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.国際  投稿日:2025/12/26

国際情勢の好転と日本の覚醒ーアメリカの戦略研究の重鎮の総括 


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授) 

古森義久の内外透視 

 

【まとめ】 

・トランプ大統領の外交により中東での米国の影響力強化、中露の威信低下などが起こり、国際情勢は好転した。 

・西欧諸国はロシアのウクライナ侵略への軍事支援に巨額の独自資金を投じることに合意した。 

中国の高市首相に対する戦狼外交的な攻撃は裏目に出て、国際的に高市首相への支持を広げる結果となった。 

 

 アメリカの国際戦略・外交の重鎮とされるウォルター・ラッセル・ミード氏は大手紙ウォールストリート・ジャーナル12月22日付への寄稿論文でトランプ大統領の二期目の一年で国際情勢が好転したと総括し、とくに日本の高市早苗首相の下での安全保障面での覚醒は歓迎すべき変化だと強調した。 

 

 ミード氏の論文は「トランプ外交政策は世界にとって意外なほど有益となった」と題して、トランプ大統領が今年1月からの二期目のほぼ1年間で革命的な外交政策を遂行した結果、国際情勢はより良好になったとする分析を明らかにした。 

 

同論文はトランプ大統領の政策が従来のアメリカ歴代政権で確立されてきた基本を逸脱し、混乱や反発を内外に引き起こした側面をも紹介する一方、焦点は現状を1年前とくらべると、国際情勢はアメリカにとって、さらに世界自体にとって、より良好かつ健全となったか否かだという課題をまず提起した。そのうえでミード氏は「全体としてポジティブ(前向き)な面が大きい」というみずからの回答を出して、トランプ外交のこの1年ほどの成果を「好転」として高い評価を与えていた。同氏はその根拠として以下の諸点をあげていた。 

 

 ▽トランプ政権が2025年6月に実行したイラン国内の核兵器関連施設への空爆はイランの核計画を大幅に遅らせ、同時にイランの意を受けて動くイスラム原理主義勢力の軍事能力をも破壊した。その結果、中東地域でのアメリカの影響力を顕著に強化した。さらにその結果、イランだけでなくイランを支援してきた中国とロシアのパワーと威信とを低下させた。 

 ▽中国とロシアはそれまでイランへの支援を強調し、有事にはイランの防衛を支援することを示唆していたが、実際にイランがアメリカに攻撃された際には、イランを軍事支援する動きは一切、とらなかった。その結果、アメリカの中東地域での覇権的な地位が確認されたといえる。 

 ▽アメリカの欧州やアジアの同盟諸国はトランプ大統領のときには強硬な態度に揺さぶられることもあったが、結果として戦略的な意識や行動を高めるにいたった。その結果、こんごのアメリカのグローバルな政治や外交での中国やロシアとのせめぎあいでは、これまでよりも強固で有益なパートナーとなることが確実となった。 

 ▽西欧諸国は長年、アメリカとともに民主主義の団結を明確に示すことをためらう傾向があったが、トランプ大統領は強硬な手段でその団結をもたらすことに成功したといえる。その手段とはロシアのウクライナ侵略への対応策に西欧諸国が積極的に参加しなければ、アメリカだけがその対応にあたることはしないと圧力をかけたことだった。その結果、西欧諸国はこんご2年間に1050億ドルの独自資金をウクライナへの軍事支援に投入することに同意した。 

 

 つまり以上の指摘はトランプ大統領の独自の戦略や外交により、中東地域でのアメリカの地歩が固まり、中国やロシアを抑えつけ、さらにヨーロッパでは北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟の主要国にアメリカとの協力を強めて対ロシア戦略を進めることに同意させた、という評価だった。 

  

ミード氏のこの論文は日本についても、きわめて前向きな特徴づけを述べていた。以下の骨子だった。 

 

 ▽トランプ政権の過去1年間の対外活動は日本をも世界の安全保障の現実に覚醒させ、直面させる結果となった。高市政権下の日本は防衛支出を確実に増額し、台湾やその他のアジアでの同志諸国との安全保障面での関与を深めるようになった。日本は防衛関連製品の海外輸出にも長年、厳しい制限を課してきたが、その規制も大幅に緩和することになり、同志諸国との防衛協力の範囲が広まる。 

 ▽中国の高市首相に対する戦狼外交的な攻撃はすっかり裏目に出て、国際的にも高市首相への支持を広げる結果となった。日本の国内でも高市首相は安倍晋三首相に継ぐ自国防衛の必要性への強固な信奉者であり、中国との危険の深まる対立への毅然たる対応により、日本国内での人気も70%以上の支持率をあげている。 

 

 以上の日本についての記述もトランプ政権の新政策により日米同盟の強化だけでなく、日本国内の防衛問題への認識を高める結果が生じたと強調し、その日本側の動きを覚醒、つまり目覚めとして礼賛していた。第二期トランプ政権の高市政権への信頼感の強さを示す、ということだろう。 

 

ミード氏はとくに中国政府の高市政権に対する攻撃がかえって裏目に出たとして、中国側の損失に言及している点も注視される。 

 

ウォルター・ラッセル・ミード氏は、1957年生まれの73歳のアメリカの政治・戦略・外交問題の専門学者。エール大学卒業、ニュースクール大学世界政策研究所研究員、外交問題評議会フェローを経て、ハーバード大学教授などを歴任。 外交シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション」共同創始者。ワシントンのハドソン研究所の特別研究員も務める。 

写真)ウォルター・ラッセル・ミード氏 

Hudson Institute 

 

#この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに掲載された古森義久氏の論文の転載です。 

 

 

トップ写真:ドナルド・トランプ米大統領(右)とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(左)との会談- ワシントンD.C. – 2025年10月17日 

出典:Andrew Harnik/Getty Images 

 


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