<東京ガスCM打ち切りから>就活生に言いたいことは「働き方は一つではない」ということ 親には「あなたの子供はあなたが思っているほど子供ではない」と言いたい
Japan In-Depth編集部
あるCMの打ち切りが波紋を呼んでいる。
東京ガスのリアルなCMシリーズ、「家族の絆・母からのエール」編がそれだ。女子学生がいくら頑張っても企業からお断りのメールが届き、ようやく最終面接までこぎ着けた会社にも落ちる。家に帰れず公園でブランコに乗る彼女の背中を、いつしか探しに来た母にそっと押されて号泣する。その後一緒に夕飯を食べ、翌日また心を新たに家を出る、といった内容だ。
一般的には、感動CMに部類するもので、これを見て「なんでこのCMを打ち切りにしなくてはいけないのか?」と疑問に思った人は少なくないはずだ。打ち切りの要因は「リアルすぎる描写」。就活中の学生たちへの心情に配慮して、ということらしい。就職活動とは、人生最大の選択の一つであり、いつの時代でもナイーブなものだ。
ここで就活生とその親にメッセージがある。Japan In-Depth編集部には学生としてアシスタントのお手伝いをしている人や、仕事をしながらライター見習いをしている人が数名いる。皆、メディアの仕事がしたいからだ。一旦企業に入っても、自分の意にそぐわない仕事に従事して、ある時ふとこのままでいいのだろうか、と思い悩む人は意外と多い。
そういう場合、通常は転職を考えるのだろうが、辞めたほうがいい場合と辞めなくてもいい場合がある。前者は、仕事のせいで体調が悪くなるほど重症なケース、後者は、仕事は嫌いではないので続けたいが、自分のやりたい仕事とは違うのでもやもやしている、というケースだ。学生時代の夢をまだ持ち続けているケースともいえよう。
前者は、身体を壊すくらいだから、そもそも過剰労働なのかもしれないし、仕事そのものが合わないということもあろう。違いはあれど、無理してその会社に居続けると、より重篤な状態になりかねない。そういう時は休職したり、転職を考えるべきだろう。
親も「甘えているんじゃないか」とか「石のうえにも3年だ」とか、叱咤激励ばかり続けるのではなく、子供の話を真剣に聞き、どのような職場環境なのか把握に努めるべきだ。そのうえで適切なアドバイスをしてあげてほしい。頑張りすぎて体を壊すケースは意外と多い。
一方、今の仕事は継続したいが、やりたいことは別にあるという人は、プロボノ(注)としてその仕事をする、という選択肢がある。例えば、Japan In-Depthで仕事をしている人の中には、仕事をしながら就業時間外や休日に取材をし、記事を書いている人がいる。又、産休だが、自宅で記事を書いたり、校正をしたりしている人もいる。
要は、本当にやりたいことがあるのなら、やりようはいくらでもある、ということだ。自分のやる気次第で、いくらでもやりたいことは実現できる。社会がそう変わってきているし、兼業、副業を認める会社も増えてきている。一度人事部に相談してみたらいい。会社は、就業時間外の活動まで禁止することは出来ない。仕事の内容によっては認められるケースもあるという。
パラレル・キャリアという概念も少しずつ広まってきている。自分の会社の仕事だけではなく、異なる仕事をすることで様々な分野の人と知り合い、それがまた本業にも好影響を及ぼす、ということだ。外資の中には、年間就業時間の1%をプロボノに充てなくてはいけないところもある。
いずれにしても、就活生に言いたいことは、働き方は一つではない、ということだ。どこに入るかは実はあまり大した問題ではない。大事なのは、自分が何をしたいのか、である。自分の道は自分でいくらでも切り開ける、と言いたい。
就活生の親には、自分の価値観で会社選びに過剰に介入し、価値観を押し付けないで、と言いたい。子供を信じてほしい。あなたの子供はあなた方が思っているほど子供ではない。
(注)プロボノ:ラテン語の「公共善のために(Pro Bono Publico)」から来ている言葉。専門的な知識を活かして他の企業やNPOなどの仕事を手伝うこと。
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