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.国際  投稿日:2025/2/28

インド2025年度予算案発表 成長と改革への道筋


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・インド政府の歳出総額は前年度比7.4%増の約91兆円、財政赤字はGDP比4.4%に縮小する見込み。

・2025年度予算案で注力する分野は農業、零細・中小企業対策、重点投資分野、輸出促進

・税制改正案では個人所得税の減税、税制優遇措置などが盛り込まれた。

 

■ インド政府、2025年度予算案を発表

インド政府は2025年2月1日、2025年度(2025年4月~2026年3月)の国家予算案を発表した。日本貿易振興機構(ジェトロ)資料によると、歳出総額は今年度修正予算比7.4%増の50兆6,535億ルピー(1ルピー=約1.8円換算で約91兆1,763億円)で、公債などの借り入れを除く税収などの歳入総額は34兆2,041億ルピー(同10.8%)となった(表1,表2参照)。財政赤字はGNP比で4.4%となる見込みで、今年度の修正予算における財政赤字見込み4.8%から縮小している。

出所)インド財務省発表資料を基にジェトロ作成

出所)インド財務省発表資料を基にジェトロ作成

 

■ 予算案での重点分野

インド政府が2025年度予算案で力を入れている分野は、農業、零細・中小企業対策、重点投資分野、輸出促進の四つ。

4分野の具体的な内容は以下の通りだ。

  1. 農業分野に対する予算額は今年度比21.7%増となり、生産性の向上など技術開発や農村部の雇用機会創出に向けた事業を実施する。
  2. 零細・中小企業分野については、事業拡大や技術の向上に向け、投資額と売上額の上限を2.5倍、2倍に引き上げる。また、成長促進に向けた信用保証枠を拡大する。
  3. 重点投資分野に関しては、人材、特に若者のスキルアップに向けた教育施設を設けるほか、インフラ向けなどで各州への無利子の融資枠を設定する。
  4. 商工省、中小零細企業省、財務省が所管を超え、共同で輸出促進ミッションを発足させる。

 

■ 税制改正案なども発表

予算案の発表に合わせ、税制規制案も発表され、個人所得税の累進課税区分や税率の見直しによる負担軽減、半導体など電子機器製造業を支援する非居住者に対する減税、インド国内製造に必要な原材料の輸入関税率の修正ないし撤廃なども明らかにされた。

個人所得税に関しては、非課税対象枠が年70万ルピーから120万ルピーに引き上げられると同時に課税区分も見直されたことで、すべての個人に減税の恩恵があるとしている。その背景には、2025年1月に発表された2024年度GDP成長率推計が6.4%となり、2023年度の8.2%に比べ落ち込みが見られそうなことを反映し、中間層の可処分所得を増やして消費促進を図ろうとする狙いがあるようだ。

 

トップ写真)インド・カシミール州 2025年1月26日

出典)Yawar Nazir/ Getty Images

 




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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