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.国際  投稿日:2023/9/23

米欧でなお語られる安倍晋三氏の実績


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

ハドソン研究所「ヨーロッパとインド太平洋の進化する関係」と題するシンポジウムを開催。

・EU議会メイデル氏「EUー日関係は安倍晋三氏が首相だった時代が最高だった」と述べた。

・欧州とアメリカの両方の関係者から安倍氏への高い評価が表明された。

 

安倍晋三氏の死から1年2ヵ月余り、だが同氏の業績がいまなお期せずして、アメリカ側とヨーロッパ側の代表によって前向きに語られた。アメリカの首都ワシントンでの国際シンポジウムでだった。安倍氏の国際的な評価はやはり本当に高かったということだろう。 

ワシントンの大手シンクタンクのハドソン研究所は9月22日、「ヨーロッパとインド太平洋の進化する関係」と題するシンポジウムを開いた。基調報告者は欧州連合(EU)の議会のメンバーで、対日関係部長代行をも務めるエバ・メイデル氏だった。同氏は本来はブルガリアの女性国会議員だったが、その後、ブルガリアの代表として欧州議会の一員となるという経歴だった。

▲写真 EU議会 対日関係部長代行 エバ・メイデル氏 出典:Photo by Thierry Monasse/Getty Images

そのメイデル氏が欧州連合とアジア太平洋、とくに日本との関係をここ10数年もさかのぼって報告したの対して、ハドソン研究所の日本部長のケネス・ワインシュタイン氏が論評するという展開だった。

ところがメイデル氏は報告の総括部分で「EUと日本との関係は安倍晋三氏が首相だった時代が最高で、その時期は黄金時代とも呼べた」と述べ、安倍首相のEUとの関係構築の成果を礼賛した。

この言葉に対してハドソン研究所の前所長だったワインシュタイン氏も同調する形で「安倍首相の業績は確かにすばらしかった」と語り、ついでに「昨日の9月21日は安倍氏の誕生日で、彼が生存していれば、本日は69歳となっていた」と述懐した。

この種の国際関係やその関連政策を論議する集いで、特定人物の誕生日にまで言及するというのはやや奇異だが、ワインシュタイン氏はかつてハドソン研究所の所長を務め、安倍政権下の日本政府との交流も深く、とくに安倍氏自身とも親交があった。

ワインシュタイン氏はそのうえ、トランプ大統領によって日本駐在大使に任命されたが、トランプ氏が選挙で敗れたため、その人事は実現しなかった、という日本との特別の絆もあった。

▲写真 ハドソン研究所前所長 ケネス・ワインシュタイン氏 出典:ハドソン研究所

ハドソン研究所は共和党寄りの保守系の研究機関だが、ワインシュタイン氏やその当時、副所長だったルイス・リビー氏(第二次ブッシュ政権の大統領補佐官や副大統領首席補佐官を歴任)が安倍氏との交流を保ち、とくに安倍氏が初回の首相職を辞任して、在野となった時期に同氏を支援した。安倍氏の側もハドソン研究所の政治や外交の志向に共鳴を示す形でリビー氏やワインシュタイン氏との親交を深めていた。

だからワインシュタイン氏が安倍氏の死後1年余りが過ぎたこの時期でもその業績を賞賛し、誕生日にまで言及することにはそれなりの由来があるともいえる。しかしそれにしてもEUを代表したメイデル氏の安倍氏に関する言葉は自然にその安倍氏のEU政策での実績を高く評価した客観的な指摘だといえる。

だから欧州とアメリカの両方の関係者から安倍氏への高い評価が表明されたことになる。安倍氏の外交にはそれだけの実績があったことが期せずして、米欧の代表から認められた、ともいえよう。

トップ写真:安倍晋三元首相の一周忌法要(2023年7月8日東京・港区、増上寺)出典:Photo by Takashi Aoyama/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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