.国際  投稿日:2014/10/29

[岩田太郎]【正しく恐れよ、エボラ出血熱】~裏に潜む“政治的意図”を見抜く必要性~

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岩田太郎 (在米ジャーナリスト)「岩田太郎のアメリカどんつき通信」

 

「正しく怖れることが大切」

鳥インフルエンザや福島第一原子力発電所の放射能漏れ、そして今回のエボラ・パニックなどで、繰り返される格言だ。

すでにエボラ熱で死者を出している米国でも、オバマ大統領が「恐怖ではなく、科学的事実に基づいて行動すべきだ」と冷静を繰り返し呼びかけている。オバマ氏は10月24日、死亡患者の看護中に二次感染した後に全快したダラスの女性看護師ニナ・ファムさん(26)をホワイトハウスに招き、彼女をハグした。過度に過敏になっている米国民に、正しく怖れることの重要性を、自らが手本となって示すパフォーマンスだった。

だが、その効果はあまりない。同じ24日、アフリカ帰りの感染医師がいるニューヨーク市で、西アフリカのセネガルから一ヶ月前に移住して来た小学6年生と中学2年生の兄弟が、10人あまりの少年たちに馬乗りにされた上、「おまえたちは、エボラだ!」と交互に殴られ、二人は怪我のため入院した。

因みに、兄弟は感染者ではない。だが、もしウィルス保持者なら、殴られて流れた血、その体液で感染する危険がある。暴行を加えた少年たちは、それを理解していたのだろうか。やっかいなのは、こうした正しくない怖れが、子供だけのものではないことだ。

ニュージャージー州、ニューヨーク州、イリノイ州などでは、アフリカにエボラ退治に出かけた医療関係者を帰米後21日間、強制隔離させている。そのような隔離は意味がなく、科学的根拠もないと専門家が口を揃えても、政治家は聞く耳を持たない。隔離政策の有権者ウケがよければ、それでいいのだ。

これは、「怖れ」に政治的意図がつきまとうことを示している。例えば、共和党のスコット・ブラウン上院議員候補は10月9日、「国内の暴力を逃れて来た中米からの不法移民の子供は、エボラ持ちだ」と発言して顰蹙(ひんしゅく)を買った。だが、事実はどうでもよいのであって、ラテンアメリカからの移民を水際で抑えたい願望が、そのような発言になったのだろう。

「怖れ」は便利なものである。他者への攻撃性や排除の口実をねつ造できるからだ。米国で繰り返される、銃による子供など弱者の殺傷が多発しても、「犯罪者に対する正当な怖れ」を前にしては、規制が進まない。無実の黒人に対する警察や白人の射殺事件は、「正当な怖れ」に基づく自己防衛だとして、裁判所がお墨付きを与えることがあまりにも多い。

市場においては、投資家のマネー流動性に対する「怖れ」でパニックが起き、乱高下という結果を生む。しかし、こうした動きに、特定の市場参加者の思惑が絡んでいないだろうか。儲けるための口実としての「怖れ」ではないのか。そう考えると、政治的・経済的必要性のない怖れなど、この世にあるのだろうか。

翻って、エボラ出血熱の主要感染地のひとつ、西アフリカのリベリアに滞在歴があり、10月27日に東京羽田空港へ到着した45歳の日系カナダ人ジャーナリストが発熱の症状を訴え、新宿区の国立国際医療研究センターに搬送された。

「ついに日本にもエボラ出血熱が飛び火か」と警戒心が一気に高まった。今回は感染がなかったが、いつエボラが日本に入ってきてもおかしくない。万全の医療体制を構築するとともに、そのときに必ず現れる「怖れ」の政治的・経済的意図にも、日本は備えるべきだろう。

 

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