.政治  投稿日:2014/12/30

[藤田正美]【覚悟の年:老人有権者に負担増頼めるか】 ~注目は来年度予算と夏の財政再建の道筋~

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 藤田正美(ジャーナリスト)「藤田正美が見る世界と日本」

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師走の総選挙は投票率も低く、連立与党が圧勝してしまった。聞くところによると、安倍首相の「発案」だったようで、そのあたりの政治的嗅覚は第一次安倍政権とはだいぶん違うということのようだ。

政治的基盤は盤石、念願の長期政権を確保した形の安倍首相だが、日本の置かれた状況はそう甘くはない。一般には「景気回復」というように呼ばれていても、今の日本は昔のような景気回復は望むべくもないからだ。

経済学者とこういう話をすると、労働人口の減少は懸念するに及ばないと言う。要するに生産性を上げたり、女性の就労率を上げたりすれば労働力の不足は補えるというのである。しかしそれは「生産力」の話であって、そこで生産されたモノを誰が買うのかはあまり議論されていないように見える。

自動車市場を見てみればすぐに分かるだろう。これまで日本国内で最も自動車が売れたのは1990年だ。この前年の12月に日経平均はほぼ3万9000円だった。これが日本の株価のピークである(現在の水準は半分以下だ)。株価だけではなく土地などの「資産効果」もあったせいか車はよく売れた。

日本全国で売れた軽自動車からトラックまでの総台数は約780万台である。いまは500万台も売れない。これは「景気が悪い」せいではない。需要そのものが縮小しているのだ。労働力が不足しているからでもない。相変わらずGDPの2%ぐらいは需要が不足しているように見える。ざっと言って10兆円である。

安倍政権が躍起になって「賃上げ」を経済界に要求しているのもこの需要不足を何とかしようと考えているからである。もちろん需要不足の元凶は消費者だけではない。企業の設備投資の不足も大きな意味をもっている。現預金を貯め込んで投資をせず、株主配当を増やす企業も多い。早い話が何をしたらいいのかよくわからないから、株主から批判される前に配当をしたり、自社株買いで株価を上げようとするわけでだ。

需要を生み出せる大きな原資を持っているのはもちろん高齢者だ。個人金融資産1600兆円の一部だけでも消費に回れば、経済への好影響は大きい。しかしそのためには老後に不安があってはならない。老後の医療・介護・年金である。ところがこうした社会保障の負担はいまや毎年の国の予算の半分以上を占めるようになっている(社会保障関連費用に地方交付税交付金のうちの社会保障関連費用を加えると概ねそのぐらいだ)。そして国は借金を1000兆円以上積み上げていて、先進国中最悪の水準だ。

しかも毎年20兆円以上も借金を増やしている。この部分をすべて税収だけで賄おうとすると消費税で言えば10%引き上げなければならない。2017年4月に10%になって遠からず20%にする必要があるということだ。

つまりはっきり言えば、従来どおりの医療・介護・年金の制度を続けようとすれば、早晩、行き詰まって大増税時代が来るということだ。それが嫌なら、医療・介護・年金を大幅に見直して、とにかく団塊の世代がいなくなるまで、保つことができるような制度に変えていくしかない。

増税は嫌だけど、老後の生活に不安があるのは困る、などという声におののいてはいけないのである。政治家は、選挙を控えると老人に不利になる政策を打ち出すのを嫌がる。老人は自分の利害には敏感だし、投票率も高い。

その老人有権者に対してどれだけ負担をしてくれるように頼めるか。それが国家百年の計というものだろう。その政策は支持率が高い政治家にしかできない。それをやりきるかどうか、それが安倍政権に対する後世の評価を大きく左右することになるだろう。

とりあえずの注目点は「聖域なき切り込み」を指示した来年度予算と夏をめどに出される財政再建の道筋、その2点である。それがもし不発に終わるようだと、安倍政権を勝たせたのは間違いだったと国民が臍を噛む思いをすることになるだろう。

 

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