2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
政治  投稿日:2014/12/16

[田中慎一]【今、選挙に必要なのは技術革新】~政局主義とポピュリズムから決別せよ~

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田中愼一(フライシュマン・ヒラード・ジャパン代表取締役社長)

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今回の選挙を振り返る。選挙のスジとしては基本的に悪い。大義がない、争点がわからない、政策が見えない。あくまで政局中心、国民不在、郵政選挙、政権交代選挙の時のような盛り上がりはないにもかかわらず、それらの時と同程度の議席数で与党が絶対的信任を得る。

何かよくわからない不満、不安が国民の中で燃焼できず燻る。良いような悪いような定かでない方向に日本が動き出している感覚が残る。今世紀に入って政局中心のポピュリズム選挙が日本に蔓延している。そろそろ、別建ての選挙のあり様を考えるべき時ではと思う。

「イメージ政治」とマーケティングの欠如
今回の選挙に限らず、日本の選挙はマーケティング発想が欠落している。筆者も2003年から2005年にかけて日本の国政選挙に携わってきたが、当時アメリカの選挙に比べると国民の潜在的ニーズを捉えるというマーケティング発想がまったく稀薄であった。その状況はあまり今でも変わっていない。その結果として「有権者の代弁」という国民の視点に立った政治家からの発信があまりなされていない。

イメージ戦略が先行、ポピュリズムが蔓延(はびこ)る隙を与える。毎日新聞と立命館大の西田亮介特別招聘准教授による共同研究において、「『イメージ』に基づいた動員、つまり『イメージ政治』」の時代だと指摘されたことも、これを裏付ける。

政策マーケティングによる民意の把握

 有権者を代弁するのが政治家の仕事である。国民のニーズを代弁する、しっかりとした政策で担保する、その中から政治家が選ばれる、民主主義の基本である。それを支えているのが民意を捉えようとする努力、創意工夫である。マーケティング発想である。

ところが、政党の調査と言えば、投票行動調査しか行われていないのが日本の実態である。マスコミの調査も既に顕在化している有権者の政策ニーズしか捉えていない。ニーズを把握するというよりも、既に提示されている政策の是非を問うものでしかない。

2012年のアメリカの大統領選挙においては、オバマ陣営では、ビッグデータ分析を徹底的に活用した。様々な属性や行動履歴といったデータを標準化し、単一のデータベースに集約したのである。オバマ・キャンペーンのPR施策を担当した弊社のグループ会社は、ビッグデータをもとに価値観分析に加え、有権者を300以上のセグメントに分類。

それぞれに適したチャネルは何かを明らかにし、何時何分頃に、どのニュース番組に、どんなメッセージの政策CMを打てば効果的かをはじき出し、さらに放映結果をモニタリングして更なる施策を検討する、といった一連の検証を実行し続けた。言い換えると、国民の潜在的ニーズに対してそのような政策を誰に対して発信するか。正にマーケティングである。

大統領選挙には巨大な金がかかる。2008年の大統領選挙ではオバマ陣営は630億円相当の資金を集めた。その3分の2が国民の潜在ニーズ把握に使われた。予備選も含めると莫大なお金が大統領選挙には使われるが、その本質は民意の把握である。4年に一回アメリカは膨大なお金を使ってより客観的に民意を把握、確認しているのである。ある意味、民主主義とはお金がかかるものなのである。高い社会的コストによって支えられている。

「データで語る」政治へ
更に言うと、事実ベースでない政策発信、政策論議が横行している。都合の良い数字だけを取り出して政策の正当性を主張する政治家が多すぎる。有権者を大いに惑わせている。これでは有権者は判断できない。

ビッグデータの活用が高まるに従い、「データで政策を語る」ことが重要になってくる。政策論議を可視化させるだけでなく、様々な視点、事実から立体化させることが政策の正当性を判断する基軸を国民に与える。

またポピュリズムに流されない政策選択を実現する上でも重要である。ビッグデータによって、政策選択だけではない、マニフェスト、政権公約の検証もより立体的になってくる。言いっ放しやその時だけのムードで評価するのではなく、過去、現在、未来の様々な事実、数値、予想など多面的に公約を評価できる仕組みがビッグデータにより可能になってくる。

重要なのは、属性だけでなく、価値観分析を取り入れて、国民の潜在的政策ニーズを把握することである。筆者の記憶では、そこまでの調査は2003年から2005年に民主党が行って以来、行われていない。これでは有権者のニーズを代弁しようにも客観性が低くできない。陳情依存、勝手な思い込みでの政策発信にならざるを得ない。

政治イノベーションのヒント
日本の政治にもそろそろ技術革新が起こってもよい。政治の基本はコミュニケーションである。国民の潜在的なニーズにしっかり耳を傾ける、それをしっかり咀嚼、政策をつくる、その政策の国民にとっての意味をしっかり説明、伝え、共感してもらう。受信、意味づけ、発信、共感、まさにコミュニケーションである。

今、デジタル技術の進化が世界のコミュニケーションを変えている。特にビッグデータによって、その流れは現れては消えていく“フロー”の世界から、事実が積み重なって残って行く“ストック”の世界へとシフトしている。次のアメリカ大統領選挙は2016年である。アメリカの大統領選挙はコミュニケーションのF1レースである。そこでは新たなコミュニケーションの技術革新が生まれる。

次の日本の総選挙がいつになるかはわからないが、2016年アメリカ大統領選挙は要注目である。政治や選挙の世界に技術革新を起こし、政局主義、ポピュリズムとの訣別を可能にする大きなヒントが出てくるかもしれない。

 

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