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.国際  投稿日:2023/12/30

モルディブ新大統領、親中国路線に転換


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・2023年11月、モルディブ大統領に就任したモハメド・ムイズが「水文協定」破棄の姿勢。

・”水路調査作業は全てモルディブの管理下に置くべき”との声、背景にはインド洋進出を狙う中国の存在。

・ムイズ政権は「大マレ連携プロジェクト」については意欲的。

 

サンスクリット語で「島々の花輪」といわれるモルディブで、2023年11月に就任したモハメド・ムイズ大統領が、前職のイブラヒム・モハメド・ソーリフ大統領がインドとの間で結んだ「水文協定」の破棄に乗り出し波紋を呼んでいる。

モルディブは南北約950km、東西160kmのインド南西にある島嶼国。大小26の環礁、1,192の島々で構成される。有人島は約200で、国土総面積は東京23区の半分弱に当たる298平方km、海岸線の総延長は644km。標高は海抜1.8~2.0mと低く、有人島の海岸管理の難しさが指摘されている。

タイムズ・オブ・インディア紙2023年12月15日付によると、新政権内で、インドのナレンドラ・モディ首相が2019年6月にモルディブを訪問した際に結んだインド海軍とモルディブ国軍との水路調査協定を問題視し、‶水路調査作業は全てモルディブの管理下に置くべき〟との声が高まってきたという。

こうした動きの背後に、インド洋進出に意欲的な中国の存在があるのではないかとの見方がインドにあるようだが、モルディブ側は否定している。

モディ首相とムイズ大統領は、アラブ首長国連邦(UAE=ドバイ)で先月末から今月中旬に開かれた国連の気候変動枠組条約第28回締約国会議の折に会談。ムイズ大統領は、インドが供与した同国海軍保有のヘリコプターや独ドルにエ社製飛行艇に関するインド側の関与について釘を刺したと報道されている。

モルディブはまた、スリランカのコロンボで最近開かれたインド洋諸国の国家安全保障最高顧問レベルの協議に参加しなかったことが中国寄りの証左との見方があることに、‶単なる行政上の手続き問題〟と応じている。

モルディブの現政権はまた、橋梁でつながれているマレ島とルマレ島には総人口50万人強の3分の1が住んでおり、このマレ首都圏の災害リスクを懸念している。

ムイズ政権は「水文協定」破棄の姿勢を示す一方で、総事業費5億ドルとされるインドの「大マレ連携プロジェクト」については前向きとされる。

日本の外務省資料によると、約2000年前にスリランカや南インドからモルディブに移住した住民は仏教の影響下にあったが、1153年にイスラム教に改宗。その後、イスラム国家の君主であるスルタンが治めてきたが、16世紀にポルトガル、17世紀にオランダの支配下におかれた。1887年には英国の保護領となり、スリランカのコロンボにあった総督府から間接的に支配された。1965年7月26日に主権国家として独立し、国連に加盟。1968年にはスルタンによる世襲王政を廃止して共和国となった。

日本は1985年以来、モルディブの最大2国間援助国。2004年12月のインド洋津波時には、日本の援助で建設したマレ島の防波堤が津波による被害を防止したとして感謝されている。

(敬称略)

トップ写真:イブラヒム・モハメド・ソーリフ前大統領とファズナ・アーメド夫人(イギリス・ロンドン 2022年9月18日)出典:WPA Pool / GettyImages




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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