[宮家邦彦]<日本への注目は政治でも経済でもない?>CNNに久しぶりに取り上げられた日本のニュースは台風8号[外交・安保カレンダー(2014年7月7-13日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週はCNNのアジア向けニュースで久し振りに日本が大きく取り上げられたが、その理由は巨大で強力なタイフーン「Neoguri」、日本では台風8号と呼ぶ気象現象だった。
注目が政治で経済でもなく、台風だということを喜ぶべきか、悲しむべきかは、意見の分かれるところだろう。少なくとも日本が平和であることだけは間違いない。
その点で今週最も気になるのは西岸・ガザの状況だ。日本ではあまり大きく報じられないが、今イスラエル・パレスチナ間で再び緊張が高まっている。6月に3人の十代イスラエル人少年が誘拐・殺害された。この事件に対する報復として、今度はパレスチナ人の若者が殺害され、イスラエル人の容疑者が複数逮捕されたからだ。
既にイスラエル軍とハマス間の戦闘は増々激化している。事実関係を確認できないので推測するしかないが、欧米での報道を見る限り、誘拐・殺害されたイスラエル人の若者は3人とも正統派もしくは超正統派の保守的なユダヤ教徒、恐らく入植者たちの子供だろう。起こるべくして起きた事件、と呼ぶのは言い過ぎだろうか。
過去10年ほどの間にイスラエル・パレスチナ地域で起きた最も大きな変化は西岸で増殖する「ウルトラ・オーソドックス」の入植活動だ。勿論彼らの入植は昔からだが、大家族主義の彼らの活動は最近特に目立つ。パレスチナ人の報復を正当化する気は毛頭ないが、全ての結果には必ず原因がある。ガザでは当面戦闘が続くだろう。
中東といえばイラクもシリアも泥沼が続き状況改善の兆しはないが、そんな中、安倍首相は豪州などオセアニア三国を訪問している。アボット豪首相は日本に対する理解も深く、良い結果が期待できるだろう。
東アジア情勢が今のままであれば、近い将来「日豪安全保障条約」といったアイディアも決して絵空事ではなくなるかもしれない。日本の安全保障が日米安保だけという時代はもう終わっていると見るべきである。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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