「高岡発ニッポン再興」その112 カラス対策と「坂本龍馬」構想
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・カラス捕獲業務を通年で徹底して行うなら、債務負担行為をすればいい。
・「こんなもんだ」という固定観念に縛られていると、組織は変革できない。
・明治維新も「もんだ族」を打ち破ったからこそ実現した。
高岡市議会議員の仕事は、当局の動きをチェックし、提言し続ける
ことです。以前、このコーナーでもお伝えした、カラス対策。高岡市は来年度から、通年で切れ目なく、捕獲業務を実施することになりました。これまで空白期間が3か月あったのですが、私の要望を取り入れ、軌道修正した格好です。
何度もお伝えしていますが、カラス対策の要は、捕獲用の檻です。「365日24時間」檻におとりのカラスと餌を置き続けなければなりません。個体数の減少が大事なのです。しかし、高岡市ではこれまで3月から5月まで捕獲業務をやっていませんでした。その時期は繁殖期です。捕獲に一番重要な時期なのに、ナゼと私は思い、当局に質問しました。
理由が2つありました。1つは、5月末に愛鳥週間があるからです。そしてもう1つの理由は、予算の仕組みが影響しているというのです。予算というのは、3月末で当該年度が終わります。4月以降は、新年度の予算となります。新年度予算が3月定例会で成立し、その後、業者を入札する。そのため、時間がかかって6月以降になるというのです。
それでは役所のすべての事業が、年度をまたいで継続できなくなります。こうした事態を回避する仕組みがあります。債務負担行為と呼ばれるものです。
カラスの捕獲業務を徹底するならば、365日、24時間餌とおとりを入れておくべきなのです。債務負担行為をすればいいのです。
私は何度も訴えかけ、今回、市は動くことになりました。12月定例会で、カラス対策の債務負担行為を盛り込んだ補正予算案を提出するのです。高岡市の対応には、感謝しています。
しかし、同時に複雑な気持ちになりました。なぜ、こんな当たり前のことがこれまで実施されていなかったのでしょうか。
ふと思い出したのは、「もんだ族」という言葉です。「〇〇の仕事はこんなもんだ」と考える人のことを指します。カラス捕獲業務に空白期間があるが、「こんなもんだ」と考えていたのではないでしょうか。
「もんだ族」という言葉は、元三重県知事の北川正恭さんがよく使っていますが、「こんなもんだ」という、固定観念に縛られていると、組織は変革できないのです。役所の仕事は、前例踏襲と縦割りが特色なので、「もんだ族」はどこにでもいるそうです。
歴史を振り返れば、明治維新も「もんだ族」を打ち破ったからこそ実現しました。薩摩藩と長州藩は仲が悪い「もんだ」という考え方がありましたが、坂本龍馬が仲介し、薩長同盟が結ばれたのです。
私にとって残る任期は2年です。さまざまな事業をチェックし、一つ一つ課題を克服していくのが任務です。高岡市役所の職員がそれぞれの分野で、「もんだ族」から脱皮し、「坂本龍馬」になって欲しいと、私は思っています。
あわせて読みたい
この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家
1964年富山県高岡市生まれ。
富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。
テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。
その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。
21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。
同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。
同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。