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.国際  投稿日:2024/6/28

同床異夢の朝露新条約、危険な金正恩の「誤信」(下)


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・好戦的な金正恩が、ロシアの「後ろ盾」ができたと信じ暴走する可能性。

・長期的視点から見れば、ロシアと北朝鮮の蜜月は不透明。

・「いつまでも続くと思うなロシアとの約束」ということだ。

 

 

 

 

 危険な露朝蜜月、だが長期持続は不透明

 

 2つのアウトロー国家が軍事協力条約を結んだのは、価値観の共通性や政治経済システムの共通性に基づいたものではない。ロシアのウクライナ侵略がもたらした当面の利害一致の産物だ。すなわち今回の条約は「侵略戦争の落し子」とも言える。

 

 そういった意味で「新露朝条約」は当面、世界の平和にとって新たな危険要素となったことは間違いない。特に世間知らずで好戦的な金正恩だ。今回の条約締結でロシアの「後ろ盾」ができたと信じ込んで暴走する可能性を否定することはできない。祖父の金日成ですら1961年の「朝ソ友好協力相互援助条約」を信じて韓国に武装テロ集団を送り、当時の朴正熙大統領を暗殺しようとした。

 

 朝ロの新条約締結で、短期的には東アジアに戦争危機が高まったと言える。しかし北朝鮮、ロシアに対する抑止力がしっかりとしていれば、この二国の暴走を抑え込むことは可能だ。1953年以降、朝鮮半島で戦争を防いできたことがそれを証明している。

 

 しかし長期的視点から見れば、ロシアと北朝鮮の蜜月は不透明だ。いつまでも続くという保障はない。今回プーチンと金正恩が手を握った背景はウクライナ侵略での利害一致であるだけに、プーチンの侵略戦争が挫折を迎え、ロシアを取り巻く世界環境が変化すれば、二国間にどのような変化が現れるかわからない。過去の朝ロ条約同様、効力が停止されるか形骸化される可能性は十分にある。それはこれまでのロシア(ソ連)と北朝鮮の関係史の中で明確に示されている。

 

 ロシア(ソ連)の常習的裏切り行為

 

 今回、プーチンは 、労働新聞(2024.6.18)一面への寄稿文の中で、「ロシアは、昨日も明日も、狡猾で危険であり侵略的な敵との対決において、自主と独創性、発展の道を自ら選択する権利を守る闘いにおいて、朝鮮民主主義人民共和国と英雄的な朝鮮人民を支持したし、今後も変わることなく支持するであろう」と記したが、真っ赤な嘘である。

それは過去のわずかな事例だけ見ても明らかだ。

 

・ソ連は北朝鮮の必死の説得を無視してソウル五輪ボイコットに同調しなかった。ソ連陣営で参加しなかったのはキューバなどわずかな国だけだった。

・ソ連は1990年9月30日に北朝鮮の反対を押し切って韓国と国交を樹立した。これは事前協議を義務付けていた1961年の「朝ソ友好協力相互援助条約」を踏みにじるものだった。これで北朝鮮は金日成があれだけ反対していた韓国との国連同時加盟に踏み切らざるを得なくなった。

・「朝ソ友好協力相互援助条約」は1991年に延長が停止され96年には失効した。

・プーチン時代のロシアでも裏切りは続いた。彼が初めて訪朝した2000年に「友好善隣協調条約」が結ばれたが、「締約一方は、締約相手方の主権、独立及び領土保全に反するいかなる行動、措置も取らない」との条項は残されていた。しかし、プーチンのロシアは2006年から2017年まで北朝鮮を制裁する国連安保理決議に賛同した。

 

 ロシア(ソ連)の裏切り行為は数えればきりがない。ロシアは都合が悪くなれば国連決議さえも平然と無視するアウトロー国である。北朝鮮との蜜月が続く保障はどこにもない。

 

 一方北朝鮮も、休戦協定や韓国との協定、そして日本・諸外国との約束だけでなく、在日朝鮮人との契約も平然と踏みにじってきた国だ。ソ連・韓国・日本からの借金もすべて踏み倒している。そればかりか、何よりも国連に加盟しながら、自国に都合の悪い国連決議はことごとく踏みにじっている。

 

*         *          *

 

 今回の「朝ロ包括的戦略パートナーシップ条約」で「戦争状態なら直ちに軍事援助を提供する」ことが盛り込まれたが、すべての法的文書は、力関係によって履行の程度が決まる。条約文の成立とその遵守履行は別物だ。

 

 1968年のプエブロ号拉致事件当時、金日成は、ソ連との同盟条約を信じて米国に対して「報復には報復を、全面戦争には全面戦争で」と大言壮語したが、ソ連の外交官らは朝鮮半島で戦争が勃発するならばソ連に参戦する義務はないという根拠を探したという。外交官らはこの危機が北朝鮮の一方的行動のために起きたことを強調するならば危機に巻き込まれるのを回避できるという案を上部に報告した(アンドレイ・ランコフ)とのことだ。「いつまでも続くと思うなロシアとの約束」ということだろう。

 

(終わり。上はこちら)

トップ写真:プーチン大統領が訪朝し金正恩に歓迎される様子      

出典:Photo by Vladimir Smirnov, TASS/ President of Russia




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