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.経済  投稿日:2024/10/2

都心超高層ビルに出現 総合ウェルビーイング施設「CARAPPO」の目指すもの 


Japan In-depth編集部(秋山彩葉、梶谷友花)

【まとめ】

 

・コロナ禍から回復しつつある日本のフィットネス市場、24年度には7,000億円に達する見込み。

・新たに開業した「CARAPPO虎ノ門ヒルズ」は、トレーニングやメディテーション、独自のウェルビーイング体験を提供する。

・手頃な価格で、若い世代のビジネスパーソンのパフォーマンス向上を目指す。

 

コロナ禍で需要が落ち込んだ日本のフィットネス市場。しかし、コロナが5類に移行して回復の兆しが見られる。帝国データバンクの調査によると、23年度のフィットネス市場は6,500億円、24年度は7,000億円に到達する見込みだ。これは、過去最高だった19年度(7085億円)の9割前後にあたる高水準である。

 

 

図)「フィットネス」市場推移

出典)帝国データバンク

 

 

一方、客単価(1人あたり年間消費額)については、令和4年の98,081円に対し、令和5年は87,645円となり、10.6%の減少となった。これらの背景には、「chocoZAP」などといった低価格・小規模展開のジムの台頭が考えられる。

 

■ 価格競争激化の中で、CARAPPOの優位性とは

 

フィットネス市場における価格競争が激化する中、東京港区虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 5F に 2,000 ㎡(約600坪)を超える総合ウェルビーイング施設「CARAPPO(カラッポ)虎ノ門ヒルズ」が 10月1 日に開業した。

 

東急不動産株式会社が事業主となり、株式会社スポーツオアシスが運営を手掛ける。

 

CARAPPO 虎ノ門ヒルズは“Reset for Creative Life”というコンセプトのもと、『トレーニング、サウナ、メディテーション(瞑想)』を体験できる。最新かつ最先端の設備(テクノジム社製)を揃えたトレーニングジムや、3種類のサウナ、専門家が監修したマインドフルネスプログラムやヨガプログラムを体験することができる。

 

写真)CARAPPOのマシーンエリア

ⓒCARAPO

CARAPPOが位置する虎ノ門ヒルズ ステーションタワーは、地上49階、地下4階、高さ約266m、多用途複合の超高層タワーで、「国際新都心・グローバルビジネスセンター」形成に向けて、拡大・進化を続けてきた「虎ノ門ヒルズ」の中心にある。地下には東京メトロ日比谷線の虎ノ門

 

写真)虎ノ門ヒルズステーションタワー

ⓒJapan In-depth編集部

 

 

■ 超高層オフィスビル内に進出した背景

 

都心のど真ん中である虎ノ門ヒルズステーションタワー内に開業した全く新しいウェルネス施設、CARAPPO。

 

株式会社スポーツオアシスにとって、既存ブランドで開業するのか、全く新しいブランドで立ち上げるのか、社内で議論があったという。結果は後者。同社にとって大きなチャレンジだった。

 

CARAPPOマネージャーの岩本孝士氏は、「一から世界観を作りました」と語る。たしかにエントランスからしていわゆるスポーツジムとは一線を画す。まるでホテルかシェアオフィスのエントランスのようなのだ。

 

写真)CARAPPOフロントデスク

ⒸJapan In-depth編集部

 

「オンタイムを過ごすビジネス街の中で唯一のオフ空間にしたい。完全に心をリセットできて自分のパフォーマンスを取り戻せるような、そういうエネルギーの価値を作りたいと思いました」。

 

岩本氏はCARAPPOというブランドの開発意図をそう説明した。ロゴの左右に隙間が空いているのは、「(施設の)中に入り、一旦空っぽになり、そして外に出ていく」という一連の流れを象徴しているという。

 

写真)CARAPPO マネージャー岩本孝士氏

ⓒJapan In-depth編集部

 

