[宮家邦彦] 【米・中間選挙共和党優勢だが】〜上下両院で過半数占めても劇的変化期待できず〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月27日-11月2日)
今週の焦点は何といっても米国の中間選挙だろう。中間選挙についてはこれまでに夥しい数の事前予測があるが、最近Wall Street Journal(WSJ)がNBCと共同で行った世論調査の結果がなかなか面白い。
WSJ によれば、①共和党の支配する議会を望む有権者が優勢(といっても僅か1%の差)であり、②それでも(エボラやイスラム国よりも)経済が大事であり、③民主党は女性からの支持率が高く、④3分の2がオバマ政権の政策変更を望み、⑤民主党支持者が関心を高めており、共和党との差を縮めている、のだそうだ。保守的なWSJの記事だけに、民主党の予測が興味深かった。
いずれにせよ、仮に共和党が上下両院で多数を占めても、上院の安定過半数である60議席には及ばないのだから、劇的な変化は期待できない。むしろ、共和党は党内意見統一が出来るか否かにつき、従来以上に責任を問われることになるだろう。
これまで野党だった共和党は「ネオコン」的な理想主義的国際介入主義と「ティーパーティ」的な理想主義的孤立主義の間の意見調整を事実上放置することができた。しかし、中間選挙後はそうはいかなくなるかもしれない。
特に、上院ではTed Cruz、Rand Paul、Marco Rubioといった2016年大統領選候補者となる可能性の高い議員の動向が注目される。ここで共和党が一皮剥けるのか、それとも相変わらずの内部分裂を繰り返すのかは、2016年を占う意味で興味深い。
もう一つ、筆者が注目するのは6日に発表される予定の「世界の原油の需給見通しに関するOPECの年次報告」の中味だ。この数カ月の原油価格2割下落の理由は何か。単なる市場の需給関係の結果なのか、それともサウジの意図的な原油価格引き下げなのか。
いつも言うことだが、原油価格とは「平時は市場により、有事には政治的に」決まるものだ。今が有事とは思えないので、一応バーレル当たり80ドルという価格は市場が決めているのだろう。しかし、この価格レベルは絶妙だ。ロシアは困るがサウジや米国は困らない。これが60ドルまで下がれば「人工的」なものを感じるのだろうか・・・。今週はこのくらいにしておこう。来週は遂に北京でAPEC首脳会議が始まる。いつものとおり、キヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに記載する。
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