、ハイブリッドでやれば良いだけの話なのだ。
で、新人諸君に向けての話になるのだが、大学時代のほとんどをコロナ禍の真っ最中に過ごし、本来濃密な人との接触を否が応でも堪能するはずの大学生活が妙に淡泊になったまま社会に出るのが君たちだと思う。ある意味、放置プレーに浸っていたわけだが、それが真逆の世界になるわけだ。
いきなり会社という組織に入り、9時5時の生活を強いられる。同世代は同期のみ。後は年上ばかりという環境。大学生時代の友達同士とつるんでいた時の様に、同じような価値観の人ばかりではない。いや、むしろ、全く違う考え方の人ばかり、と感じるかもしれない。これはかなりのストレスだと思う。
昔のビジネスパーソンは帰りに焼き鳥屋に行き、愚痴を言ったりしてストレスを解消したが、最近アルコールをたしなむ人も激減しているようだし、そもそも人付き合いが煩わしい、ということもあろう。(新人歓迎会など、出たくない人には同情申し上げる)
となると、いきおい1人になっていろいろ自分の中に溜まることになる。
「物言わぬは腹ふくるるわざなり」と、古来から言うように、たまには思ったことを口に出す方がいいと思う。
人間、1人で悩んでいても解決できるものは少ない。にっちもさっちも行かなくなる前に、信頼出来る人に相談することをお勧めする。世の中にはその道のプロがいる。そういう人の力を借りるのだ。それが、リスクを減らすことになる。
まとめると、1人で悩まないで、煮詰まる前に身の回りの頼れそうな人にとりあえず話をしてみることだ。
人を頼ることは決して恥ずかしいことではない。他人の知恵を利用するくらいの気持ちでいたらいい。
あなたたちの可能性は無限大だ。その可能性を生かすも殺すも自分次第。他人の知恵を自分のものとして、自由な発想でやりたいことを実現していって欲しい。
社会のつまらないプレッシャーで自分を潰さないようにしてもらいたい。
もう一つ。助けを必要としていると思う人が身近にいたら、ためらわず声をかけて欲しい。お節介はしたくない。他人は他人。そんな気持ちがあるかもしれない。でも、後で後悔しないために、少しは周りの人に気をかけてもらいたい。君たちだったらそれができるはずだ。他人の痛みが分かる世代だと思うからだ。
これをみんなに伝えたくて、筆を取った。
トップ写真:イメージ 出典:BLOOM image/GettyImages
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。