写真)フロント前の岩のオブジェ 手前は原石のまま。右半分は磨きをかけている。CARAPPOの世界観を表している。

ⒸJapan In-depth編集部

 

■ CARAPPOの特色

 

施設の特色を知るため、編集部スタッフが2つのプログラムを体験した。

 

1つは、数十秒間の強い負荷の運動と短時間の休憩や負荷を落とした運動を繰り返す「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」だ。具体的には、腿、お尻、腹筋を中心とした30秒程の運動とインターバルを組み合わせた高負荷のトレーニングプログラムである。

 

10代まで部活でやっていた運動だが、ここ何年かは遠ざかっていたのでどうなることやら心配だったが、意を決してトライしてみた。

 

実際に体験してみると、足やお尻の筋肉、腹筋といった大きな筋肉を使うエクササイズが多く、一つ一つのトレーニングで息があがるほどの負荷がかかるプログラムだった。

 

写真)ランニングマシーンで全力疾走するスタッフ

ⓒJapan In-depth編集部

 

写真)ブルガリアンスクワットを行うスタッフ

ⓒJapan In-depth編集部

 

二の腕に装着した心拍モニターが感知した数値がパネルに表示されるため、自分の体にどのくらい負荷がかかっているかや、自分があとどのくらい追い込めばいいかが可視化され、初心者でも取り組みやすいシステムだった。25分間程のトレーニングプログラムだったが、終了後には体の芯から熱を感じ、心身ともにリフレッシュできた。

 

写真)壁に表示されるエクササイズをしている各人の運動量や消費カロリーを表示する画面。

ⒸJapan In-depth編集部

 

HIITの後、メディテーション(瞑想)も体験した。専用の部屋に入ると、天井に映し出された映像や照明、ゆったりとしたサウンドが幻想的な雰囲気を醸しており、自然と心を落ち着かせることができた。また、ひんやりと冷たいコンクリートの床は、運動後の火照った体を冷まし、心身ともにリラックスさせてくれた。マインドフルネス専門トレーナーの手引きで、自身の体や呼吸に感覚を向け「今」に集中する時間は、日々の喧騒から離れ、無の世界に向かうような不思議な体験だった。岩本氏によると、リピーターも多いという。

 

写真)メディテーションスタジオ(「Void」)

出典)株式会社スポーツオアシス

 

■ 都市型ウェルビーイング施設の今後

 

森ビルは、虎ノ門を国際新都心・グローバルビジネスセンターと位置付けて開発してきた。3棟のオフィスタワーの労働人口は約3万人、半径を新橋や霞が関方面まで広げると実に17万人もの人がこの地区で働いているという。

 

場所柄やはりエキスパット(外資系企業の外国人ワーカー)が会員に多いのか聞いてみたが、いまのところそうでもないとのことだ。ただ、今後、増えてくる可能性はあるとのこと。

 

写真)サウナ内部

ⒸJapan In-depth編集部

 

写真)浴場

ⒸJapan In-depth編集部

 

気になる利用料金だが、入会費30,000円の他、CARAPPOメンバーが月額36,000円。森ビル所有のオフィステナント企業の従業員限定のプランHILLS Memberが月額33,000円だ。これだけの設備ゆえ、もう少し高いと思ったが岩本氏は、「若い世代にも利用できる価格設定にした」と語る。

 

「定期的に来れば、体と心と、余力がみなぎってくるような状態に整えられて、ビジネスでも力を発揮できる状態になれることが一番重要だと思っています」。既に会員になった人たちには伝わっているという。

 

自分のパフォーマンスを最大限に高めることができるのならこの価格も高くないと判断する人がいる、ということなのだろう。

 

「CARAPPOブランド第1号が成功すれば、今後さらに展開することもありうる」と話す岩本氏。まずは10月1日オープンからの新規会員動向を注視することになる。

トップ写真)CARAPPO HIITスタジオ

株式会社スポーツオアシス




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