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.社会  投稿日:2023/4/11

得意分野を持とう「新入社員に贈る言葉」その9


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・新人は皆、横一線、どんぐりの背比べだ。

・評価される人は見えないところで努力し得意分野を磨いている。

・焦らず一歩一歩、好きなことを磨いて得意分野を手にして欲しい。

 

「今、あなたは同期のみんなと比べ、どんな能力で勝ってますか?」

そう聞かれたらみなさんは何と答えますか?

「特にないなぁ・・・」と思う人もいるかもしれないし、「私はこの分野では誰にも負けないな」と思っている人もいるかもしれない。

だが、最初は横一線。いま、みなさんはスタート地点に立ったばかりだ。

中には突出した能力の持ち主が紛れ込んでいるかもしれない。が、そんな人は稀だ。私の経験だと、何年かに一人、逸材が入社してくることがあるが、ほとんどはどんぐりの背比べだ。だから心配することはない。

ただその後、同期でもどんどん差が開いてくるのはなぜなのか。「上司にひいきされたからだろう」、とか、「たまたま仕事で成果を出したのが評価されただけだよ」、とか、口さがない外野は色々言うと思う。前に言ったように「嫉妬」のなせるわざだ。

たしかに、そうした要因はなくはない。しかし、評価されて昇進していく人の共通点は、見えないところで努力して、人にはない能力を磨いている、ということだ。

人に仕事を頼むとき、より高い品質の結果を生み出してくれる人に頼むのはあたりまえだ。組織の生産性が上がるからだ。当然のことながら、次の仕事もその人が担当することになる。

仕事を任せられるようになるためには、他の人にない能力を身につけることだ。語学でもいい。経理財務の知識でもいい。人脈の広さでもいい。プログラミングの能力でもいい。とにかく、人より秀でたものがあるといい。

最初は横一線かもしれない。しかし普段から能力を磨いていれば、チャンスをものにすることが出来るのだ。

「口で言うのは簡単さ」

そう思うかもしれない。

でも、そうだろうか?

筋トレや趣味を考えてみたらどうだろう。コツコツやっていれば、結果が必ず付いてくるだろう。

仕事もそれと同じだ。学びはいたるところにある。それに気づき、ものにする。そうすることで基礎体力が付き、次第に応用動作ができるようになるのだ。

人はなまけるものだ。だれだって楽な方がいい。でも人生は長距離走。日々一歩一歩進む者が勝つ。そういう人だけが、得意分野を手にすることができるのだ。

なぜそんなに得意分野にこだわるのか。それは、組織を離れたときに、我が身を救うからだ。自分に人に負けない能力が備わっていれば、それで飯を食う事ができる確率がぐんと高くなる。そういう能力を持っているのといないのとでは、組織で仕事をするときの心構えも変わってこよう。

筆者の場合、学生時代から得意分野にしようと思ったのは語学だ。海外で仕事するのが夢だった。だから中学生の時から英語をコツコツやってきた。社会人になってからも英会話のレッスンだけはかかしたことがない。それでも大して上達せず、心底才能がないなと自信を失った時期もあったが、この年になるまで続けている。あるときからそんなに苦手意識を持たずに話せるようになった。

フランス語とスペイン語もほそぼそと続けているが、英語同様、いつかは同じレベルで話せるようになると夢見ている。

この語学のおかげで、外国人相手の仕事も頼まれるようになった。途中で諦めていたらどうなっていただろうか?

これは筆者の継続してきたことのほんの一例だ。あなたが継続してきたものの中に、きっと「競争力」の源泉となるものがあるはずだ。

もちろん、今この時点で得意分野がなんだか分からなくてもいい。がっかりすることも、諦める必要も無い。まだまだ時間はある。これから身につければいいのだ。20年後、私が言っている意味がわかるだろう。

継続するとき大事なのは「自分の好きなこと」を選ぶことだ。「好きこそものの上手なれ」、とはよく言ったものだ。

みなさんには、自分の「好きなこと」を「得意分野」に育てていって欲しい。

そう、新人の諸君には言いたい。

トップ写真:イメージ 出典:Chinnapong/GettyImages




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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